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相手との距離を縮めて良好な人間関係を構築するためには、相手よりもまず自分を理解することが大切です。そもそも「自分は何者なのか」。この問いと徹底的に向き合わなければ、相手との距離は一向に縮まりません。では、自分をどう理解すればよいのか。理解するにはどんな姿勢が必要か。自分を理解するために必要な心構えについて考えます。【週刊SUZUKI #125】
周囲との適切な人間関係を構築するには、相手を深く理解する歩み寄りの姿勢が欠かせません。相手の言葉の裏にある真意や、行動の背景にある感情を汲み取ろうとすることは、円滑な人間関係、ひいてはビジネスの成功に不可欠です。
しかし、それ以前に目を向けるべきことがあります。それが、自分自身です。自分は何者なのかを深く理解しない限り、他者を真に理解することは到底できません。
相手との心理的距離を縮め、互いに共感し、学び合う関係を築く「外交」に取り組むには、自分自身を知ることが最初のステップとなります。自分の価値観、興味、強み、弱みを明確にすることで、初めて相手のそれらと比較し、共通点や相違点を見出すことができるからです。自分が何者かを理解していない状態で周囲に理解してもらおうと考えるのは、当然ながら無理があります。
では、自分をどのように理解すればよいのでしょうか。大切なのは、自分の考え方や感情に目を向けることです。具体的には、何かに強く反応したときに「なぜこの場面で怒りを感じたのか」「なぜ不安になったのか」と自問します。過去の経験や自身の価値観から答えを探ることで、「自分はこんな人なんだ」というパターンが見えてくるようになります。「なぜうれしいと感じたのか」「周囲が反対する中、なぜ自分だけ肯定的に捉えたのか」などの要因を探るのも有効です。自分を冷静に分析する視点を養うことで、バイアスに左右されずに自分を評価できるようになります。
周囲の自分への評価に耳を傾けることももちろん大切です。自分では気づかない特徴や癖、考え方の傾向などを周囲の同僚は見抜いていることが多々あります。上司、同僚、部下、友人などからフィードバックを受ける機会を積極的に設けることで、自身の考えとのギャップを埋めるようにします。自身の考え(主観)と周囲の評価(客観)を何度も反復することで、自分への理解をより深められるようにします。中には「普段の態度がよくない」「真剣に仕事に取り組んでいるように見えない」などの否定的なフィードバックもあるでしょう。しかし、こうした声に対して感情的になってはいけなせん。自分を理解する好機と前向きに受け止めるべきです。
なお最近は、「MBTI」に代表されるパーソナル診断ツールが多々登場しています。自分の思考や行動パターン、他者との関係を客観的に評価する手段として、こうしたサービスを活用してもよいでしょう。
人間関係を構築する「外交」を極めるなら、自分を理解するための努力を怠ってはなりません。自身の内面を見つめる時間を確保するとともに、周囲の評価を素直に聞き入れるようにします。「自分は何者なのか」の答えを導き出したとき、はじめて相手との距離は縮まるようになるのです。自身の判断や行動に一貫性や納得感を持たせられるようにもなるのです。
【外交の心得 その2】
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。