複数の海外メディアが、AppleのAR戦略に関するレポートを報じた。



ARKitアプリの多様な可能性


海外メディアMarket Insiderは、スイス大手銀行UBSが発表したAppleのAR戦略に関するレポートのうち、ARKitによって開発されるアプリの内容を抜粋して紹介した。


同レポートをまとめた同銀行のアナリストSteven Milunovichは、AppleのAR戦略に関して以下のようにコメントしている。


今後2~3年くらいのあいだに、AppleはiPhoneとiPadにAR機能を可能とするセンサー、3Dカメラ、CPUを実装するでしょう。


(AR機能を実現するコンポーネントである)ARKitを統合したiOSデバイスでは、既存のiOSデバイスよりはるかにリッチなAR体験が可能となるでしょう。


また同氏は、iOSをアップデートするだけでARKitに対応したiOSデバイスが大量に出現することこそ、AR市場におけるAppleの最大の強みだと述べている。すなわち、AppleはすでにAR市場において大量の潜在的ユーザーを抱えているのだ。


同氏によると、AppleがARKitを発表したことによる同社の株価への影響は17%の上昇と見積もっている。この見積もりに従うならば、現在約$145の同社の株価は、ARKitの影響によって$170まで上昇することになる。ちなみにライバルであるGoogleの親会社Alphabetの株価は約$950強、Microsoftの株価は約$70である。


レポートでは、ARKitによって開発されるアプリのカテゴリーは少なくとも10種類考えられると指摘している。そのカテゴリーを以下に説明する。


ゲーム&エンターテインメント


ARゲームのカテゴリーにはすでに「ポケモンGO」が存在しているが、今後さらにARKitを活用したゲームやエンターテインメントアプリがリリースされ、さらに成長するだろう。


ジョブ・トレーニングアプリ


例えば自動車のエンジンの修理方法習得する時に、エンジン部分にiPhoneをかざせば修理方法がカメラ画面に表示されると非常に便利だろう。同様のアイデアは、Apple製ARメガネがリリースされた時にも通用するものであり、iPhoneよりずっとスマートなAR体験を提供するだろう。


顔あるいはイメージ認識


ARテクノロジーを活用すれば、未来のiPhoneのアンロック方法は、既存のパスコードあるいは指紋認証に代わって、ユーザーの顔認証になるだろう。顔認証は、3Dセンサーを使って読み取るので、顔の立体的な形状をも認識できるようになるだろう。つまり、(立体感のない)ユーザーの顔写真からアンロックができるようなセキュリティ的に弱いものではなく、現在よりずっとセキュアなものになるだろう。


ヘルスケア


高感度な3Dセンサーを使えば、例えば足にできた発疹(吹き出物)も発見して、病院に行くべきかどうか簡単な診断ができるようになるだろう。


緊急事態対応


万が一、滞在している建物で火災や地震に見舞われたら?そんな時は、ARエマージェンシー(緊急事態)アプリを起動すれば、脱出方法をガイドしてくれるだろう。


家屋の修理


例えば蛇口から水が漏れたとしたら?蛇口の修理をガイドするARアプリがあれば、修理ガイドブックなど探すまでもなく、iPhoneを蛇口にかさせば修理方法がわかるだろう。無論、蛇口だけではなく、屋内のすべての設備に関してARアプリが用意されるだろう。


家具の購入


家具を購入する時、家具を置く予定の場所に購入候補の家具をAR表示できたら非常に便利だろう。


事実、海外メディアBusiness Insiderは、Appleと大手家具メーカーIKEAが、IKEAの家具の購入をガイドする上記のようなARアプリ開発をスタートさせた、と報じている。


料理と小売


食材を宅配してもらった時、食材の調理方法を調べるには、食材にiPhoneのカメラをかざせば表示される。また、食品売り場で食品にiPhoneをかざせば、その食品を使ったレシピが表示されるだろう。


不動産


現在のモデルルームは、リアルな家具を置くことによって、実際に住んだ時のイメージをユーザーに伝えている。しかし、ARアプリを使えば、何もないモデルルームにユーザーの好みにあった家具をバーチャルに置くことによって、よりユーザーの希望に沿ったイメージを提供できるだろう。


軍事


現在でもすでに戦闘機のパイロットはHUD(Head Up Display:各種情報を表示するヘルメット)、歩兵は暗視スコープがついたヘルメットを装備している。ARテクノロジーが進化すれば、あらゆる軍事活動においてARデバイスが活用されるだろう。


以上のように、ARはゲームだけではなく文字通りリアルな生活のあらゆるシーンにおいて活用される可能性があるのだ。この応用範囲の圧倒的な広さこそ、かつて本メディアで報じたAppleのCEOティム・クック氏の発言「ARとはプロダクトではなく、コア・テクノロジーなのです」 の真意なのだろう。つまり、ARとは特定のアプリやデバイスに実装される限定されたテクノロジーではなく、生活の質を一変させるデジタル・プラットフォームなのだ。ちょうど、少し昔にスマホが生活を変えたように。


「iGlass」はAR Ready iPhoneと連携する?


また海外メディアCNBC Business News and Financeは、Milunovichが述べたApple製AR専用メガネに関するコメントを紹介している。そのコメントとは以下の通り。


進化したセンサーやカメラは、iPhoneのAR機能を強化するでしょう。そして、最終的にはAR専用のデバイスが、おそらくは「iGlass」という名前でリリースされるでしょう。


iGlassに関しては、Appleの既存のデバイスのように洗練されたデザインで、MicrosoftのHoloLensのようなAR体験を可能とするだろうと想像することができます。


しかし、HoloLensのようなリッチなAR体験を可能とするCPUとカメラを実装したARメガネを製造するとなると、プロダクト・デザインにおいて深刻な問題が発生するでしょう。


もしAppleがiGlassとiPhoneのあいだで大量のデータを送受信する方法を見つけたならば、iGlassのデザインはかなり魅力的なものとなるでしょう。


HoloLens、そしてMeta 2といったハイエンドARデバイスは、PCを必要とせずスタンドアロンでAR体験を可能とする反面、デザイン面ではスマートとは言えず「ガジェット感」が溢れてしまっている。


以上のコメントで同氏が指摘しているのは、iPhoneと「iGlass」の連携が可能となれば、グラフィック処理やデータ処理をiPhoneが実行することによって、iGlassのデザインをスリムにすることができる、ということであろう。


現時点ではAppleはハイエンドARデバイス市場に進出していない「後発組」である。しかし、ちょうどARKitを発表したことによってモバイルAR市場において一挙にトップ・プラットフォーマーに躍り出たように、「iGlass」をリリースする時にはHoloLensやMeta 2をごぼう抜きしても何ら不思議ではないであろう。


Appleが発表したARKitで開発できるアプリカテゴリーについて報告したMarket Insiderの記事

http://markets.businessinsider.com/news/stocks/apple-stock-price-what-augmented-reality-could-bring-to-future-iphone-2017-6-1002109215


Appleと大手家具メーカーIKEAが家具の購入をガイドするARアプリ開発をスタートさせたと報じたBusiness Insiderの記事

http://www.businessinsider.com/apple-ikea-arkit-app-2017-6


「iGlass」の可能性に言及したCNBC Business News and Financeの記事

http://www.cnbc.com/2017/06/20/apple-smart-glasses-for-augmented-reality-could-leverage-iphone-power-ubs-says.html


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情報提供元: VR Inside
記事名:「 Appleが発表したARKitで開発できるアプリは10カテゴリーある?将来的には「iGlass」とも連携する?