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ZeniMaxがOculusによる自社技術の盗用を訴えた裁判については、当メディアでも以前から伝えている。2014年に訴状が提出されたこの争いは、今年に入ってZeniMax側の勝利で一応の決着を見た。
Oculus(Facebook)やJohn Carmackのような関係者が判決不満を表明しているが、陪審員の判断は「OculusがZeniMaxに対して5億ドル(556億円)の賠償金を支払う」というものだった。
この判決に満足していないのはZeniMax側も同様で、こちらは5億ドルの賠償金だけでは不十分だと考えているようだ。
ZeniMaxは盗用された同社の技術から派生するハードウェア及びソフトウェアの販売を差し止めるか、もしくは同社に対して10年間に渡って売上の20%を支払うように求めている。
ZeniMaxは、Oculusが自社に権利のある技術を不正に利用してOculus Riftを開発したとして損害賠償を求める訴えを起こした。
ZeniMaxがVR技術を研究していたことがあるのは事実だ。もっとも、それはVRヘッドセットが消費者向けの製品として販売されるようになるよりはかなり前のことである。
確かにZeniMaxは過去にVR技術の研究を行っていたことがあるが、2013年の初めにはその研究から手を引いている。
現在のZeniMaxはVRデバイスの販売を行っておらず、独自にVRデバイスの研究を続けているという情報もない。
早期に研究を停止していることから、同社のVRに関する技術は基礎的なものに留まっていると思われる。しかし、ZeniMaxは彼らの研究していたVR技術がOculus Riftを開発する基盤になっているというのだ。
ZeniMaxは、かつて同社の社員だったJohn Carmack(OculusのCTOとなった)がZeniMaxの退職時にソースコードや社内の機密情報を持ち出したと考えている。
Carmack自身はもちろんソースコードの盗用を否定しているため、先の裁判では専門家によってこの点の調査がなされた。専門家が行った検証の内容や正確性についても疑問は残っているものの、彼らの判断はソースコードの一致がみられるというものだった。
この結果に基づいて、陪審員はZeniMaxへの損害賠償を認めた。
ZeniMaxは5億ドルの損害賠償金を受け取ることになったが、同社が被った損害は5億ドル以上だと考えている。そもそも、当初ZeniMaxが求めた損害賠償の額は20億ドルで判決の4倍だ。
ZeniMaxは現在、Riftの販売を停止するか売上の2割を同社に支払うように求めている。
先の判決を受けて、「不正に獲得したZeniMaxの技術を使って、ZeniMaxの技術無しではできない事業(VR事業)を行っている」というのが彼らの主張だ。
5億ドルという金額は不十分で、「被告が権利の侵害をやめるほどの金額ではない」とZeniMaxは考えている。
また、Oculus Riftが販売されている限り「損害」は継続しているとも考えられる。一度賠償金を支払えば、それ以降自由に技術を利用できるというものではないのだ。
FacebookがOculusのVR事業から得ている利益は大きい。
ZeniMaxは、5億ドルを支払うことでRiftの販売を続けられるなら彼らは権利の侵害を続けるだろうと考えている。
その根拠として、FacebookのCOO、Sheryl Sandbergのインタビューでの返答が挙げられた。
彼は賠償がFacebookの財務に大きな影響を与えるものではないと答えている。
たとえ大金を支払うことになっても、CCOがインタビューで「賠償金の支払いによって財務状況が悪化する」と回答することはないだろう。だが、ZeniMaxはさらに大きな賠償金を課すべきだと主張している。
Oculusは賠償金の支払いを求める判決自体も誤りだと主張してきた。もちろん、今回の販売差し止めに関わる訴えについても反論している。
Oculusによれば、「ZeniMaxは、Oculusの行為によって継続的に損害を被っていることを示せない」という。Oculusが指摘するのは、ZeniMaxがOculus Riftと競合するような製品・サービスを提供していない点だ。
ZeniMaxがVRヘッドセットのようなハードウェアや、VRコンテンツのストアを提供しているならばOculusと競合するライバルとなる可能性がある。だが、現在のZeniMaxはVR関連の事業を行っておらず、Oculusによって損害を受けることもない。
プログラムのソースコードが他社の権利を侵害しているかどうかを判断するのは難しい。完全に一致する部分が多数があるならばコピーされたものだと判断することもできるが、同様の動作を行うために似たコードになってしまうことは十分考えられるからだ。
先の裁判でZeniMaxが権利を持つコードと類似もしくは一致しており、権利を侵害しているとされたのはOculusが過去に研究していたときのソースコードだ。現在Oculus Riftに使われているコードがZeniMaxの権利を侵害し続けているという証拠は提出されていない。
ZenniMaxはOculus Riftのソースコードを1から書き直すように要求しているが、それを実行するには非常に多くのコストがかかる。ZeniMaxが適切に自社の権利を主張するならば、ソースコードの大幅な書き換えは必要無いというのがOculusの考えだ。
法廷でも、両社はそれぞれの主張を続けた。
ZeniMaxは5億ドルの賠償に加えてさらなる賠償を求め、従わない場合には販売の差し止め命令が必要だとしている。
Oculusは、Oculus Riftの販売を続けることによってZeniMaxが損害を被ることはなく、損害賠償は不要だと主張している。5億ドルという金額についても、将来の損失を証拠もなく見積もった推測に過ぎないという。
裁判官は、現在のOculus Riftに使われているコードがZeniMaxの権利を侵害するものである「より具体的な」証拠を求めたという。聴聞会の後に判決は下されず、裁判官は和解に向けて行動するよう両社に求めている。
ZeniMaxとOculusの争いは長く続いており、OculusのパートナーとしてGear VRを開発・販売するサムスンにもその争いが波及してしまっている。
VRプラットフォームはまだ発展途上にあり、Oculusやサムスンはその成長を支える主要企業だ。このまま結論の出ない状態が続けば、業界全体が停滞してしまう恐れもある。そうなれば、Oculusが言うように「公益を損なう」ことになるだろう。
この争いは、ベセスダ・ソフトワークス(ZeniMaxの子会社)が開発する『Fallout 4 VR』や『Doom VFR』といったVRゲームの対応プラットフォームにOculus Riftの名前が無い理由とも考えられている。
一般のVRユーザにとっては、技術力のある2つの企業が協力してVR業界を盛り上げていってくれるのが理想だ。
大きな金額が動くので簡単には結論が出せないかもしれないが、どうにか落とし所を見つけて早期に和解が成立してくれることを望みたい。
参照元サイト名:Ars Technica
URL:https://arstechnica.com/gaming/2017/06/zenimax-to-judge-block-oculus-sales-or-give-us-20/
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