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埼玉県・久喜市立清久小学校は、コロナ禍が始まった当初からGoogle for Educationを導入し、教育現場でのデジタル化を進めてきました。具体的には、全児童・教員が1人1台のChromebookを持ち、Google Workspaceを活用することで、協働的な学びの実現に向けた取り組みを続けています。この取り組みの中で、同校が目指しているのは子どもたちが「ワクワクする学び」を体験することです。
清久小学校の情報主任である井上氏は、初めてChromebookやGoogle Workspaceを使ったときの戸惑いについて振り返ります。「私自身、これらのツールを使ったことがなく、初めは他社製品との違いに難しさを感じました。特にUIの部分では、どこを押せばいいのかわからず、教員も同様でした」と説明します。しかし、使い続けるうちに操作方法を習得し、教員間で情報交換を行うことで活用範囲が広がりました。それにより、授業の中でのICT活用が次第に定着してきたのです。
児童にとっても、新型コロナウイルス感染拡大によって在宅要請が出されている中で、じっくりと操作を教える時間を設けられたことが功を奏しました。基本的な操作に関してはすぐに習得できましたが、共同編集機能の利用には少し苦労もありました。特に中学年や低学年では、他の児童が入力した内容を上書きしてしまったり、消してしまうなどの問題も発生しました。しかしその中でも、共同編集を活用することで、児童の主体性の高まりを実感できたのです。
清久小学校では、ChromebookとGoogle Workspaceが授業や委員会、クラブ活動などあらゆる場面で活用されています。オンライン集会や教員同士のチャット、さらに学校日誌や週予定表の利用も進んでおり、家庭学習の一環としてChromebookで調べ物をする宿題も出されています。具体的な活用例としては、図工の授業で自分の作品をChromebookで撮影し、Googleスライドに載せてその内容をみんなで鑑賞することが挙げられます。これにより、児童は互いの作品を手軽に楽しむことができ、教員は評価をしやすくなります。
国語の授業でも同様に、Googleドキュメントを使用して作成した文章をGoogle Classroomを通じて提出する方法が採用されています。これにより、一括で確認することができ、授業においてGoogle Workspaceが果たす役割はますます増加しています。「特に共同編集の機能は、非常に便利です。中でもGoogle Jamboardは、様々な教科での話し合いの場面において、意見を集約しやすく、参加したい意欲を高めてくれています」と井上氏は語ります。
教員と児童は同じタイミングでChromebookとGoogle Workspaceを活用し始め、教員が使い方を教える場面も多かったですが、時には児童から教えられることもあったと井上氏は言います。「児童主体の探究が広がり、彼ら自身がさらなる活用法を発見する様子が見られます。例えば、休み時間に自分たちの好きな音楽についてのアンケートを作成して実施するなどの活動も見られました」と彼は続けます。
各学級でGoogle Classroomのルームを作成しており、教員によってはクラブや委員会でもその機能を使用し、さまざまな活動が展開されています。井上氏自身が多くの教員に影響を与え、Google Jamboardのアイデアを提案した結果、多くの先生がその方法を採用するようになっています。教員からの指示にかかわらず、児童がChromebookとGoogle Workspaceで自分たちから提案してくる姿は、主体性の高まりを示しています。
また、授業への参加感を高めるために、GoogleスライドやGoogleドキュメントを使い自分の考えを表現させていることが、普段は発表できない児童に自信を与える効果を生んでいます。「自分の考えを表現できることで、児童は実際に授業に参加している実感を得ています。このような主体性や考える力、新しい挑戦への姿勢が育まれています」と井上氏は、この取り組みの意義を強調しました。
さらに、清久小学校ではデジタルとアナログの良さを生かし、ハイブリッド学習を目指しています。教員が業務を効率化するためにGoogle Apps Scriptを活用し、学校日誌を作成する取り組みも進まっています。また、Google ClassroomやGoogleチャットでのコミュニケーションの円滑化によって、教員間の資料や連絡方法も改善されてきており、ペーパーレス化も実現しつつあります。
井上氏は、「教育の現場では、すべてをデジタル化するのではなく、必要な部分は紙を使うという考え方が大切です。文章を書く場合や漢字を身につける場面では、アナログが効果的なこともあります。デジタルとアナログを融合させていくことで、新しい学びの形を生み出していきたい」と力強く語りました。
最後に、彼は清久小学校が目指している「ワクワクする学び」の実現に向けた決意を示します。「多くの児童が将来の夢を持たないと答える中、デジタルを上手く取り入れることで、希望に満ちた未来を描ける子どもたちを育てていきたい。これからの教育が、そのような明るい未来への一歩であることを願っています」と締めくくりました。
【関連リンク】
久喜市立清久小学校
https://services.google.com/fh/files/misc/gfe-cs-kuki-kiyoku.pdf
執筆:DXマガジン編集部