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AIとパーソナリティデータを活用した新卒採用の未来
シミックホールディングス株式会社(以下「シミック」)は、日本で初めてCRO(医薬品開発支援)事業を展開した企業として知られています。今回、シミックとマーサージャパン株式会社(以下「マーサー」)は、新卒選考においてAIとパーソナリティデータを活用した面接官と採用候補者のマッチングに関する実証実験を始めました。この新しい取り組みは、単に技術革新を追求するものではなく、候補者体験の向上を目指しています。各企業が求める人材像に合った候補者を見つけるために、AIの知見と人間の特性を融合させることが狙いです。
少子化による人口減少の影響を受けて、企業が直面する採用の難しさは増しています。このような背景の中、シミックとマーサーは、より質の高い人材を獲得するための新しいモデルとして、AIとパーソナリティデータを用いたマッチングシステムの構築を決定しました。特に、新卒採用は企業の将来に影響を与える重要なステップであるため、採用プロセスを見直す必要があります。この実証実験は、面接官と候補者のマッチ度を測定し、どのように評価が変わるかを研究する目的で行われています。
シミックが過去の面接データをもとに行ったのは、パーソナリティプロファイリングと呼ばれる手法です。このプロセスで、面接官と採用候補者のパーソナリティの距離を測定し、相関関係の検証を実施しました。「パーソナリティ距離」とは、個人間の性格的な距離を多次元空間での数学的な距離として定義するものです。この結果、面接官と候補者の間のパーソナリティ的な一致度が、評価や選考結果に深く影響を与えることが確認されました。この知見は、今後の採用プロセスの改善に大いに役立つことでしょう。
面接官と候補者のマッチ度が高い場合、候補者は「話しやすい相手」として感じ、より良いコミュニケーションが期待できます。これにより、候補者は選考過程における満足度が向上し、入社意欲も高まると考えられています。企業側も、マッチ度が低い面接官によるバイアスを軽減し、優秀な人材を逃すリスクを低下させることができます。つまり、この新しい採用手法は、双方にとってのウィンウィンとなり得るのです。
シミックとマーサーは、2024年4月から本格的に新卒採用を始めることで、AIとパーソナリティデータを活用した選考方法の実施を進めていく予定です。さらに、パーソナリティデータは新卒採用だけでなく、オンボードや人材育成、チームビルディングなど、さまざまなタレントマネジメントの領域でも活用できる可能性があります。これにより、企業の成長と持続可能性を促進する道筋が開かれることになるでしょう。
AIとパーソナリティデータを活用した新卒採用の未来は、企業の人材戦略に新たな視点を提供します。シミックとマーサーの共同実証実験は、候補者体験を向上させることを目的にしたもので、今後の採用プロセスのモデルケースとして注目されることでしょう。この技術が普及することで、より良いマッチングが実現し、企業と候補者の関係を強化することが期待されています。
執筆:香田雄大