一般社団法人 日本オムニチャネル協会は、AIの最新動向を学び、企業がAIを“ビジネスにどう活用すべきか”を探る場として、第1回「AI分科会」を開催しました。今回のテーマは「AIエージェントで業務がどう変わる?」。AIの歴史から生成AIの進展、そして現場での活用事例に至るまで、幅広い視点で議論が交わされました。

生成AIの波と日本企業へのインパクト

AI分科会のリーダーであり、データ分析とマーケティング分野で24年の経験を持つ近藤義仁氏(株式会社ブレインパッド CMO)がセッションを主導。ゲストには「生粋のデータサイエンティスト」として知られる辻陽行氏(ブレインパッドAAA株式会社 代表取締役CEO)を迎え、AIの歩みと今後の可能性について意見を交わしました。

講演では、AIの歴史が1950年代まで遡ることが紹介され、現在の生成AIの進化は「第4の波」として位置付けられました。近藤氏は、2000年代初頭からビッグデータに取り組んできた経験をもとに、かつてのAIが直面していた「熟練人材の不足」や「データ品質の問題」に言及。現在の生成AI革命は、こうした課題を乗り越える大きなチャンスであると強調しました。

一方で、日本特有の「完璧さ」へのこだわりが、新技術の試行や失敗の共有を妨げているという指摘もあり、企業文化の変革も重要なテーマとして浮き彫りになりました。

議論の中心では、「AIエージェント」という用語の明確化が図られました。近藤氏は「参照型AIエージェント」と「実行型AIエージェント」の二つのタイプを紹介。参照型は情報を理解する能力に限られ、一方で実行型は自律的にタスクを実行することができ、その際に自主性の程度が重要であると指摘しました。

生成AIの実態と課題

辻氏は、生成AIの実利用状況をデータとともに解説。現時点でのビジネス現場における活用者はわずか10%程度に留まり、多くの人々が「必要性を感じない」「使いづらい」「誤情報が心配」といった理由で利用を控えている実情が明らかにされました。生成AIは、予測AIと異なり「何を出力するか」が予測困難であるため、結果に対する人間のレビューが不可欠です。この点が、業務での精度・一貫性の確保において最大の課題となっています。

講義では、いくつかの生成AIの実用例も紹介されました。例えば、AIエージェントを使った自動面接スケジュール設定、画像解釈とタグ付け、動画からの操作マニュアル作成、Eコマース向けのAI検索などです。参加者はこれらの実用化にポジティブな反応を示し、自社でのAI活用による時間節約の可能性を感じました。最後に、近藤氏は現在の生成AIブームをAI理解の新たなスタートと捉え、古い定義に固執せず前向きな視点を持つべきだと強調しました。

日本オムニチャネル協会は2020年に設立された一般社団法人。イノベーション人材の育成を目指し、業界の枠にとらわれない活動を展開しています。小売や外食だけでなく、物流、メーカー、IT、エンターテイメント、メディア、金融など、さまざまな企業が会員として参画しています。設立から4年で会員数は600名、370社を超え、年間100回を超える協会活動を実施しています。部会やアカデミー活動に加え、カンファレンスの開催なども行い、活動領域は年々拡大しています。詳細については、「日本オムニチャネル協会」のウェブサイトをご覧ください。

日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/

情報提供元: DXマガジン_テクノロジー
記事名:「 「AIを導入すれば良くなる」は危険な思い込み?先駆者たちが見てきた期待と現実のギャップとは!?