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人間関係を構築する上で必要なコミュニケーション。多くの人は「会話すれば関係を構築できる」と思っていますが、これは間違いです。では、真の人間関係を構築するコミュニケーションとは。相手を理解するには会話以外の何に目を向けるべきか。相手を理解するときに必要な心構えについて考えます。【週刊SUZUKI #126】
「外交」を通じて人間関係を構築するには、その相手と多くの会話を重ねるだけでは不十分です。大切なのは、会話の奥に隠された「心の底」を理解しようとする姿勢です。相手が何を思っているのか、どう考えているのかを正しく理解しない限り、良好な人間関係を構築できません。
では、心の底をどのように理解すべきか。話を聞く側は相手の本音や真意を読み取ろうと意識して努めるべきです。人は言葉ですべてを表現できるわけではありません。伝えたいことが相手に正確に届かないケースも珍しくありません。そのため、言葉以外のサインに注意を払うようにします。具体的には相手の表情、ジェスチャー、視線、声のトーン、さらには沈黙の間などのサインを見逃さないようにします。例えば、口では「大丈夫」と言っても、相手の表情や声に力がない様子から「本当は大丈夫ではないのでは…」と察することはよくあります。言葉と本音が合致しないケースは珍しくありません。話している内容をただ理解するのではなく、その人が本当は何を言いたいのかをサインから読み取ることがコミュニケーションでは重要です。
話の違和感を見逃さないようにすることも大切です。会話を続けると、話題が突然変わったり表現に不自然さがあったりすることがあります。このような話の中の違和感を見過ごさないようにします。もし違和感に気付いたら、「大丈夫?」や「何か気になることがあるの?」などと丁寧に問いかけます。相手との会話に真剣に向き合っていれば、相手は隠していた本音を話し始めるかもしれません。何気ない言葉の裏にある事情や気持ちを探る姿勢が、本質的な理解につながるのです。
会話中に自分が何を話すのかばかり考えていると、相手の変化や違和感に注意が向かなくなります。相手の話に集中し、相手の所作を観察するよう心掛けるべきです。さらに、相手が話しているときにはうなずきやアイコンタクトを交え、相手の反応を逐一確認する意識を持ちます。すると、相手の微妙な変化に気付きやすくなります。話を聞くときは体を相手に向けて目線も合わせるなど、物理的な向きや距離も観察力に大きく影響します。さらに、PCでメモを取りながらの会話は相手の変化に気付きにくくなるので控えるべきです。
最近はオンラインでコミュニケーションを図る機会が増えました。遠隔の人と容易に会える利便性を見込めるものの、PCやスマートフォンの画面越しでは言葉以外のサインや違和感に気付きにくくなります。真の人間関係を構築するなら、対面で本音や真意を探る機会を作り出すべきです。オンラインで何度話しても築けなかった人間関係が、たった一度対面するだけで築けることはよくあります。表情やジェスチャーなどの言葉以外のサインは、言葉以上に本音や真意を物語っているのです。
【外交の心得 その3】
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。