犬の「胸水」と「肺水腫」の違い|種類や原因、早期発見のポイントを獣医が解説
胸の構造とは
「胸」というのは肋骨に囲まれた空間です。
肋骨の中におさまっているものは、心臓、肺、気管、気管支、食道が主なものになります。
循環の他に、呼吸に大きく関わってくる臓器が多いですね。
呼吸は肋骨が広がることによって肺が膨らみ、空気を取り込んで行われます。
そのため胸の中というのは「空気」も「水」も臓器の外側には多く存在していません。
そして空気や水が多く存在することは、肺が膨らむことを妨げるため、呼吸が苦しい原因となるのです。
「胸に水がたまる」とは
他の病院から転院、もしくは急患でかかりつけ以外の病院にかかられる場合、
「胸に水がたまったことがあります」とおっしゃる飼い主様が、たまにいらっしゃいます。
この場合に「胸水」なのか「肺水腫」なのかはとても重要なことで、緊急かどうかのレベルにも関係しますし、原因となる病気も変わってきます。
「呼吸が苦しい」状態にある犬では基本的に、レントゲン撮影をおこなうことで、「何が呼吸を妨げているのか」を検査する必要があります。
胸水とは
「胸水」というのは、「胸の中」それも「各臓器の外側の領域」に水が溜まっていることを指します。
肺が膨らむ領域が、何らかの液体で満たされてしまい、上手く肺が膨らまない状態です。
レントゲンでは肺は空気を多く含むため、溜まった液体が下に、その中に肺が浮かんでいるような像が見受けられます。
胸水の種類
胸水が溜まっていることを確認したら、まずはその胸水がどんな成分で出来ているのかを調べます。
成分によって胸水はタンパクや細胞成分の少ない「漏出液」と、タンパクや細胞成分が多く含まれる「滲出液」の二つに分類されます。
- 漏出液が確認される病気
胸水が漏出液であった場合、心臓病や胸腔内の腫瘍、また腎疾患や腸疾患、肝疾患による低アルブミン血症などが考えられます。
漏出液の胸水は、針を刺して体外へと除去しやすいですが、原因となっている疾患を治療しない限り、再度溜まってしまいます。
- 滲出液が確認される病気
胸水が滲出液であった場合、感染や腫瘍などが主に疑われます。
肺や心臓、胸腔の腫瘍などが破裂して起こった出血により、血液が溜まっている場合もあります。
感染が原因の場合には抗生物質の投与や洗浄が必要となる場合もあります。
胸腔内、胸腔内臓器(肺や心臓)の腫瘍が確認された場合には、手術や抗がん剤、場合によっては放射線治療などが行われる場合もあります。
肺水腫とは
「肺」というのはごく微小な風船のような臓器で、呼吸によって酸素と二酸化炭素を交換する場所です。
「肺水腫」というのは、この肺の構造の中に水が溜まってしまう病態のことを指します。
肺の膨らみを阻害するわけではなく、空気の取り込み自体ができない状態となるため、身体の中から溺れているような状態であり、肺水腫は胸水よりも緊急性が高いです。
肺水腫を起こす病気
多く見られるのは心臓の疾患が原因の場合ですが、腎疾患、肺疾患、中毒や感染によるショック症状としてもあらわれます。
肺水腫や胸水を早く見つけるには
緊急性に差はありますが、どちらの病態も「呼吸が苦しくなる」のが特徴です。
心臓や腎臓に持病のある子はもちろん、おうちの子の「呼吸数」を数える練習は、日頃からおこなっておくと良いでしょう。
安静時の呼吸数は1分間に15~30回前後です。
胸が膨らんで縮んで、を1回と数えます。
1分間ずっと呼吸を数え続けるのは意外と難しいので、10秒や15秒と時間を区切り、1分間の呼吸数を計算して出すのが良いでしょう。
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