仕事とは常に先が見えないもの。そんな中でも動静を見極め、突き進まなければならないのがリーダーの務めです。どんなリスクが潜むのか、現在のプロジェクトにどんな影響が及ぶのかを、周囲のさまざまな動向から読み取る力がリーダーには必要です。ここではリーダーが備えるべき「道天地将法」の1つで、機会を意味する「天」の意義について考えます。【週刊SUZUKI #119】

リーダーとして成功し続けるために必要なことの1つが、「道天地将法」の「天」です。「天」は、機会を意味します。つまり兵法でいえば、戦で勝つためには機会に恵まれるべきということを表しています。

プロジェクトを主導するリーダーにとって「天」とは、周囲のさまざまな動向を読み取り、必要なアクションを起こすことを意味します。「天」は天災のように自分でコントロールできるものではありません。だからこそリーダーは、先々に起こり得ることを読み取る力が重要になってくるのです。あらゆる事態を想定し、解決策を導き出せるようならなければならないのです。

プロジェクトの中には、ゴールまでの期日が突然縮んだり、成果物の変更を余儀なくされたりするものもあります。このような状況でもリーダーは柔軟に対応し、プロジェクトを成功に導かなければなりません。

このとき大切なのが、プロジェクトを取り巻く状況を探り、どんなリスクが起こり得るのか、どんな影響が及ぶのかを読み取ることです。プロジェクトに直接関係ないことにもアンテナを貼り、日本はもとより世界情勢を含め、常にプロジェクトとの因果関係を探るようにします。他国の国政や経済情勢、戦争、デモなど、一見関係しない事象とプロジェクトの関係を模索します。無駄に終わるかもしれませんが、事前に影響を探っておくことが非常時の迅速な対応を生みます。その一手を先んじて打てるかどうかがプロジェクトの成功を左右するのです。

もっともプロジェクトの影響を探るだけでは意味がありません。必要なら迅速に行動へ移すことが大切です。プロジェクトに影響を及ぼす懸念があるなら、早めに対策を講じておくようにします。プロジェクトへの影響を探りつつ、非常時に備えた行動をいち早く起こせる人こそ、リーダーに向いています。

近年は「VUCA」が叫ばれているように、不確実な状況が常態化しつつあります。こうした状況だからこそ、世の中の動静を探ることの重要性は増しているのです。「天」の考えこそ求められる時代となっているのです。目の前のプロジェクト推進に注力する一方、周囲や社会の流れをきちんと読み取る力がリーダーには必要なのです。

【リーダーの心得 その27】

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。

情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 リーダーは世の中の動き「天」を読み取れ!