AIが文章や画像を生み出すだけでなく、現実の世界でロボットを動かし、さまざまな作業を担う。そんな「フィジカルAI」の実用化に向けた取り組みが広がっています。2026年9月16日、東京で開催された「フィジカルAI Summit」にて、株式会社HatsuMuvがセミヒューマノイドロボット「08式モビルロイド」を初公開しました。


08式モビルロイドは、人型の上半身と移動台車を組み合わせたロボットです。人の動きをロボットに反映し、両腕だけでなく胴体や頭部まで直感的に操作できることが特徴。さらに、人が操作した際に得られるデータを、AIや模倣学習の研究に活用することも想定されています。


研究室での実験だけでなく、製造・物流現場での遠隔作業なども見据えて開発された08式モビルロイド。人がロボットを動かす技術と、そこから学ぶAIはどのようにつながっていくのでしょうか。その仕組みや特徴、今後想定される活用について見ていきます。


HatsuMuvが初公開した「08式モビルロイド」とは?



HatsuMuvが初公開した「08式モビルロイド」は、人型の上半身と安定した移動台車を組み合わせたセミヒューマノイドロボットです。人のような腕や胴体、頭部を持ちながら、下半身には台車を採用しているのが大きな特徴です。


開発で重視されているのが、人の感覚や動きを生かした操作です。人の視覚・聴覚・力覚を活用しながら、両腕だけでなく胴体や頭部まで直感的に動かせるよう設計されています。人が環境を認識し、判断して体を動かす一連の流れを、できるだけ自然にロボットへ反映できる研究開発プラットフォームを目指しています。


想定されている用途も、ロボットそのものの研究だけではありません。研究室内での安全な実験をはじめ、製造・物流現場での遠隔作業、AIや模倣学習の研究など、幅広い場面での活用が視野に入っています。


では、人間の動きをどのようにロボットへ伝え、腕だけでなく頭や胴体まで操作するのでしょうか。次に、08式モビルロイドの操作を支える仕組みを見ていきます。


自分の体を動かすように操作、人の動きをロボットへ反映



08式モビルロイドでは、人の身体構造や普段の作業姿勢を基準に、肩や肘、前腕、首、胴体などの関節の位置や動かせる範囲が設計されています。ロボット側の都合だけで動きを決めるのではなく、人の身体の動きに近づけることで、より自然な操作を目指しているのが特徴です。


操作にはVR機器やモーションキャプチャーを活用します。操作者の身体の動きを取得してロボットへ反映することで、両腕だけでなく、頭や胴体を含めた動きを直感的に操作できる仕組みです。操作者自身の身体の動きをロボットへ自然に反映し、自分の身体を動かすような操作を目指しています。


さらに、ロボットが物に触れた際などの力に関する情報を操作に生かす「力覚」も活用されています。こうした仕組みは滑らかな遠隔操作だけでなく、ロボットが作業した際の質の高いデータを集めることにもつながります。


そして、この「人がロボットを操作したときのデータ」が、08式モビルロイドとAIを結びつける重要なポイントです。次は、人の操作がフィジカルAIの学習にどのようにつながるのかを見ていきます。


人が動かしたデータをAIの学習へ、フィジカルAIとのつながり



今回のロボットを理解するうえで欠かせないのが「フィジカルAI」です。フィジカルAIとは、カメラやセンサーなどを通じて現実世界の状況を認識し、得られたデータをもとに学習・判断しながら、ロボットや設備を動かして現実世界に働きかけるAIを指します。


その研究では、AIに学習させるためのデータをどのように集めるかも重要になります。08式モビルロイドは、人が操作しやすいことに加え、作業中にロボットが見た情報や感じた力、人がどのようにロボットを動かしたのかといったデータの収集を支援する設計となっています。


こうしたデータは、人の動作をAIに学ばせる「模倣学習」の研究にも活用できます。人が環境を認識し、判断して行動する流れをロボットへ自然に反映しながら、その過程で得られるデータをAI研究につなげられることが、08式モビルロイドの研究開発プラットフォームとしての役割です。


製造や物流、建設、介護、インフラなど、フィジカルAIの活用が期待される分野は幅広くあります。08式モビルロイドも、まずは研究や遠隔作業などでの活用を想定しながら、AIとの連携や将来的な自律化を見据えて開発が進められています。


研究から製造・物流の現場へ、法人・研究機関向けの導入相談も開始



08式モビルロイドは、さまざまな研究に利用できるよう、カメラやセンサー、各種デバイスを追加できる取付スペースやUSBスロットを備えています。配線をカバー内部に収め、外装の角やコネクターの露出を抑えるなど、人の近くで扱うことを考えた安全性にも配慮されています。


ロボットの動きを支える技術のひとつが、日本と台湾の技術を組み合わせて開発されたQDDモーターです。大きな力が必要となる肩や肘などに適したモジュールを配置し、高い耐久性や冷却性能、素早い反応を目指した設計となっています。


開発はHatsuMuvだけで進められたものではありません。株式会社東海林ファジィロボット研究所とアスラテック株式会社が技術協力し、それぞれが持つロボットのハードウェアや制御、遠隔操作などの知見を活用。研究環境での使いやすさと、将来的な現場での利用を見据えた拡張性の両立が図られています。


今後は研究開発用途や製造・物流現場での遠隔作業を中心に、法人・研究機関向けの販売・導入相談を開始します。用途に合わせたカスタマイズやAI・模倣学習システムとの連携にも対応し、導入先での実証や運用を重ねながら、さらなる機能向上と自律化を進めていく予定です。


人の動きを学ぶロボット、フィジカルAIの実装は次の段階へ


人の身体の動きをロボットへ反映し、その操作から得られるデータをAIや模倣学習の研究にも活用する08式モビルロイド。人による直感的な操作とAIの学習をつなぐ研究開発プラットフォームとして開発されています。


現時点では、研究開発や製造・物流現場での遠隔作業などが主な用途として想定されています。一方で、導入先での実証や運用を通じて機能を高め、さらなる自律化も進めていく方針です。


AIがデジタルの世界だけでなく、ロボットという身体を通じて現実世界で動くフィジカルAI。その実用化に向けて、人による操作から得られるデータをどのようにAIの学習へつなげていくのか。08式モビルロイドの今後の展開にも注目したいところです。


情報提供元: ミライクエスト
記事名:「 人の動きをロボットへ反映、HatsuMuv「08式モビルロイド」が描くフィジカルAI