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3月11日(土)と12日(日)の2日間、ソニー・インタラクティブエンタテインメントとLife is Tech ! (ライフイズテック)による「VR CAMP with PlayStation®VR」が開催された。
今回イベントのレポートが発表された。
本イベントは、ゲームの世界に入り込んでいるかのような体験をもたらすバーチャルリアリティ(VR)システムPS VRと、プロのクリエイターも利用しているゲームエンジン「Unity」を使って、オリジナルのVRゲームを開発するというプログラミング教育ワークショップだ。
驚きと喜びの笑い声で包まれたゲーム開発体験イベントの模様が紹介されている。
本イベントをダイジェストでまとめた動画も公開されている。
本イベントを共同開催するLife is Tech !は、国内最大級の中学生と高校生を対象としたITキャンプ/スクール。
スマートフォンアプリやゲーム開発、プログラミング、デザインなどの最新IT技術を学ぶことによって、中高生の創造する力とつくる技術の習得を目指すイベントを多数実施しているとのことだ。
今回の「VR CAMP with PlayStation®VR」は、春休みを利用した2日間のキャンプとなり、応募総数283人の中から抽選で選ばれた中学生と高校生の男女60人が参加したという。
過去のLife is Tech !のキャンプに参加してプログラム学習経験のある方、PS VRをはじめとするVR機器に初めて触れる方など、これまでの経験はさまざまだが、PS VRで動く自分だけのゲームを作れるという夢の体験に、大きな期待を抱いて集まったということだ。
メンバーは6人ずつ、A班からJ班の10班に分かれ、それぞれが2日間を共に過ごす仲間に。
現役大学生でUnityに精通する”メンター(指導者)”が各班に2人ずつ付き、オリジナルVRゲーム開発に臨むこととなったとのことだ。
最初に行なったのは、脳内シートの記入。
自分の好きなこと、興味があることを自由に書き込み、これを元に自己紹介をするというものだ。
また、参加メンバーが協力して行なう頭脳系アクティビティも実施され、メンターが盛り上げるなか、イベント冒頭は和気あいあいとした雰囲気で進行したという。
こうした手法は「アイスブレイク」と呼ばれ、初対面同士の緊張を解きほぐし、コミュニケーションを取りやすい環境を作る効果があるという。
一見するとゲーム開発そのものには無関係のようだが、自分の好きな世界観を表現するオリジナルゲームを作るうえでは重要な行程だという。
自己紹介に使う脳内シートも、仲間と協力するアクティビティも、相手に自分を知ってもらうことが必要であり、そのためには自分自身にどんな特徴があるかを見つめ直さなければならない。
そうして浮かび上がった自分の特徴が、オリジナルゲームを作るアイデアの元になるわけだ。
Life is Tech !のディレクターで本イベントの司会を務める森谷善隆さんは、「脳内シートに書いたたくさんの要素を掛け合わせて、ゲームのアイデアを出してみましょう。アイデアには、正解も失敗もありません。まずはどんどん広げていって、そこからテーマを絞り込んでみてください!」と、アイデア出しのコツを紹介。
オリジナルゲームは、自由だからこそテーマを決めるのは意外と難しいが、遊びの中にそのヒントが隠されていたようだ。
今回のオリジナルゲーム作りでは、あらかじめ用意されたクイズシューティングのプログラムをベースに開発を進めていく。
このクイズシューティングは、VR空間にクイズの問題が表示され、解答の選択肢を持った敵をPlayStation®Move モーションコントローラーで狙い撃つことでスコアを競うゲームとなる。
あらかじめ用意されているといっても、最初にあるのは問題表示パネルと敵が飛んでくる広い空間だけ。
デモ用のプログラムも、「○を撃て!」という問題に対して○や△、×の解答を持った敵が出現する程度のものだ。
しかし、初めてPS VRを体験するメンバーは、「触れそう!」「どこを向いても画面がある!」と興奮気味。
VR空間の臨場感と、これから自分だけの世界を作り上げていく期待で、自然と笑顔が広がる。
ベースとなるゲームプログラムも、メンバーがオリジナル要素を開発していくうえでも、Unityを使うことになる。
プロやアマチュアを問わず、世界中で利用されるゲームエンジンとはいえ、中学生や高校生で経験者はほとんどいない。
それどころか、パソコンに触れたのも数える程度という参加者も。
そんな初心者でもゲーム作りを実践できるようにと用意されたのが、Life is Tech !の学習プログラム「MOZER」(マザー)だ。
会場ではUnity用のプログラムが”教科書”として使われ、この”教科書”とUnityをパソコンで同時起動して使用。
“教科書”の案内を真似るようにUnityを操作することで、ゲームの環境や条件の設定、オブジェクトの配置、大きさや移動の変更など、必要な基本操作を学べるようになっている。
メンターの方に話を聞くと、
「キャラクターが話しかけるように教えてくれたり、操作方法を動画で見せてくれたり、読むだけのマニュアルに比べて、かなり覚えやすいです。
自分もこれを使っていれば、もっと早く使いこなせるようになったと思います(笑)」
とのことで、短期間のキャンプで基本を覚えるには最適だ。
また、Unityではアセットを使えることも、スムーズなゲーム作りに欠かせない要素。
アセットには、キャラクターやオブジェクトの3Dモデルが用意してあり、わざわざグラフィックを作らなくても、好きなモデルを選択するだけでゲームの空間ができあがっていく。
モデルの種類も非常に多いので、選び方や組み合わせ方によってオリジナリティを出すことができる。
わかりやすい操作説明とアセットの選択により、自分のイメージがすぐにかたちになっていくのは、何よりも楽しいはず。
開発ツールの使い方を覚える学びの時間であるにもかかわらず、笑い声が絶えずにぎやかなうちに、初日は終了した。
一夜明け、イベントは2日目に突入。
予定の開始時間より早く会場入りし、前日の続きを進める方もいれば、仲良くなったメンバーとおしゃべりに興じる姿も見られるなか、いよいよ完成に向けた開発が始まった。
1日目終了時、クイズを作ってくることが宿題として出されており、それぞれが練りに練った問題がゲームに入れられていく。
また、クイズのテーマに沿った世界観は、フィールドやオブジェクト、BGMや効果音として反映。
気がつけば開発用のパソコンモニターに当初の殺風景な空間はなく、個性があふれるゲーム画面が映し出されていた。
ミリタリーが好きで、手元の武器をアサルトライフル2丁持ちに仕上げてみたり、学生らしく英単語をクイズとして出題したり。ゲーム空間を自由に描ける楽しさにハマったある女子は、敵のモデル120体で空間を埋め尽くしていた。
出題されるクイズ(?)は、シンプルに「撃て!」だ。
ある男子は、班のメンバーにだけ通じるクイズを作成。
仲間と一緒に過ごした時間が楽しくて、その思いをゲームに込めたという。
クイズの内容はもちろん、草原や街、宇宙までバリエーション豊かなフィールド風景、細部までこだわった武器のモデルやエフェクトなど、ベースは同じゲームでも完成した状態は十人十色。自由で個性的な発想は、見ているだけでワクワクする。
イベント2日目には、学生団体WEAYの代表であり、そのメディア事業「Mediums」の編集長を務める白髭直樹さんが取材に訪れた。
白髭さんは中学校を卒業したばかりで、今回のイベントに参加するメンバーと同世代。過去にはLife is Tech!のキャンプに参加した経験もあるという。
「VRは難しそうなイメージがありましたが、僕と同世代のみんなが実際にコードを書いて、ゲームを作っている姿を見て、遊ぶだけじゃなくて自分で作る時代になったんだと思いました。
こんなににぎやかなキャンプは初めて見ましたし、ゲームで遊ぶ楽しさとは別に、作る楽しさというのもあって、自分のやりたいことを実現する新しいエンタテインメントになっていると感じます。
ゲームに限らず、VRを体験できる場が増えています。
これまで手が届かなかったものが実現するようになっていることを、中高生に紹介して広めていきたいです」(白髭さん)
ゲーム開発の時間が終了したところで、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(SIEJA)制作技術責任者の秋山賢成がステージに。
VR技術の研究が1930年代から始まっていたこと、現在は映像やゲームコンテンツを楽しめるようになり、将来的には医療や教育など幅広い分野で利用できるようになることを紹介した。
また、このイベントに参加したメンバーは、プログラム、プロデュース、ディレクション、プランニング、デバッグといったゲーム作りに必要なほとんどの役割を体験していたことに触れ、
「VRのすごさを実感できなかったという人もいるかもしれませんが、楽しかったとか、一生懸命になれたと感じられればオーケーです。
もっと時間があれば、もっとすごいものづくりができます。SIEとPlayStation®は、みなさんのような未来のクリエイターが活躍する場を用意して、応援します。
今日をきっかけに、クリエイティブに興味を持ってもらえたらうれしいです。
ぜひ、これからもがんばってください!」
と締めくくった。
その後はメンバーのお父さんやお母さんを交え、それぞれが作ったゲームの発表会が行なわれた。
メンバーは事前に撮影しておいたプレイ動画をもとに、クイズのテーマやこだわりのポイントをプレゼンテーション。
「もっと作り込みたかったけど、時間が足りなかった」
「アセットだけでなく、モデルからオリジナルで作ってみたい」
といった意見も飛び出し、見守っていたお父さん、お母さんも、自分の子供がPS VRのゲームを完成させたことに驚いた様子だった。
また、全員のゲームを自由に遊べる体験会も実施。
開発中はパソコンの映像を出力していたのに対し、体験会ではPlayStation®4にインストールし、よりキレイなグラフィックでプレイできたことで、感動もひとしおだ。
仲間のゲームで遊んでみたり、両親にプレイしてもらったりと、思い思いの時間を楽しみながら、2日間にわたるイベントは幕を閉じた。
最後に本イベントの感想を、参加メンバーおよび主催者にうかがったので紹介しよう。
まずは、最新技術に興味があってイベントに応募したという”みう”さん。
メンバーの中でも、開発を進める早さが目立った女性だ。
「ゲームでは宇宙に関するトリビアをクイズにしました。
実際の宇宙にいるように感じられるように、あえて周りに何も置かず、宇宙の壮大感を出しています。
他のメンバーからは、クイズが難しすぎると言われましたが、それで宇宙に興味を持ってもらいたいという狙いもあるんです。
ゲーム開発は初めてだったので、最初はわからないことばかりでしたが、メンターさんが教えてくれたおかげで慣れました。
クイズゲームだけでなく、今度は自分で冒険ゲームも作ってみたいです」
次は、広島県から参加した”アヤカ”さん。
東京の人の多さに驚き、広島県民が感じる東京人を偏見満載でクイズにした。
ビルがそびえ立ち、ヘリコプターが飛びまわる都会感あるフィールドもこだわりだ。
「初めてVRを体験して、自分の作ったヘリコプターが目の前に迫ってきてビックリしました!
クイズは母と相談して、面白いクイズにしようと思って決めました。
メンバーに遊んでもらったら、偏見だらけなところを笑ってくれて、すごくうれしかったです。
こういう機会があったら、また参加したいと思います」
クイズの内容をアドバイスした”アヤカ”さんのお母さんも、
「昨日、会場に来る途中やロビーで集合したとき、私たちだけ地方から参加していると感じたので、あえて広島らしさをクイズにしたら面白いんじゃない?と話しました。
VRが初めてだったので、娘のクイズがどうこう考えるより、迫ってくるリアルな感じにビックリしました(笑)」
と楽しんでいたようだ。
SIEJAの秋山は、今回のイベントに参加したメンバーが将来のクリエイターになることに思いを馳せる。
「ものづくりを通じて、自分なりのクリエイティビティを磨いてほしいと思っていました。
真剣に取り組みながら、楽しそうにしていたので、ものづくりの醍醐味を感じてもらえたようでうれしいです。
体験会で自分が作ったものを親御さんに一生懸命教えていて、それを笑顔で見ていらしたのがとても印象に残りました。
どんな作品ができるかと想像していましたが、実際に見てみると、それ以上のものがたくさんありました。
僕らが考えていないゲームルールにしたり、女の子がお菓子のお城を作ったり、柔軟な発想には驚きです。
ものをつくる楽しさと同時に、その難しさというものも感じたと思いますが、乗り越えた先の満足感や達成感を覚えて、将来はクリエイターの一員になってほしいと思います」
Life is Tech!の森谷さんは、今回参加したメンバーの高いモチベーションが印象的で、今後もぜひ続けていきたいと語ってくれた。
「過去にもゲームを作るイベントを開催していますが、今回はPS4®というゲーム機で遊べるゲームを開発し、PS VRでその世界に入ることができるという点で、これまでと大きく違います。
PS VRの感動は、実際に体験してみないとわかりませんし、最初は緊張していたメンバーのみんながPS VRを体験して気分が高まり、熱狂が生まれたのはすごかったですね。
開発に入るときの集中力や、オンとオフの切り替えも、いつものキャンプより強く見受けられました。
自分だけのゲームを作り、最後にPS VRで遊べることがモチベーションになっていたと思います。
完成した作品もバリエーションが豊かで、みんながオリジナルの世界を作ってくれたことはよかったです。
自分が作った世界に入れるというのは、ずっと夢見ていたことだと思います。
それを実現させるのがPS VRであり、今回のようなイベントです。
たくさんの応募があった中で一部の人にしか伝えられなかったので、これからもっと多くの人に届けられるようがんばっていきます」
今回、SIE×Life is Tech ! 「VR CAMP with PlayStation®VR」に参加できなかった方、新たに興味を持った方も、次の機会にぜひ期待してほしい。
引用元:PS BLOG
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