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ARM(正式名称:ARMホールディングス)とは、イギリスに本社を電子機器メーカーである。
同社は、世界中に普及しているスマホをはじめとするモバイル機器のCPUを供給しており、そのシェアは寡占状態となっている。実は同社は、日本と深い関係のある企業である。というのも、2016年に同社はソフトバンクグループに買収され、現在はソフトバンクグループの傘下となっている。ちなみに、買収額は約240億ポンド(約3兆4,000億円)であった。
同社のGPUを実装したVR Veadyなモバイル機器のシェアは50%以上を占め、Google Daydreamに対応した世界初のスマホ「Mate 9」にも同社のGPUが実装されていた。こうした事情からこのほど発表された最新GPU「Mali-G72」は、モバイルVRを強く意識した仕様となっている。
新しく実装された仕様である「Mulitiview」は、片目ごとに描画した画像を両眼で見えるように合成する際の処理を改善したものだ。また「foveated rendering」は、急激な視線移動時でも前述した「Mulitiview」処理が劣化しないようにする機能である。
全体的には、全世代のGPU「Mali-G71」と比べてパフォーマンスが1.4倍向上した(トップ画像参照)。
新型GPUの発表とともに、新型CPUも発表された。
新型CPU「Coretex-A75」および口述する「Coretex-A55」は、ともにAIの実装を強く意識した仕様となっている。AIはVR・ARとともに現在のテクノロジー・トレンドの一翼を担う技術であるが、一見すると両者はあまり関係ないように思われる。
しかし、今後のVR・ARの進化を見据えると、実はAIが深い関係のある技術であることがわかる。そのひとつの例として、Googleが先日発表したAR機能「Google Lens」がある。同機能はAIが画像認識した情報をAR表示するもので、ARグラフィックの描画と同時に高度なAIの実装が求められるのだ。
同CPUはAIを実装するためには不可欠な機械学習を効率的に実行できるように設計され、総合的に見ると前世代のCPU「Coretex-A73」より20%のパフォーマンス向上を実現している。
「Coretex-A75」がハイエンドクラスのCPUなのに対して、「Coretex-A55」はミドルクラスの仕様となっている。それでも、同クラスの全世代モデル「Coretex-A53」に比べて1.15倍のパフォーマンス向上を実現した。
「Coretex-A55」は「Coretex-A75」と組み合わせてデバイスに実装できるように設計されている。この設計仕様は「Dynamiq CPU」と名付けられたのだが、各デバイスメーカーはハイエンドなCPUとミドルクラスのそれを組み合わせることによって、コストパフォーマンスを重視したCPUの実装が可能となる。
モバイル機器のCPUとGPUで大きなシェアを占めるARMは、その製造方針においてVR・ARに舵を切ったわけだが、PCのCPUにおいて絶大なシェアをほこるIntelも同様にVR・ARを意識している。
Intelは、CPUおよびGPUを実装したスタンドアロン型VRヘッドセット「Alloy]を開発中である。同VRヘッドセットには、当然ながら同社の最新CPUとGPUが実装されるであろう。
以上に解説したARMの新製品の発表が意味するのは、スマホをはじめとしたモバイル市場においてもVR・ARの波が不可避的に押し寄せていることを、大手電子機器メーカーたちも認めている、ということであろう。
新型GPU「Mali-G72」を解説するARM公式ページ
https://community.arm.com/graphics/b/blog/posts/mali-g72-enabling-tomorrows-technology-today
新型CPU「Coretex-A75」を解説するARM公式ページ
https://community.arm.com/processors/b/blog/posts/cortex-a75-ground-breaking-performance-for-intelligent-solutions
新型CPU「Coretex-A55」を解説するARM公式ページ
https://community.arm.com/processors/b/blog/posts/arm-cortex-a55-efficient-performance-from-edge-to-cloud
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