公共訴訟とは、国や地方自治体を相手に社会課題の解決を目指す訴訟のことを指します。これまでの制度では、多数決で物事が決まる立法や行政のプロセスにはあまり関与できない少数者やマイノリティの声が、司法の力によって尊重される場面が出てきます。しかし、日本はこの公共訴訟への取り組みが他国に比べて非常に限定的であり、「公共訴訟後進国」と言われることもあります。多くの市民が直面する社会問題は多岐にわたりますが、法律の専門的知識を持たない市民には、訴訟を通じてそれらの問題に立ち向かうのは容易ではありません。したがって、公共訴訟の支援とその実行を専門的に行う団体の設立が極めて重要になっています。

そんな中、2023年に発足したのが日本初の公共訴訟支援に特化した専門家団体「LEDGE」です。LEDGEは、法律のスペシャリストを集め、公共訴訟を通じた社会課題の解決を目指す組織です。弁護士やリサーチャー、キャンペーナーからなるチームは、公共訴訟のみに特化することで、司法を活用した社会変革を加速する狙いがあります。LEDGEは、公共訴訟支援の質を向上させるため、必要なリソースを社会から集め、社会全体の認識を高めるためのキャンペーンも展開します。その目的は、公共訴訟を社会の不合理を解消する重要な手段として認識させることです。

LEDGEは、2024年11月13日から12月20日まで、クラウドファンディングプラットフォーム「READYFOR」にて500万円を目標に支援を募ります。この資金は、公共訴訟を戦略的に提起するための活動資金として活用される予定です。特に、LEDGEは「公共訴訟は原告だけでなく、市民一人一人が力を結集して共に取り組むもの」と位置づけています。クラウドファンディングを通じて集まった寄付金は、公共訴訟の遂行に必要な費用に充てられるため、市民にとっても大きな参加意義があるのです。

LEDGEの活動は、単なる資金調達に留まりません。今後の5年間で30件の公共訴訟を戦略的に提起し、その結果をもとに社会へ実際に影響を及ぼそうとしています。そのためには、全国各地に拠点を設置し、国連などの国際機関や国内外の市民団体と連携することが不可欠です。また、公共訴訟をより進めていくためには、さらなる弁護士や専門家の参画も必要です。このような取り組みを進める中で、LEDGEは市民が司法の力を借りて社会的な不合理を解消する一歩を踏み出す機会を創出していきます。

公共訴訟は、私たちが住む社会をより良くするための重要な手段です。LEDGEが目指す活動に市民が加わることで、司法を利用して社会課題に取り組む新しい枠組みが生まれることが期待されます。このクラウドファンディングへの参加は、ただの寄付ではありません。未来の社会を共に作るための挑戦への参加であり、司法の力を使って不合理な状況を変えていくための重要な一手でもあるのです。

執筆：糸井貴行

情報提供元： DXマガジン_テクノロジー
記事名：「 公共訴訟支援のスタート：LEDGEのクラウドファンディングへのチャレンジ 」