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2016年には、HTC Vive、Oculus Rift、PSVRといった知名度の高いものを含め、多数のVRヘッドセットが発売された。
2017年に入って、そうしたヘッドセットを既に購入したユーザも、VRに興味を持ちながらもヘッドセットを購入していない消費者も「次世代機の発売時期」が気になっているのではないだろうか。どのメーカーも、それぞれのヘッドセットの「2」が発売される時期については明言していない。
HTCのゼネラルマネージャーがインタビューで答えた内容も、聞き手次第でかなり幅広く捉えられそうだ。
HTC Viveのパッケージは発売時から変化している
HTCのVRヘッドセット、HTC Viveは既に発売から1年以上が経った製品だ。2016年に発売され、パッケージの変更や基地局のバージョンアップが行われながらも販売が続いている。
同じ2016年にHTCは複数のデベロッパーと提携し、人気ゲームを提供してきた。Viveのソフトウェアを提供するViveportは、いち早く開始したサブスクリプションサービスなどでもユーザを集めている。
また、最近ではワイヤレスアダプタやアイトラッキングモジュールなど、Vive本体に外付けで機能を追加できるアクセサリも増えてきた。そういった機能を標準で取り込んだこの製品の「2」が注目を集めるのも無理のないことだろう。
Vive 2に関する内容を含め、Digital Trendsから最近のインタビューでViveについて尋ねられたHTCのゼネラルマネージャー、Daniel O’BrienがViveのこれまでとこれからについて語った。
O’Brienは2016年のVive本体やVive用VRコンテンツの成績に満足していると答えている。
いくつかの市場調査会社はViveの売上がさほどでもない(2017年の第1四半期では、PSVRの四分の一しか売れていない)と報告している。しかし、HTCの目標には届いているようだ。
「ヘッドセット販売の目標を一年目に満たし、二年目に入ることができました。
小売業者とも良好な関係を維持し、パートナーシップの強化に動いています」
O’Brienはコンテンツの量についても満足とコメントしている。確かにこちらは現在も順調に増えているが、十分な利益を得ているデベロッパーは少ないというレポートもある。
「コンテンツの量と、その収益の双方に非常に満足しています。
100万ドル(1.1億円)以上を稼いでいるデベロッパーも複数いますし、25万ドル(2,800万円)をVRで売り上げている小さなチームもあります。
SteamにはVive用のVRコンテンツが1,500タイトル以上も並んでいます。初期には多くの『デモコンテンツ』が含まれていましたが、現在では状況が変化しました」
O’BrienはHTCが立ち上げたViveコンテンツのプラットフォームであるViveportについてもコメントしている。Vive用のVRコンテンツはSteamからも購入できるが、「ゲームにフォーカスしないストア」が将来のVRにおける成功に繋がると考えているようだ。
また、低いコストで気軽にVRコンテンツを試せるViveportのサブスクリプションサービスは多くのユーザが利用するプランとなっているようだ。実際にどのくらいのユーザが定着しているかは不明だが、その割合は本当に大きいという。
「あと1年ほどは、VRの主なユーザがゲーマーという状態が続くでしょう。しかし、ゲーム以外のマーケティングの道を拓くことは我々にとって大切です。
Viveportのサブスクリプションサービスは、高いユーザの定着率を誇っています。デベロッパーに新しい収益のチャネルを提供し、同時にユーザには多くのコンテンツを安価に試す機会となります」
HTC Viveに関わる最近の大きな動きと言えば、Vive Trackerの登場がある。この新しいアクセサリは、身の回りにあるものをVRのコントローラーにしたり、身体に付けてフルボディトラッキングを実現したりといった可能性がある。
Vive Trackerを猫や天井のファンに取り付けたり、Daydream ViewのようなモバイルVRヘッドセットと組み合わせることでルームスケール対応にしたりといった実験的な試みも行われている。
O’BrienはVive Trackerの重要な役割が研究や開発に必要な工数の大幅な削減だという。トラッキング可能なアクセサリを開発するのに必要な工数を削減することで、アイデアを実現させるハードルが低くなる。
もちろん、アクセサリの価格も下げられるだろう。これはデベロッパーとユーザの双方にとってメリットとなる。
映画やエンターテイメントといった産業では、モーションキャプチャーシステムの代わりにVive Trackerを使用するスタジオも出てきているという。
彼はどのスタジオがVive Trackerを採用しているのかを明かさなかったが、既に開発は進められているようだ。
O’Brienはまた、VRコンテンツの開発を促進するプラットフォームとしての体制についても語った。
HTCは2016年を通して、ViveでVRコンテンツを作りたい人のためのクラスや学習コースを提供している。こうした動きは、ハードウェアメーカーであるHTCにとっても重要だ。
HTCはプラットフォームの縛りがデベロッパーの利益を制限する可能性があると考えており、彼らが自由にコンテンツを展開して収益を上げられるように努力しているという。
VRの長期的な発展のために、開発者の育成とプラットフォームのオープン化に力を入れている。
O’Brienは、VRアーケードに家庭用とは違う可能性を感じている。
特に中国で拡大するViveアーケードは、「ゲームに観客がいる」という点で家庭用のVRとは異なる。e-sportsには観客やスポンサー企業が居て、大会でのプレイは世界に向けてストリーミング配信されている。ゲームは個人で楽しむだけのものではなくなりつつあると言えそうだ。
HTCがVRアーケードで取り組んでいるのは、アーケードの運営者とコンテンツのデベロッパーが利益を上げられるようにすることだという。デベロッパーと運営者にパートナーシップが存在するわけではないので、HTCが二者間を取り持つ役割を果たす。
Viveを採用しているのは、個人のユーザやVRアーケードだけではない。製造業でも、デザイン作業の効率化のためにViveを活用しているという。
O’Brienは自動車メーカーや建築デザイン企業の多くがVRを取り入れているという。医療分野の企業でも、VRを利用する動きが始まっている。
「大手の自動車メーカーはいずれも、デザインとエンジニアリングのためにViveを使っています。
Viveを使うことで、新車や新製品のモックアップのために必要な何億ドルものコストを削減することができます」
インタビューに答えたDaniel O’Brien
Viveでは、まだ発表されていない人気タイトルの開発が行われているようだ。2017年の後半には多くのプロジェクトが発表され、2018年にはそうしたコンテンツが提供されるという。
人気タイトルが多数発表されるようになれば、VRコンテンツの売上はVRヘッドセットそのものの売上を超えるだろう。ハードよりもソフトが収益の中心になっていくのは、この業界では一般的な流れである。
コンテンツの利益がハードウェアのそれを上回る時期について、彼は「2020年が近づくにつれて」そうなっていくとしている。
O’Brienは、Vive 2の発売時期が製品のライフサイクルのような工業・商業的な理由によって決められることはないと語った。Vive 2では、デベロッパーたちが魅力的なコンテンツを生み出すために必要なイノベーションの実現がポイントになるという。
現行のViveには、発売時と比べると軽量化やベースステーションのトラッキング性能アップが施されている。それでも、第一世代のHTC Viveであることには変わりがない。
「Vive 2」となる製品が発売されるのは、解像度の向上のような基本スペックの大きな変更が入るときか、組み込み型の新機能が搭載されるときになりそうだ。TPCastのワイヤレスアダプタに関する質問への答えを見ると、それは2018年の後半になるのかもしれない。
O’Brienは、VRのワイヤレス化についてもコメントした。VRヘッドセットがパソコンと有線接続されていることで、ユーザの利用スタイルが制限されてしまう。ワイヤレス化の利点はHTCでも認識されているようだ。
VRのワイヤレス化は、ユーザの遊び方を自由にする。それだけではなく、デベロッパーも待ち望んでいる機能だ。日に5時間以上もヘッドセットを付けて過ごすデベロッパーにとって、ワイヤレス化と快適なストラップの開発は悲願とも言える。
TPCastはVive XプロジェクトでHTCが援助を行った企業だが、同社のワイヤレスアダプタはHTC Viveで使えるアドオンとして発売される。複数のワイヤレスソリューションが並列する可能性についても述べられており、HTCがTPCastの技術をVive 2にビルトインするような関係にはないのかもしれない。
O’Brienはワイヤレスが2017年には「消費者向けのオプション」となり、2018年の後半には「期待される機能になる」としている。これは2018年にワイヤレス機能を搭載したVive 2が発売される可能性を示唆するものなのだろうか?
Digital Trendsは最後に、ARについても質問している。O’BrienはARが将来的には必ず「来る」技術だと答えたが、それは今年や来年ではなく4~5年先のことになると考えているようだ。
現時点で答えられることはないとしながらも、ARのハードウェアをHTCが開発することはあり得るとコメントしている。Viveとは別のARデバイスがHTCから登場するか、将来のViveではマイクロソフトのMRのようにVRとARを組み合わせた技術が利用できるようになるのかもしれない。
O’BrienはVive 2の計画について直接的には何も明かしていない。しかし、インタビューの内容から考えるとすぐに次世代機が発売されることはなさそうだ。
VRヘッドセットの製品サイクルは2~3年程度(スマートフォンよりは長く、家庭用ゲーム機よりは短い)ではないかとも言われている。2016年に発売されたViveの後継機が2018年の後半に登場するというのは、あり得る予測だ。
参照元サイト名:Digital Trends
URL:https://www.digitaltrends.com/virtual-reality/htcs-vive-gm-comments-on-the-headsets-first-year/
参照元サイト名:Road to VR
URL:http://www.roadtovr.com/vive-president-says-new-generations-vr-headsets-likely-come-1-3-year-cycles/
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