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良いニュースを人に伝えるのは気楽なものだが、ときには悪いニュースを伝えなければならないこともある。自分の失敗や相手の期待に添えない事実を伝えるのは難しくて気が滅入るが、いつかは伝えなくてはならない。
特に「重い」のは人の命に関わるような情報だろう。医師は病名や死亡確認など、そうした情報を伝える機会の多い職業だ。
Yahoo!ニュースでは、VRを使って彼らと患者とのコミュニケーションをサポートするアプリケーションを紹介している。
Medical Cyber Worlds Inc.(MCI)の最初の製品であるMPathic VRは、医療従事者が患者とのコミュニケーションを行うスキルを磨くためにデザインされている。このアプリケーションは、病名の告知や家族への死亡通告といった場面で彼らが取るべき態度を学ぶために活用できるという。
MPathic VRは、共感を伝えられる効果的なコミュニケーションのスキルを指導するものだ。4月に発表された研究の結果からは、従来行われていたトレーニング方法よりも高い効果が期待できるという。
この研究では医学生がMPathic VRまたは従来の方法を使って患者とのコミュニケーションを練習し、その成果をテストされた。MPathic VRを使った学生は、従来の方法でコミュニケーションの練習を行った学生よりも高いコミュニケーションスキル(感情的になる患者に落ち着いた対応ができる、非言語のコミュニケーションを活用できるなど)を示した。
また、学生自身もMPathic VRによるトレーニングを従来の方法によるトレーニングよりも好んだという調査結果が出ている。
MPathic VRに登場するのはバーチャルなキャラクターだが、人間のように感情を表現する。セリフだけでなく、表情や身振り手振りでリアルタイムに変化する感情が伝えられる。
学習者はキャラクターの言葉と非言語の手がかりから、最良の戦略を考えてコミュニケーションしなければならない。学習者の言葉だけでなく態度や感情にもキャラクターは反応するので、よりリアルな会話が成立する。
現実の会話と違うのは、どうしようもなくなったときのための「リセットボタン」が存在することだ。これは繰り返しトレーニングをするために使われる。
医療スタッフにとって最も重要なのは、適切な処置を行うことだ。そのために欠かせないのが患者との円滑なコミュニケーションである。
MCIによれば、患者とのコミュニケーション不足や誤解が予防可能な医療ミスの大きな原因になっているという。医療ミスは毎年44万人に影響し、ときには命に関わることもある。
医療ミスは治療の失敗、不必要な入院、患者の死亡や重症化に繋がるものだ。これにより、年間で7,350億ドルから9,800億ドル(83.4兆円から111.2兆円)もの損失が発生していると見積もられている。
現場の医療スタッフは忙しく、ストレスの多い環境で仕事をしている。こうした環境では、個別の患者や家族を思いやってゆっくりとコミュニケーションを取ることは難しくなってしまう。
コミュニケーションの不足が直接医療ミスを招くだけでなく、患者が病院に不満を抱くことで医療訴訟も増加する。
MPathic VRを作成したMCIのクリエイターは、このアプリケーションを使ったトレーニングが従来使われてきた方法よりも効果的だと考えている。MPathic VRは同僚とのロールプレイや、映像メディアを使った講習よりも没入感があり、しかも手軽に実施できる。
VRアプリを使ったコミュニケーションのトレーニングは、患者の満足度を向上させ、医療スタッフのストレスを軽減し、何よりも患者の命を救う可能性がある。
映像認識技術やAI技術の向上によって、シミュレーション中に学習者が見せる表情や口調といった、セリフ以外の要素に対しても適切な応答が可能になりつつある。学んだ知識を現場で実践可能にするための方法として、MPathic VRのようなアプリを使ったトレーニングは今後の発展が期待される分野だ。
参照元サイト名:Yahoo! News
URL:https://uk.news.yahoo.com/virtual-reality-patients-teaching-med-170007404.html
参照元サイト名:Medical Cyber Worlds
URL:http://medicalcyberworlds.com/
参照元サイト名:Patient Education &Counseling
URL:http://www.pec-journal.com/article/S0738-3991(16)30494-3/fulltext
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