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同メディアによると、Appleはドイツに拠点をおくデバイスメーカーSMI(SensoMotoric Instruments)を買収したことがわかった。
以上の事実をリークしたのは、買収に関わったと称しているあるAppleの社員、とのこと。
本メディアで報じている通り、AppleのCEOティム・クック氏は以前よりARに特に傾倒しており、スマホを継承するコア・テクノロジーになるという見解を述べていた。そして、今月はじめに開催された同社主催の開発者会議WWDC 2017において、iOS対応ARアプリの開発を可能とするプラットフォームARKitを発表した。
また、同社にはHoloLensのようなAR専用グラスを開発している噂もあり、このほどの買収と同社の最近の動向を総合的に考えると、買収によって獲得したアイトラッキング技術はAR専用グラスの開発に使われるのではないか、と推測される。
ちなみに、買収されたSensoMotoric Instrumentsの公式サイトには買収に関する情報は一切に掲載されておらず、電話もつながらない、とのこと。Appleもこの買収に関して、公式な声明を出していない。
買収されたSensoMotoric Instrumentsとは、1991年に創業されアイトラッキング技術によるソリューションを主幹業務としている。そのソリューションの範囲は、車載機器、医療研究、各種訓練と多岐に渡る。以下の動画は、同社による自動車ドライバーの視線と各種メーターとの関係の研究に関するものだ。
同社は、近年のVR・ARの台頭に対して自社の技術を活用する試みを積極的に進めている。以下の動画からは、Gear VRにアイトラッキング技術を応用した様子を見ることができる。
アイトラッキング技術がVR・ARにとって重要な理由はふたつある。
VRヘッドセットを装着したユーザーの視線がわかると、その視線に基づいて画面の描画処理による負荷を軽減することができる。こうした技術は、Foveatedレンダリングと呼ばれている。
同技術に関しては、VIVEに対応したアイトラッキング・モジュールのリリースを報じたときに詳しく解説しているのだが、簡単に説明するとユーザーの視線が集中している箇所は鮮明に描画する一方で、視線から外れている周辺部は解像度を落として描画する、というのがFoveatedレンダリングだ(下の画像参照)。
デジカメといった他の光学系デバイスと同様に、VRヘッドセットも高画質への進化の道をたどるなか、描画処理を軽減する同技術はこれから重要になることは疑いようがない。また、同技術はAR専用グラスの開発でも役立つことは間違いないだろう。
アイトラッキング技術の恩恵は、描画処理の軽減というユーザーが直接体感できない内部処理だけに留まらない。
「目は口ほどにモノを言う」と格言があるように、ヒトは他人とコミュニケーションする時、お互いの視線を意識している。このことは、コミュニケーションの場はリアルからバーチャルに移ったとしても同じである。
ユーザーの視線は、他のユーザーとのコミュニケーションだけではなく、コンピュータとのインタラクションにも役立てることができる。ユーザーの視線をトラッキングすることができれば、その視線を使って入力動作とすることが可能となる。こうした視線によるインタラクションが可能となると、例えば視線によって武器のトリガーを引くことができるVRシューティングゲームの開発が可能となる。
実のところ、以上のようなアイトラッキング技術を実装したVRヘッドセットはすでに存在しているのだ。それは、本メディアでも度々報じている日本初のVRヘッドセット「FOVE 0」だ。同VRヘッドセットは、2017年6月末時点ですでに予約を受け付けており、出荷は2017年8月を予定している。同VRヘッドセットのトレーラー動画を見ると、アイトラッキング技術によるメリットが全て活用されていることがわかる。
以上のようなアイトラッキング技術は、今後主要なVRヘッドセット・ARデバイスに標準実装されることになるだろう。
SensoMotoric Instruments公式サイト
https://www.smivision.com/
AppleがSMIを買収したことを報じたMacRumorsの記事
https://www.macrumors.com/2017/06/26/apple-acquires-sensomotoric-instruments/
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