企業は外部環境の激しい変化の中で生き抜く為にも「DX」の取り組みは急務ですが、「DXを推進できる人材がいない」「スキルを持った人材を育てられない」といった人材・組織に関する課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。東京都市大学では2024年1月、DX人材の育成を支援する社会人向けリカレントプログラムを開講。11月には後期プログラムも始動し、企業が真に求めるDX人材の育成に乗り出します。リカレントプログラムを推進し、実際に講師も務める株式会社YKB 代表取締役 川邉雄司氏に、リカレントプログラム開講に至った経緯やプログラムの詳細、どんな人材を輩出したいのかを聞きました。(聞き手:デジタルシフトウェーブ 海道理彩)

環境問題への関心からDX人材育成の道へ

ーー川邉さんのこれまでの経歴と、今回のリカレントプログラムに関わるようになった経緯を教えてください。

川邉:私は東京都市大学(旧武蔵工業大学)の環境情報学部出身です。入学した1998年当時、環境問題は社会的に注目され始めた頃で、私も強い関心を持っていました。大学卒業後、半導体を扱う商社からキャリアをスタートしWebシステム会社の起業やSaaS企業への転籍などIT系の仕事をしてきました。その後、上場企業へのM&A後、今の会社(YKB)を起業しスタートアップや新規事業のアクセラレーションなどを行っています。昨年、母校である東京都市大学が、大学が得意とする応用的なデジタル・グリーン分野をテーマにした実践的なプログラムを社会人向けに立ち上げる予定があり、大学と企業の架け橋になれる人材を探しているとお声がけいただいたので携わることになりました。なお、2022年には日本オムニチャネル協会という一般社団法人で、DX人材の育成を目的とした分科会も担当してきました。

写真: YKB 代表取締役 川邉 雄司氏

ーー日本オムニチャネル協会の分科会では、どのような活動をしていたのですか?

川邉:企業がDX人材をどのように育成していくべきか、その課題や解決策について議論を重ねていました。多くの企業が、DX人材の必要性を感じながらも、どのように育成すべきか見出せずにいるという声が多く聞かれました。また、DX人材の育成にはコストがかかる一方で、育成した人材がスキルアップすると自身の市場価値が上がった事を契機に他社へ転職してしまうという笑えない現実もありました。

社会と大学の変革を促す、リカレントプログラム誕生の背景

ーー企業側のDX人材育成に対する課題意識と、大学の社会人教育の必要性が合致したのが、今回のリカレントプログラムなのですね。

川邉:その通りです。人生100年時代において、企業は求める人材は変化しますし、働く側もライフスタイルの多様化や、長い職業人生の中で複数回のキャリアチェンジは必要です。文部科学省も、大学に対してリカレント教育の推進を要請しています。東京都市大学でも、少子化による学生数の減少といった課題を抱える中で、社会人向けのプログラムは、大学の新たな可能性を切り拓くものとして期待されています。

企業のニーズと大学の知見を融合した実践的プログラム

ーーそれでは、今回開講されるリカレントプログラムについて、詳しく教えてください。

川邉:大学のOBでもありDXコンサルを行っている、鈴木康弘氏に今回のプログラムの監修に携わっていただきつつ構成いたしました。
このプログラムは、DX推進に必要な知識やスキルを体系的に学び、企業の変革をリードできる人材を育成することを目的としています。特徴は大きく3つあります。

1つ目は、専門的・実践的内容と基礎的内容を網羅したカリキュラムである点です。経済産業省が公表している「デジタルスキル標準」も参考にしつつ、企業が求めている即戦力となるDX人材を輩出できるよう、ビジネス変革に求められる実践的な内容と基礎的な共通スキルの両方を学べるように構成されています。

2つ目は、東京都市大学のOBである、各業界の第一線で活躍するビジネスリーダーたちが講師を務める点です。彼らが持つ豊富な経験や生の声を聞けることは、受講者にとって大きな刺激になるはずです。

3つ目は、受講者同士のネットワーキングを重視している点です。同じ志を持つ仲間と学び、刺激し合うことで、プログラム終了後も続くコミュニティが形成されることを期待しています。他にもキャリアセンターが中核となってプログラムの開講に関わっている為、自身のスキルアップ後のキャリアについても相談することができます。

実践で活かせる学びを提供する豪華講師陣

ーー非常に実践的なプログラムですね。具体的に、どのような内容の講義が行われるのでしょうか?

川邉:はい、カリキュラムは「必修科目」と「選択科目」で構成されています。「必修科目」では、DX推進を担うリーダーとして必要なスキルを、各分野の第一人者から学びます。なんと皆様東京都市大学のOBでもあり、今回の講演に関しても大学にとって、また将来の人材育成の必要性に共感いただき、二つ返事で快く引き受けていただきました。

ーーどのような方からお話を聞くことができますか?

川邉:実際に第一線で活躍する方々に講演いただく予定です。例えば、今回のリカレントプログラムの監修を務める鈴木氏もその一人です。鈴木氏は過去に富士通、ソフトバンク、セブン&アイホールディングス、さらにはデジタルシフトウェーブの代表取締役社長として、組織運営や人材育成に関する豊富な経験を積まれてきました。その経験を生かし、DXにおけるリーダーシップ力やパーソナルスキルについての講義を行っていただきます。

オールアバウトの代表取締役社長兼グループCEOである江幡哲也氏にも講演いただきます。江幡氏は20年以上にわたりオールアバウトを経営し、常にビジネス戦略や企業そのもののアップデート・変革に取り組んでこられました。これまでの経験を基に、環境変化をチャンスにする経営戦略についての講義を行っていただきます。

さらに、アイロボットジャパンの代表執行役員社長である挽野元氏は、外資企業においてプロダクトをどのように日本市場に適応させて展開していくかというプロセスに携わってこられました。その経験をもとに顧客価値創造型の製品戦略についての講義を行っていただきます。

トリドールホールディングスの執行役員兼CIO兼CTOである磯村康典氏には、これまでのキャリアも振り返りながら、情報部門のトップの立場から経営戦略としてDXをどのように捉えていくのかといった講義を行っていただきます。

私も「市場動向と成功要因の探索」をテーマに、現在のトレンド、自社のサービス、そして顧客が求めるものがいかに合致するかについての講義を行います。

ーー現場で培われた実践的な内容ばかりで、非常に魅力的ですね。

川邉:「変革」と聞くと、新規事業開発を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実際には既存事業の高度化や社内業務の効率化も非常に重要です。今回のプログラムでは、下記のような方々に受講いただきたいと考えております。

・DXを理解し推進したい方、または今後担当したい方
・現場で即活用できる最新で実践的なDXスキルを身につけたい方  
・既存事業の高度化を目指している経営層や事業責任者の方
・社内業務の効率化を推進したいシステム部門や管理部門の方
・DXスキルを習得して自身のキャリアアップやキャリアチェンジしたい方

DX人材育成を通して、社会に貢献できる人材を輩出

ーー最後に、このリカレントプログラムを通して、受講者にどのような未来を掴み取ってほしいですか?

川邉:DXは、特定の業界や企業だけの課題ではありません。社会全体を巻き込む大きな変革です。このプログラムを通して、受講者には、DX推進を担うリーダーとして、自らのキャリアアップはもちろんのこと、社会全体に貢献できる人材へと成長してくれることを期待しています。

ーー川邉さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

リカレントプログム詳細:
募集開始:2024年10月7日(月)
受講期間:2024年11月15日(金)~ 2025年2月末
開講場所:TCU Shibuya PXU (東京都市大学 渋谷パクス)
     渋谷区道玄坂1-10-7 五島育英会ビル8階

写真:TCU Shibuya PXU 校舎内写真
写真:TCU Shibuya PXU 校舎内写真
情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 企業が求めるDX人材を育成! 東京都市大学が仕掛けるリカレントプログラムの魅力とは?