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日本オムニチャネル協会は2025年2月28日、年次カンファレンス「オムニチャネルDay」を開催しました。ここでは、マネジメントコンサルタント ラグビー解説者の後藤翔太氏と、モデレータで日本オムニチャネル協会 チームビルディング勉強会リーダーを務める田中安人氏が登壇したセッションの様子を紹介します。「スポーツ業界から学ぶビジネス組織の在り方」というテーマで、スポーツのチームを例に、望ましい組織を構築するポイントを探りました。
セッション冒頭、田中氏はスポーツとビジネスの違いに触れつつ、企業の組織づくりのポイントを考察しました。「後藤氏が体験したチームづくりの課題が参考になる。例えば、チームのメンバーそれぞれの動機を理解することが大切だ。ただし、評価や報酬などの外発的動機を探るのではなく、当人の興味や関心、やりがいといった内発的動機を理解することがチームづくりには欠かせない」(田中氏)と指摘しました。
女子ラグビーチームを指導した経験を持つ後藤氏はチームづくりについて、「チームをつくった当初は、ラグビーに対する情熱や熱意を必ずしも持ち合わせていない選手がいた。そこで、こうした選手のモチベーションをどう高めるかに主眼を置いた。さらにチームとしての目的を明確にし、選手一人ひとりに目的を共感してもらえる取り組みも進めた」といいます。組織やプロジェクトに関わるすべてのメンバーが仕事に情熱を向け、明確な目標に向かって突き進む体制づくりが必要だと強調しました。
さらにコミュニケーションの重要性にも言及します。「チーム内の意思疎通はスムーズであるべき。意思疎通でつまずくチームや組織は1つにまとまらない。選手一人ひとりが何を考えているのか。戦術や戦略をどう捉えているのかをきちんと把握し、対話を通して信頼関係を築くべきだ。信頼関係を構築することで成果を手繰り寄せられるようになる」(後藤氏)と述べました。
求められるリーダーシップにも触れます。「リーダーは組織の方向性をしっかり定義し、示した方向性をメンバー全員と共有すべきだ。メンバーが正しい方向に向かって突き進むようにするのがリーダーの役割だ。組織が正しい方向へ向かうためにはどんな行動を促せばよいのか、異なる方向に突き進んでしまったときにどう修正すべきかを考え、行動に移せるリーダーシップが求められる」(後藤氏)と、ビジネスのリーダーが備えるべき教訓も指摘しました。なお、トップダウン型かボトムアップ型のチームが望ましいかについては、「どちらが正しいではなく、状況によって使い分けるべき」(後藤氏)といいます。「どちらのアプローチを選択するかは、そのときの状況に応じて柔軟に判断することがリーダーには求められる。リーダーは適切なタイミングでメンバーの意見を引き出すことを最優先すべきである」(後藤氏)と述べます。
一方、「規律」を何より重視するスポーツ界の姿勢がビジネスでも不可欠だと田中氏は指摘します。「スポーツの世界では、どんなに優秀な選手が集まっても連携しなければ勝つことはできない。これはビジネスでも当てはまる。優秀な社員同士が集まっただけでは組織の目標を達成できない。社員一人ひとりが連携することこそが組織を強くする。規律を重んじる組織が成功する」(田中氏)といいます。後藤氏も同意し、「ラグビーというスポーツは、15人が1つになって動かなければ勝てない。一人ひとりがただ強いだけでは勝てない。15人がきちんと連携し、チームとして動くことで初めて結果がついてくる」と続けました。「規律と個性を適切にバランスさせることが組織の成功を決定付ける。どちらかを尊重しすぎるべきではないが、規律があって初めて個性を発揮できる場所が生まれることを忘れてはならない」(田中氏)と、規律ありきの組織を構築すべきと訴えました。
多くの企業が課題とするデータ活用の重要性も指摘します。「ラグビーをはじめ、多くのスポーツでデータ活用が進む。試合の動きをデータ化するのはもとより、練習内容もデータ化してトレーニングメニューの作成などに役立てている。どの選手がどんなプレーを得意としているのかさえ可視化できる。こうしたデータがチームを勝利に導く戦略立案に寄与する。スポーツ界のデータ活用に向けた取り組みは、企業や組織がデータを使いこなす際のヒントになり得る」(後藤氏)といいます。
後藤氏は最後に、「成長とは自然に訪れるものではない。これはスポーツもビジネスも同じである。常に自分を磨き、改善する取り組みが人を成長させる。こうした取り組みなしに人は成長しないし、組織のパフォーマンスも上がらない。組織やチームが成長するためには、メンバー一人ひとりの絶え間ない努力が根底には不可欠だ」とまとめました。
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