株式会社IHIをはじめとする複数の企業が、千葉市において自動運転バスの社会実装を目指し、デジタルツイン技術を活用した安全性検証の取り組みを開始しました。今回の取り組みは、仮想空間上で自動運転のシミュレーションを行うことで、レベル4の自動運転サービスの実装に向けて、より質の高い安全性の検証を実現することを目指しています。千葉市からの委託を受けたこのプロジェクトは、自治体が主導する仮想空間での自動運転安全性検証事業としては全国初となります。

都市部の人口密集地で自動運転サービスを社会実装するには、特に公道での安全性を確保することが大きな課題です。実車を用いた検証には、想定外の事故やリスクが伴い、全てのシナリオを検証することは困難です。さらに、自動運転車両の調達費や運転手の人件費、検証準備から実施までの時間がかかるため、現実の環境での検証には限界があります。

このような背景から、千葉市が取り組む本事業では、仮想空間に現実の環境を再現し、デジタルツインを活用して質の高い安全性検証を実施します。具体的には、幕張新都心の交通環境や車両走行データ、リスク箇所や事故データを基に仮想空間を構築し、様々な走行条件下での検証を繰り返すことで、より安全な運行条件を見極めることを目指しています。

このプロジェクトでは、デジタルツイン技術を用いて、実車での検証が困難なシナリオも含めた走行検証を行います。デジタルツイン技術を使用することで、実際の交通環境やリスク箇所を仮想空間に再現し、走行条件や車両パラメータを設定してシミュレーションを実施します。この取り組みにより、どのような走行条件が安全であるかを詳細に分析し、自動運転サービスの社会実装に向けた貢献が期待されています。

この実証実験は、BIPROGY株式会社が千葉市から受託した「デジタルツインを活用した自動運転実証環境構築・実証実験業務」の一環として行われ、複数の企業が参加しています。具体的には、BIPROGY株式会社がデジタルツイン環境の構築を担当し、三菱プレシジョン株式会社が幕張新都心周辺の環境計測と3Dモデル化、東京海上日動火災保険株式会社がリスクマップの作成と検証シナリオの作成を担当します。また、株式会社IHIは交通環境に基づくリスク箇所の検討と検証シナリオの抽出を行い、先進モビリティ株式会社が自動運転車両モデルの導入と安全性検証を担当します。

本事業を通じて構築されたデジタルツイン環境は、将来的にはまちづくりなどにも活用されることが期待されています。また、運行業者による走行のトライアンドエラーを実車走行とデジタルツイン環境の双方で繰り返しながら改善を重ねることで、より安全で効率的な自動運転サービスの実現を目指します。

この取り組みによって、自動運転の社会実装が一層進み、将来的には広範囲での利用が期待されています。

情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 デジタルツインを使って自動運転の安全性を検証、千葉市の幕張新都心を仮想空間上に再現してシミュレーションを実施