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IT専門調査会社IDC Japan株式会社は、2024年9月11日に国内企業のデータプラットフォーム運用成熟度に関する調査結果を発表しました。本調査は、国内企業のデータプラットフォーム運用の状態を5段階に分類し、各企業の成熟度を評価するものです。2022年、2023年の結果と比較して、全体的な成熟度が向上していることが判明し、特にデジタルトランスフォーメーション(DX)が普及し始めてから7~8年経過した今、データ活用が業績に貢献している企業が増えている傾向が見られます。
IDCのデータ運用成熟度モデルでは、企業のデータプラットフォーム運用を以下の5段階に分類しています。このモデルは、企業がデータをどの程度活用し、ビジネスに組み込んでいるかを評価するために使用されます。
未整備(第1段階)
データ運用の仕組みがほとんど整備されておらず、データの管理や活用が組織内で体系的に行われていない状態です。この段階では、データ活用が個別のプロジェクトに限定され、組織全体での運用体制が構築されていないため、データからの価値創出が難しい状況にあります。
途上前期(第2段階)
データ運用の仕組みを整備し始めているものの、依然として多くの改善点が残っている状態です。データの収集や管理は一部で行われていますが、まだ一貫性や統一性が欠如しており、データの有効活用が組織全体に行き渡っていないケースが多い段階です。
途上後期(第3段階)
データ運用の仕組みがかなり整備されており、運用面での課題も少なくなっている状態です。この段階では、データ活用がビジネスに一定の効果をもたらし始めており、組織全体でデータに基づく意思決定が行われるようになっています。
要件充足(第4段階)
データ運用の仕組みが組織全体で確立され、ビジネス要件を十分に満たしている状態です。データは全社的に活用され、業績向上やビジネス目標の達成に寄与しています。データ活用が標準化され、デジタル化が業務効率の向上に貢献している段階です。
迅速な適応(第5段階)
データ運用の仕組みが高度に整備され、環境変化に素早く対応できる状態です。競合状況や規制の変更など、外部環境の変化にも柔軟に対応し、AIや自動化技術を活用して業務の最適化が進んでいる段階です。しかし、この段階に到達している企業はまだ少数であり、AI技術の進化にタイムリーに対応し続けることの難しさが指摘されています。
データ運用の成熟度を評価するために、以下の6つの判定項目が使用されました。これらの項目は、各企業のデータ運用状況や能力を多角的に評価するために重要な指標です。
データ活用/管理の業務への貢献度
データが業務にどの程度役立っているか、どれだけの成果を上げているかを評価します。データの有効活用が業績向上に結びついているかが重要な要素となります。
データ活用や分析の能力、人材などのリソース
データを活用するための人材や技術的な能力が整っているかを測ります。企業内にデータサイエンティストや分析専門家がいるか、データ活用に関するスキルが社内で共有されているかが焦点です。
データガバナンスの整備状況
データの管理体制がどれだけ整備されているかを評価します。適切なデータ管理ルールやセキュリティポリシーが導入されているか、データの品質管理が徹底されているかが重要です。
業務部門とデータ管理部門の協力
データを管理する部門と、実際に業務を行う部門がどの程度協力しているかを評価します。データ管理が業務効率化にどれだけ貢献しているか、部門間の連携がスムーズに行われているかがポイントです。
利活用データの範囲
どの範囲のデータが業務に活用されているかを測ります。全社的にデータが活用されているか、一部のデータのみが使われているのかが、企業のデータ活用度を左右します。
データ管理における分野別の環境整備状況
企業が取り扱うデータに関する分野(製造、販売、顧客管理など)ごとに、どれだけの環境が整備されているかを評価します。各分野でのデータ運用体制の整備が、業務効率化に貢献しているかが焦点です。
本調査結果から、データ運用の成熟度が全体的に上昇していることが確認されました。未整備段階の企業が減少し、途上後期から要件充足、迅速な適応までの段階に進む企業が増えています。しかし、第5段階の迅速な適応に到達している企業は依然として少数であり、AI技術の進化や外部環境の変化に対応するためには、さらなる取り組みが必要です。
今後、データ駆動型の業務自動化や知識ベースの拡充がますます求められる中、企業はデータ品質の向上やAI技術の導入を進める必要があります。これにより、より高い成熟度を達成し、外部環境の変化に迅速に対応できる体制を整備していくことが重要です。
IDC Japanのレポート「2024年 国内データプラットフォーム運用成熟度調査」では、データ運用の現状と今後の取り組みについての詳細な分析が行われています。企業がデータを活用し、デジタル変革を加速させるための具体的な施策も提言されています。
執筆:熊谷仁樹