- 週間ランキング
Xboxの代表、Phil Spencer
VRコンテンツを動作させるハードウェアは一つではなく、現在市販されているデバイスだけでも多数ある。Oculus RiftやHTC ViveといったPCベースのもの、PS4を使うPSVR、スマートフォンを使うGear VRやDaydream Viewと処理に使うマシンも様々だ。
各デベロッパーが自身のコンテンツを複数のプラットフォームに対応させることを考える場合には、こうしたプラットフォームごとの違いを埋める作業が必要になる。
あるプラットフォームでは問題なく動作していたアプリケーションが他のプラットフォームでは起動すらしなかったり、想定と異なる動作をしたりといったことは珍しくない。
マイクロソフトがE3で発表した新しいソフトウェアは、マルチプラットフォーム対応の問題に立ち向かうデベロッパーの助けとなりそうだ。
先週行われたE3では、VRに関連する複数の発表・展示が行われた。
いくつかの企業ブースでは、今年の後半に発売されるVRゲームを体験することができた。DisplayLinkのViveをワイヤレス化するアダプタや、AntilatencyのモバイルVRに広いプレイエリアでのトラッキング機能を追加するシステムなども実演されている。
多くの発表が行われたこのE3でのカンファレンス直前、マイクロソフトが商標登録を申請したのが”Direct Reality”だ。
マイクロソフトのソフトウェアでDirect Realityに似た名前を持つものとしては、DirectXがある。パソコンでゲームをするゲーマーにとっては、おなじみのソフトウェアだ。
VRゲームを含む多くのPCゲームで、動作要件にDirectXのバージョンが含まれている。インストールされているバージョンが古いと、アップグレードを求められることもある。
E3でXboxの代表者が語った内容によれば、このDirect Realityは名前だけでなく役割もDirect Xに似たものになるようだ。違うのは、DirectXが映像処理全般に関わるのに対してDirect Realityは名前の通りVRでの利用が前提となっているところだ。
マイクロソフトはHPやAcerのようなサードパーティのメーカーと協力し、ヘッドセット(マイクロソフトはカメラを搭載したこのヘッドセットを、VRヘッドセットではなくMRヘッドセットと呼んでいる)の開発を進めている。
HPとAcerのヘッドセットはいずれも8月に発売とされている。それ以外のメーカーが開発するヘッドセットも、今年のホリデーシーズンにかけて発売される予定だ。
このうち、Acerの「開発者限定 Acer Windows Mixed Reality Headset デベロッパーエディション」は日本向けにもAcer Direct楽天市場店で予約が受け付けられていたが、5月31日に受付が休止されてしまっている。
理由は反響が予想以上に大きかったため、とのことだ。全ての予約者に製品を供給できないことを避けるため、予約の受付が休止されてしまった。
現在も予約は再開されておらず、楽天市場の商品ページでは「再開の目途が立つ場合は改めてご案内いたします」と告知されている。
VRのレンダリングを行えるパーツも多数ある
この時期に新しい商標が登録されるとなると、マイクロソフト自身が手がける新しいVRヘッドセットが存在するのかと思ってしまうが、そうではない。
Direct Realityは、VRコンテンツのデベロッパーがマルチプラットフォームに対応するコンテンツを制作する助けとなるものだ。
ユーザにとって、GPUを選ぶ場合に重要なのは性能と価格だ。Nvidiaが好き、AMDが好きというブランドのこだわりがあるユーザでなければ、ブランドを横断してパーツを選ぶことになるだろう。
だが、デベロッパーにとってどのメーカーのGPUを使っているかは重要だ。メーカーによってアーキテクチャが異なるため、同等の性能だとしても「同じ」ではない。
DirectXのAPIは、デベロッパーが映像のレンダリングを行うGPUの違いを考慮せずにVRコンテンツの開発を行えるようにしてくれる。
パーツとデベロッパーの橋渡しをDirectXが行ってくれることで、ユーザがデベロッパーと異なるメーカーのGPUを使っていても同じソフトウェアが動作するようになっている。
複数の半導体メーカーがGPUを開発しているのと同様に、VRヘッドセットを開発するメーカーも多数ある。
Direct Realityを使えば、複数のプラットフォームに対応したVRコンテンツの開発が容易になる。マイクロソフトのパートナーが開発するVRヘッドセットはもちろん、他のプラットフォームでも同じように動作することが期待できる。
Xboxの責任者、Phil Spencerは上の映像の中でマイクロソフトがそれぞれのVRプラットフォームを孤立させないようにしようとしていると説明した。
「Windowsプラットフォームを提供する企業として、
『申し訳ありませんが、このヘッドマウントディスプレイではこのコンテンツは動作しません』
という未来を避けることが重要だと考えています」
彼はWindowsがあらゆるヘッドセットをサポートするべきだと考えている。そのために、OculusやValveといった他社のチームとも協力しているようだ。
WindowsがそのVRデバイスをサポートしているのか、そのデバイスでは自分が遊びたいVRコンテンツが動作するのかを心配することなく利用できるのが理想だ。
VRデバイスの種類が多く、それぞれがコンテンツを独占しているような状態になればどのプラットフォームも衰退してしまうだろう。
HTC ViveとOculus Riftはいずれもヘッドセットやコントローラーのトラッキングが可能だが、そのために利用されているトラッキング技術は別のものだ。
マイクロソフトも、今年の後半には独自のインサイドアウトトラッキング技術を市場に投入する。発売時点ではVRに対応しないというXbox One Xも、いずれはVRに対応したハードウェアになるだろう。
プラットフォームの数が増えれば、それだけマルチプラットフォーム対応の手間は増えてしまう。Direct Realityによってプラットフォームを跨いでコンテンツの開発を行うデベロッパーが増えれば、結果的に業界全体の発展に繋がるかもしれない。
まだ名前が発表されたばかりのDirect Realityの詳細は不明だが、あらゆるVRコンテンツの基盤として使われる縁の下の力持ちのようなツールになるかもしれない。
参照元サイト名:Upload VR
URL:https://uploadvr.com/microsofts-direct-reality-will-combat-vr-fragmentation/
Copyright ©2017 VR Inside All Rights Reserved.