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TOKYO, Sep 4, 2017 - (JCN Newswire) - 株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、富士通研究所が2015年に開発した部屋全体をデジタル化するUI技術(注2)(以下、空間UI技術)を拡張し、多拠点間の円滑な共創活動を実現する技術を開発しました。
従来の空間UI技術は、1つの拠点内における複数の大画面と端末を連携したコラボレーションを可能にするもので、多人数でのデータ共有を効率的に行うことができました。しかし、多拠点を繋いでデータ共有する場合は、主にクラウドにデータを置いて多拠点から接続するため、データの編集操作や意見交換が繰り返される共創活動においては、外部ネットワークの遅延により操作感に影響が出るなど、円滑なコミュニケーションができないといった課題がありました。今回、データをクラウドではなく各拠点ローカルに持ち、ネットワークの遅延状況に応じて、コンテンツを動かした際の軌跡など不要なデータを削除して必要な差分データのみを同期する分散データ共有技術を開発することで、円滑な多拠点間のデータ操作を実現しました。また、どの拠点からも自由にアクセスする際に発生する操作競合を避けるために、遠隔側の操作状況がわかるアウェアネス伝搬技術を開発することで、多拠点間の共創活動における効率を改善しました。
本技術により、例えば、ものづくり現場では設計現場と海外拠点を含む製造現場を繋ぎ、データを素早く共有することでスピーディーに問題を解決可能とするなど、共創空間がネットワークやインターネットを通じて広がっていく世界を実現できます。
開発の背景
近年、スマート端末の普及やクラウド技術・通信技術の進展により、製造現場などにおける課題を遠隔地でも端末の画面上で共有できるようになっています。しかし、現状はテキストや画像データの共有に限定され、関係者が大人数で共有した画面を活用して議論することは難しい状況にあります。
富士通研究所が2015年に開発した空間UI技術は、1つの拠点内における複数の大画面と端末を連携したコラボレーションを可能にしており、多人数でのデータ共有を効率的に行うことができました。
ものづくりの分野では、設計現場と国内工場、海外工場、品質保証部門などを繋いで、現場の課題をタイムリーに短時間で共有し効率良く解決方法を探る仮想的な大部屋の構想(注3)があります(図1)。今回、この仮想的な大部屋を実現するため、空間UIの技術を多拠点に拡張する技術を開発しました。
課題
多拠点間のデータ共有として、遠隔地間を映像で繋いでPC画面を共有する技術がありますが、操作ができるのは1拠点のみになっているのが現状です。また、クラウド上の文書を複数拠点から同時に編集する連携技術も存在しますが、外部ネットワークの遅延の影響で手元の操作感に影響が出ます。データの編集操作や意見交換が繰り返される共創活動において、拠点内でも拠点間でも円滑にデータを操作、共有できる技術や、どの拠点からも自由にアクセス可能とした際に同じデータを複数人で同時に操作する操作競合が発生した場合にも、作業の効率を低下させない技術の実現が課題でした。
開発した技術
今回、多拠点を繋いで、同一データを共有しても操作感に影響を与えないネットワークの技術と、操作競合を軽減するUIの技術を開発しました。
開発した技術の特長は以下の通りです。
1. 円滑なデータ操作を実現する分散データ共有技術
画面操作やアプリケーションのデータを、クラウドではなく各拠点ローカルに持ち、必要なデータだけを同期する分散データ共有技術を開発し、円滑な操作や共有を実現しました(図2)。ユーザーのアプリケーション操作は、同じ拠点内のディスプレイや端末にはそのまま共有されるため、リアルタイムに滑らかな操作や共有が行えます。他の拠点とのデータ共有では、各拠点までのネットワーク遅延状況に応じて、コンテンツを動かした際の軌跡など不要なデータを削除することにより、効率的な通信を実現します。本技術について実験を行った結果、多拠点間のデータ共有における遅延は技術適用前に比べ約9割短縮し、3拠点で最大2.1秒、6拠点で最大3.1秒で同期され、またローカルのデータ共有は拠点が増えても一定(0.3秒以下)であることを確認しました。これにより、拠点接続数にローカルのレスポンスが左右されず、同期時間もローカルのコラボレーションを妨げることがなく十分に高速なため、本技術の実用性が確認できました。
2. 相手側の操作状況を知らせるアウェアネス伝搬技術
操作競合が発生する問題に対し、遠隔側の操作状況がわかるアウェアネス伝搬技術を開発しました(図3)。相手先が操作しているコンテンツをフラッシュ表示させたり、相手先の人の影を表示させるなどにより遠隔側の状況を知らせます。これにより、操作者に対し、相手先で操作中のコンテンツへの操作を自粛するように気づきを与え、操作競合を削減できます。本技術を用いて、2拠点で共同で写真や手書き付箋を分類するタスクを行う実験を行った結果、本技術を適用しない場合と比較して50%の操作競合(操作競合:本技術適用なし22回、適用あり11回)を抑制でき、作業効率を約26%改善(操作回数:本技術適用なし329回、適用あり241回)できることを確認しました。
効果
本技術により拠点間の操作競合を抑制しながら円滑な同時操作を実現できます。これにより、複数の大画面を使ったコラボレーションを多拠点間で行うことができ、例えば、ものづくりの現場では課題共有と意思決定の迅速化だけでなく、通常オフィスにおけるアイデア発想を集合することなく行えるなどワークスタイルの変革が実現できます。また、教育現場では、学校間交流による遠隔アクティブラーニングなど新しい授業のスタイルを実現できます。
今後
富士通研究所は今後、これらの技術を社内に展開し、発想支援の有効性を検証する実証実験を進め、2018年度中の実用化を目指します。富士通研究所は本実証実験を通して、知の創造をICTが支援するワークスタイル変革に向けた取り組みを推進します。
注釈
注1 株式会社富士通研究所:
代表取締役社長 佐々木繁、本社 神奈川県川崎市。
注2 部屋全体をデジタル化するUI技術:
部屋全体をまるごとデジタル化するUI技術を開発し、ICTによる共創支援の実証実験を開始(2015年7月27日プレスリリース)
注3 仮想的な大部屋の構想:
「仮想大部屋によるスマートなものづくり」雑誌FUJITSU 2016-5月号(Vol.67, No.3)
本リリースの詳細は下記をご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/09/4.html
概要:富士通株式会社
詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。