太陽光や風力など再生可能エネルギーを生かした発電所運営やエネルギーマネジメントシステムの開発、電気小売事業「Looopでんき」などを展開する株式会社Looopが、7月17日に経営戦略発表会を実施。

 取締役ファウンダー・中村創一郎氏の代表取締役CEO復帰が発表されたほか、再生可能エネルギーの効率的な利用に向けた施策、晴れた日の電力が安くなる新しい取り組み「晴れ割」など、同社の戦略について紹介が行われました。

■ 創業社長が2年ぶりに復帰 世界を巡って見えた「日本の再エネ利用課題」が背景に

 最初に、6月27日付けで取締役ファウンダーから代表取締役CEOに就任した執行役員の中村創一郎さんが挨拶。2023年3月の社長退任以来、約2年ぶりに復帰した経緯に触れながら、今後に向けた意気込みを語りました。

 中村さんは、東日本大震災の際に行ったソーラーパネルの設置ボランティアで「電気は人の希望や命綱にもなりうる」と感じ、「再生可能エネルギーの力で、人と社会を支える存在になりたい」と、2011年4月にLooopを設立。

 同社を売上660億円に成長させたのち、2023年3月に社長を退任。その後、代表取締役会長、取締役ファウンダーを経て、今年7月より代表取締役CEO・執行役員として復帰しました。

 中村さんは2年間で約30カ国を巡り、再生可能エネルギーの活用が進む各国の現状を視察。水力発電が整備されたキルギスや、太陽熱によって1kWhあたり1〜2円の安価で発電するドバイなど、「分散型社会に向けて世界が動いている」と感じたと言います。

 「一方、日本では、昼間の電力消費が少ないため電気が余ってしまい、出力制御をせざるを得ないなど、電力を柔軟に使うための仕組みが社会側に足りていない」と中村さん。

 昼間の電力価格が0.01円であるのに対し、夜間にはその1700倍もの価格に跳ね上がるという極端な価格変動にも触れ、「蓄電池やデマンドレスポンス(需要に応じた使用量調節)がまだ整備されていない」と現状を指摘しました。

 そのうえで中村さんは、「今こそこれが転換のチャンスであり、大きなビジネスチャンス」とコメント。「自らの手でその変化に取り組んでいきたい」と、復帰の経緯と意気込みを示しました。

■ 「再生可能エネルギーを“きちんと使い切る”」Looopが掲げる3つの戦略

 その後、中村さんとともに同社取締役COOの藤田総一郎さん、デジタルソリューション本部 本部長のタルクダルロニーさんの2人が登壇し、同社の成長戦略について説明しました。

 藤田さんは同社の電力小売事業「Looopでんき」について、「約34万件のユーザーと500億円の売上を持ち、独立系新電力では供給量No.1のポジション」と説明。東急不動産との資本業務提携で資金調達額が累計100億円を超えたことにも触れ、今後さらに事業基盤の強化に取り組む方針を示しました。

 続いて中村さんが、同社の掲げる3つの成長戦略について説明。1つ目に「再生可能エネルギー電源と蓄電池による供給体制の拡充」を挙げました。

 「発電と蓄電を一体的に設計し、昼間の余剰電力を活用できる体制を構築していきます。Looopでは自社設備による太陽光発電所と蓄電池ステーションを保有しており、2025年7月に三重県桑名市で蓄電池施設の本格運用を開始する予定です」(中村さん)

 2つ目は「電力小売事業のアップデート、スマートホーム事業への参入」。具体的には市場連動型の料金プランを導入し、昼間に電気を使うインセンティブを設けることで、電力需給の平準化と再エネ活用の促進を目指すといいます。

 「『Looopでんき』のユーザー向けアプリでは、リアルタイム価格を可視化し、ユーザーの行動変容を促す仕組みを整備しています。今後はAI機能を組み込んだ家電の自動制御などを通じて、快適で環境負荷の少ない生活の実現を目指します」(中村さん)

 3つ目は「デジタルプラットフォーム基盤の強化」。ここではタルクダルロニーさんが、具体的な取組みを説明しました。

 「需給バランス管理から価格最適化まで一括して担う、次世代のエネルギー統合基盤を内製で開発していきます。10か国以上、50~60人規模のグローバル開発体制を構築しながら、オフショア開発と内製化を並行して進めていく計画です」(タルクダルロニーさん)

 「日本では太陽光発電が急速に普及している一方で、発電量の調整が課題になっている」と中村さん。「発電・蓄電・供給を統合した新たな社会インフラを構築し、再生可能エネルギーをきちんと“使い切る”社会構造を設計・実装していきたい」と述べました。

■ 太陽光発電量が増える「晴れの日」に割引 東京電力管内で7月25・26日に実施

 発表会の後半では、晴れた日に電気料金を割引する、日本初となる同社の新サービス「晴れ割」を発表。企画を担当した同社マーケティング本部 マーケティング戦略部の田中拓人さんが登壇しました。

 田中さんは今回の「晴れ割」導入について、「日本のエネルギー問題への対応がきっかけ」と説明。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格の高騰が深刻化したことに触れ、日本の化石燃料依存と低い自給率が大きな課題であること指摘しました。

 「日本では平地面積あたりの太陽光設備導入量がドイツの2倍以上、発電量が世界3位と世界トップクラスである一方で、発電された電力が使われずに捨てられている実態があります。『晴れ割』企画の背景には、こうした状況を何とかしたいという思いがありました」(田中さん)

 「晴れた日は太陽光の発電量が増え、電気の価格は下がる」と田中さん。「供給が増える昼間に電気を使ってもらうことで、電力の有効活用と価格メリットを同時に実現する」と、「晴れ割」の狙いを説明します。

 今回の「晴れ割」は、東京電力管内における「Looopでんき」の加入世帯を対象に、7月の最終週末である26日または27日に実施。太陽光発電の出力が高く、かつ需要が低い10時〜14時の4時間に、1kWhあたり7円の割引が提供されます。

 「晴れ」の判定については、日本気象協会の提供する天気情報サービス「tenki.jp」の予測データに基づいて決定。万が一、当日「晴れ」の基準を満たさなかった場合は、翌週8月2日、3日のいずれかに振替実施されます。

 なお、「晴れ割」への参加は、「Looopでんき」のアプリ上で行うことが可能。今回の実施結果をもとに、全国エリアでの展開や、今後の継続的な実施についても検討していくということです。

 「電気を安く、そして環境にやさしく使える文化を『晴れ割』から育てていきたい」と田中さん。「Looopは今後も新たな電気の使い方を提案していきます」と意気込みを述べ、発表を締めくくりました。

取材協力:株式会社Looop

(取材・写真:天谷窓大)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 天谷窓大 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025072303.html
情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 電力会社Looop、日本初の「晴れ割」実施 再生エネルギーの有効活用を推進