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仕事に取り組むときの心の拠り所となるもの。その1つが「論語」に書かれている5つの「徳」、「五徳」です。五徳を通じて何を学ぶべきか。五徳が仕事にどう役立つのか。どんな心構えが身に付くのか。今の時代こそ求められる「五徳」について考えます。【週刊SUZUKI #54】
仕事に取り組む態度や姿勢、向き合うために必要な考え方は、人として学ぶべきことに通じます。仕事に実直に取り組むことで、人としての土台を築けるのです。
では、仕事に取り組む姿勢、成長の土台を築くにはどんな心構えが必要でしょうか。
その答えの1つが「五徳」です。中国の書物「論語」に記された5つの「徳」で、人として正しい振る舞いや望ましい考え方を説いています。具体的には信・義・仁・礼・智を指し、これらの言葉の意味を正しく理解し、心構えとして持つことが大切です。
私も五徳の考え方を何より大切にしています。私の場合、比較的若い時期に十数人の部下を持つ立場となりました。しかし、私は当時25歳。社会に出て数年しか経っていません。そんな若造が部下をどう指導し、どう振る舞えばよいのか。試行錯誤の毎日でした。
そんなときに出会ったのが五徳でした。たまたま読んだ論語に共感し、人として大切なことを学ぶきっかけとなったのです。それ以降、五徳は私の拠り所となりました。仕事で壁に直面したとき、部下の指導で行き詰まったとき、五徳の教えを胸に行動してきたのです。今でも五徳が精神的な支えとして、私の生きる糧となっています。
最近はテクノロジーの進化を背景に、物事の効率性や合理性ばかり追求されるようになりました。しかし、こんな時代だからこそ見直さなければならないものがあります。それが人間力です。社会や物事の価値が変わっても生き抜ける、人が本来持つ力(人間力)の重要性が増しているのです。社会や経済が劇的に変わる今こそ、人間力の大切さに気付かねばならないのです。この人間力の源泉こそが五徳だと考えます。
人として正しく振る舞えているか分からない、仕事と正しく向き合えているか分からないという人は、五徳の教えを身に付けるべきです。五徳に基づき、確固たる自分を築くべきです。五徳に基づく土台を築くべきです。信・義・仁・礼・智の5つが心に深く根付いたとき、「成長」という大輪の花を咲かせられるようになるのです。
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任