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株式会社静岡銀行と株式会社日立製作所は、パブリッククラウド上で稼働する勘定系システムの構築を正式に開始しました。この新システムは、両社が共同で開発したオープン勘定系パッケージ「OpenStage」を基盤としており、2027年中にアマゾン ウェブ サービス(AWS)上で本番稼働する予定です。
静岡銀行は、近年の顧客ニーズの多様化や急激な環境変化に対応するため、クラウドファースト戦略を推進しています。2023年12月からグループ全体のシステムをパブリッククラウド化する取り組みを開始し、先進的なクラウド技術を活用してエンドユーザーのニーズに迅速に対応し、付加価値の高い金融サービスを安定的に提供することを目指しています。また、事業活動に伴うエネルギー消費の削減など、環境に配慮した経営も重要視しています。
日立製作所は、長年にわたるAWSとのパートナーシップと、ミッションクリティカルなシステム移行の豊富な実績を持ち、このプロジェクトに参画しています。2024年3月にはAWSと戦略的協業契約を締結し、システムモダナイゼーションとクラウド移行の推進を共同で進めています。
新システムの特徴として、静岡銀行と日立が共同開発した「OpenStage」は、Linuxベースのオープン勘定系パッケージであり、システム構造を刷新して機能拡張が容易で、最新のデジタル技術との親和性が高いことが挙げられます。高い開発生産性とスピード、柔軟性を実現しており、将来にわたって迅速な経営戦略の実現と多様な金融サービスの提供をサポートします。
この取り組みにより、静岡銀行は業務継続性の向上やセキュリティ強化、環境負荷の低減、拡張性と持続可能性の向上、運用効率の改善、コスト削減など、多岐にわたる効果を期待しています。具体的には、データセンターの障害や災害時にも業務を継続できる体制を強化し、バックアップセンターへの切替時にデータロスやダウンタイムを大幅に削減します。クラウドの先進技術を活用して安全対策やウイルス・ランサムウェア対策を強化し、消費電力の削減により温室効果ガス(GHG)排出量を削減することで、カーボンニュートラルの推進にも貢献します。
また、必要に応じてリソースを柔軟に追加できるため、拡張性と持続可能性が向上します。ハードウェアの安定的な調達が可能となり、保守・運用作業の削減による運用省力化も実現します。これらの効果により、オンプレミス環境と比較して運用コストの削減も期待されています。
今後、静岡銀行はクラウドファーストの取り組みをさらに推進し、最終的にはデータセンターレスを目指します。これにより、地域における脱炭素社会の実現に寄与するとともに、顧客に対してより付加価値の高い商品・サービスを迅速に提供することが可能となります。一方、日立製作所はこのプロジェクトで得られた知見を活かし、「OpenStage」を他の金融機関にも展開し、金融業界全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していきます。
この取り組みの背景には、顧客の価値観やニーズの多様化、急速な環境変化への対応、そして環境に配慮した経営の必要性があります。金融機関はこれらの課題に対して、柔軟で俊敏な対応と環境負荷の低減が求められており、今回のプロジェクトはその一環として位置づけられています。静岡銀行と日立製作所の協業は、金融業界における新たなモデルケースとなり、他の金融機関にとってもDX推進の参考になると期待されています。
執筆:糸井貴行