TOKYO, Mar 9, 2018 - (JCN Newswire) - 株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:東原 敏昭/以下、日立)は、社会インフラ・産業機器等の機械要素部品の表面処理として使用されている工業用クロムめっきに対して、環境への影響が懸念されている6価クロム*1を使用せずに、クロムめっきと比べ4倍の耐食性と同等の耐摩耗性を両立する多層硬質ニッケルめっき技術を開発しました。本技術を現在クロムめっきが用いられている機械要素部品に適用することで、製品のライフサイクルにおける地球環境負荷の低減ならびに人々の健康保全に貢献していきます。

工業用クロムめっきは、その膜の持つ硬さ、耐食性、耐摩耗性に優れた特性を材料の表面に付与でき、かつ低コストなプロセス技術であることから、各種金型、機械部品等の用途に幅広く用いられています。一方、クロムめっき液の主成分である6価クロムは、人体への有害性や水質・土壌への環境負荷の観点からさまざまな環境関連法規制でその使用の低減が望まれています。現在、化学物質を適切に管理するための国際的枠組みづくりの進展を背景に制定されたREACH規則*2においては、6価クロムは代替技術への切り替えが困難、かつ使用が不可欠な場合にのみ、認可を得た上での使用が許容されていますが、今後さらなる規制の強化が見込まれています。そのため、6価クロムを使用せずに、クロムめっき膜が持つ優れた特性を実現する代替技術の確立が必要となっています。

今回、日立は、金属組織を微結晶化する新たなニッケルめっき液と、被めっき材料表面に層状の金属組織を形成する製膜技術を組み合わせることで、耐食性と耐摩耗性の両立を実現しました。開発した技術の概要は以下の通りです。

1. 金属組織を微結晶化する新たなニッケルめっき液
クロムめっきは、耐食性が相対的に低いため、塩害や腐食性ガスにさらされる部品など高耐食性が求められる用途では、より耐食性の高いニッケルめっきが使われます。しかし、ニッケルめっきは耐食性に優れる一方で、結晶粒子が大きく、クロムと比較すると硬度が劣るため、耐摩耗性に課題がありました。今回、ニッケルが有する高耐食性を維持しながら金属組織を微結晶化し、耐摩耗性を向上させる特殊な添加剤を含むニッケルめっき液を開発しました。開発したニッケルめっき液で製膜したところ、皮膜の金属組織をナノ*3オーダーの粒子径に微結晶化でき(図1.(a))、皮膜が硬質化することで、耐摩耗性を向上できることを確認しました(図2.硬質ニッケルめっき膜)。

2. 被めっき材料表面に層状の金属組織を形成する製膜技術
耐摩耗性のさらなる向上手法として、被めっき材料表面に層状のニッケル金属組織を形成する製膜技術を開発しました。同一の金属を多層状に形成する場合、各層を分断する性質の異なる層を導入する必要があり、プロセス上の課題がありました。今回、めっき時に加える電流パターンを制御することにより、皮膜に取り込まれる添加剤の量をコントロールできる手法を見出しました。この手法で製膜したところ、硬質ニッケル層が添加剤含有量の異なる層を介して多層化した皮膜構造を形成でき、多層膜内へ転位*4を導入できることを確認しました(図1.(b))。この多層化によりめっき皮膜が高強度化し、多層化前の硬質ニッケルめっき膜に比べてさらに耐摩耗性を向上できることを確認しました(図2)。

今回開発した多層硬質ニッケルめっき技術により得られためっき皮膜は、JIS*5に規定される工業用クロムめっきの硬度基準を満たすとともに、従来のクロムめっきに比べて4倍の耐食性と、潤滑油の介在する条件下の摩耗試験*6において同等の耐摩耗性を示すことを確認しました(図2.多層硬質ニッケルめっき膜)。

今後、社会インフラ・産業機器等の機械要素部品を対象に本技術の実証試験を行うとともに、耐摩耗性のさらなる向上を図ることで、工業用クロムめっき代替技術としての普及をめざし、人体や環境への負荷低減に貢献していきます。

なお、本成果の一部は2018年3月12日から開催される、一般社団法人表面技術協会が主催する「第137回講演大会」にて発表予定です。

本リリースの詳細は下記をご参照ください。
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概要:日立製作所

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記事名:「 日立、有害な6価クロムを使用せず、耐食性・耐摩耗性を両立したニッケルめっき技術を開発