作業服専門店「WORKMAN Plus」などで知られる株式会社ワークマンは、これまで慎重な姿勢を貫いてきた法人フランチャイズ(FC)制度を本格的に導入する方針を発表しました。解禁の対象は、従来の#ワークマン女子店をリブランドした「Workman Colors」で、特に売上2.5億円を超える都市近郊の中型・大型商業施設における展開を見込んでいます。これにより、2025年度以降、同業態の出店ペースを年間40店舗へと維持しつつ、個人FC依存からの脱却を図ります。

法人FC第一弾、年内に4店開業へ

すでに法人FCによる出店が決定しているのは、神奈川・滋賀・千葉・兵庫の4店舗で、いずれも売上目標は2.9億円〜3.7億円と高水準です。運営を担う法人は、いずれもワークマンの直営モール店の運営代行実績を持つ企業であり、確かな現場ノウハウと組織力が評価された形です。特に株式会社スタイルエージェントは、複数の出店を担う中核的パートナーとして位置づけられています。

リブランド成功で出店加速、だが個人FCには限界も

Workman Colorsは、女性向けを中心とした#ワークマン女子店から改称し、男性の来店も2倍に増加するなど、業績好調が続いています。本年2月から6月の間だけで24店舗を新規出店するなど、その勢いは加速しています。しかし、路面店中心の出店モデルでは、用地確保やFCオーナーの人材確保に課題がありました。

特に、年40店舗ペースでの出店を維持するためには、個人FCだけでは限界があるとしています。都市近郊では土地が確保しにくく、地方ではそもそも経営を担える人材が不足している状況です。そこでワークマンは、家族経営を基本とする従来の方針を一部転換し、法人による中・大型モール出店に活路を見出す決断を下しました。

年間20店舗の法人FCで、売上は20億円規模の上積み

今後は、個人FCによる路面店出店を年間20〜25店舗に縮小する一方、法人FCによる都市部近郊のモール出店を15〜20店舗に拡大します。モール店は売上目標が2.5〜3.7億円と高く、これにより年間20億円程度の売上上乗せが見込まれます。法人FCは10社程度を募集し、各社に年間2店舗の出店を求める計画です。

「家業」から「事業」へ――法人FC解禁の背景

ワークマンが長年、法人FCを避けてきた背景には、「家族経営による高収入と地域密着型店舗」という信念がありました。個人が自らの店を持ち、ゆとりを持って働ける環境を整えることで、顧客との距離を縮めることを目指してきたのです。実際、同社のFCの多くは親族による継承が進んでおり、店舗あたりの平均年収も1300万円超と高水準です。

しかし、人口減少や人手不足の中でこのモデルだけでは成長を維持できない現実が浮き彫りになりつつあります。特に、売上2.5億円以上が求められるモール店舗では、家族経営で対応するには負担が大きく、店舗運営の品質維持が難しいとの判断に至りました。モールでは店休日がほぼなく、繁閑差にも対応できる柔軟な体制が求められます。法人であれば、人員配置や複数店の運営を通じた効率化が可能となります。

男女共に支持される「快適普段着」で新たな顧客層を獲得

Workman Colorsでは、既存店舗と競合しないようベーシック衣料の専売化を進めています。女性向けベーシック衣料で確固たる地位を築いたのに加え、今春からは男性用のベーシック衣料にも参入。価格は業界大手の半額以下に抑えながら、機能性も備えた「快適普段着」シリーズを展開し、好調な売れ行きを記録しています。これにより店舗のテイストが男女共にベーシックに統一され、都市部での評価も高まっています。

今後の出店戦略と中長期の展望

今後は、都市部のモールを中心に法人FCによる出店を本格化させ、既存の路面店戦略と併用しながらバランスの取れた店舗網を構築していく考えです。すでに全国にある売上150億円以上のモール270カ所のうち、80店の出店が現実的と見られています。さらに、今後は出店対象となるモールの規模要件を100億円規模にまで引き下げることで、最大120店の追加出店も視野に入れています。

法人FCの導入は、単なる経営体制の転換ではなく、ワークマンがさらなる成長を目指すための戦略的判断といえるでしょう。従来の「家業」モデルを尊重しながらも、新たなパートナーとの連携を通じて、地方・都市部の両面からブランドの拡大を加速させていく方針です。

詳しくは「ワークマン」まで。
レポート/DXマガジン編集部

情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 ワークマンが法人FCを本格解禁、個人FCモデルの限界で方針転換