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「誰か“食べる催涙ガス”食べてみたくない?」
編集長からの意味不明な呼びかけに、深く考えず「食べてみたいです!」と手を上げた筆者。数日後、自宅に送られてきたのは株式会社セコマの「山わさび塩ラーメン 改」でした。
ネット上で「催涙ガス」「拷問」「殺戮兵器」などと、およそ食べ物に与えていいものではない異名を持っている「山わさび塩ラーメン 改」。
本商品はセイコーマートの店舗や公式通販などで購入することができます。価格は、公式通販の12個入りが1918円なので、それをもとに計算すると、1つあたり約160円です。
わけのわからないものはとりあえず口にしてみたくなる習性を持つ筆者ですが、今回ばかりは挙手したことを後悔しました。
というのも筆者はわさびが大の苦手なのです。これまでの人生において、宅飲みでつまみに「わさビーフ」を選ぶ友達とは縁を切ってきました。好きな寿司屋を聞かれたら「わさびを別添えにしてくれる寿司屋」と答えます。
別に辛いものが嫌いというわけではないです。ただわさびのあのツンと鼻の奥を刺すような刺激がダメです。あれは「辛い」ではなく、「痛い」。だから嫌いです。
「食べる催涙ガス」の正体を知って編集長に「やっぱりやめます」と言おうと思ったのですが、それより先に「自宅に送りました」というメッセージが届きました。仕事早すぎるって。
ちなみに編集長は以前、この山わさびシリーズの焼きそば版「山わさび 塩焼きそば」を食べたことがあります。こちらもラーメン同様「食べる催涙ガス」と言われており、そうとは知らずに買って絶望を味わったそう。
うわあ、ますます嫌になってきたな……。
そして「山わさび塩ラーメン 改」が家に届きました。届いたからには食べるしかありません。
パッケージは緑地に金文字で「山わさび塩ラーメン」と記された、割と普通のデザイン。激辛系の商品にありがちな毒々しい感じはないです。
普通に上品な塩ラーメンの雰囲気が漂っているので、「催涙ガス」とは知らずに買っていく人もいると思います。筆者は「わさび」の3文字を確認した時点で全速力で遠ざかりますが。
しかし赤丸で囲われた「改」の一文字がやや不穏。注意書きがあるので読んでみると「2017年5月発売商品と比較」とありますが、何をどう比較したのかは分かりません。
より辛くなった……てこと?
原材料名一覧を確認すると、スープにのみ山わさびパウダーが使われている様子。麺に練り込まれていたり、かやくに用いられていたりはしないので、少し安心します。極論「スープさえ飲まなきゃどうということはない」ですからね。
蓋を開けると中身はシンプルに粉末スープのみ。
お湯を注ぐ前に封を切って、中に入れておきます。
ここでひと嗅ぎ。少しでもわさびのニオイに慣れておこうと、嫌々ながら顔を近づけますが、調理前のせいかあまりわさび感はありません。これなら、いける……か?
沸かしたお湯を注いで3分待ちます。ここ最近で最も恐ろしい3分間です。明らかに地獄行きのトロッコに乗っているような絶望感。引き返すことも、止まることもできません。
3分経ちました。顔を背けながら蓋を開けると、さきほどは感じなかったわさびの刺激臭がツーンと立ち上ります。ああっ、これっ!これが嫌いなんだ!!
容器から顔を離していても感じるわさびの強い刺激臭は、時間が経つと慣れてきます。
これならいけそうと思って箸を手に取り麺を持ち上げました。再びニオイがもわっと広がりますが、耐えられる。うん。これならいける。大丈夫。
勝利を確信してすすり……ごふッ!!すすると同時に鼻へと抜けていくわさびの刺激臭に、脳が「あ、やばい」と頭が判断したのか、筆者の身体は反射的に激しく咳き込み、のけ反りました。
げふッ……!ごほッ……!……咳はなかなか止まりません。涙も出ますし、鼻水も出ます。身体が完全に「山わさび塩ラーメン 改」を異物として認識しています。
咳が止まるのに30秒ほどかかりました。何だ今のは。食べ物を口にしたとは思えませんでした。「食べる催涙ガス」の異名は誇張ではありません。
筆者は人生で一度も「催涙ガス」を食らったことがないので、これが「催涙ガスのような刺激」なのかどうかは分かりません。しかしこの「山わさび塩ラーメン 改」が食べ物らしからぬ攻撃力を持っていることは確かです。
あまりに衝撃的なひと口目だったため「いや、ちょっとタイミングの問題では?」と自分の方に非がある気がしてきます。そうです。たまたま咳き込む瞬間にすすってしまっただけでしょう。
あらためて麺を引き上げ、すす……ごふッ!!げふッ!!だめだ。だめだこれ。筆者のせいじゃない。完全にラーメン側の実力だ。
およそ物を食べているというレベルではない涙と鼻水です。ティッシュに助けを求めつつ、一旦箸を置きます。
食べ切るの、無理かも。
しかし気持ちを落ち着け、冷静になって考えます。
「山わさび塩ラーメン 改」は前評判通りの衝撃的な食べ心地でしたが、ふた口すすってみて、意外に味自体がそこまで辛くないことに気が付きました。むせたのは全部わさびの刺激臭のせいです。
なので戦犯は、湯気。湯気が全部悪いです。「山わさび 塩ラーメン 改」の攻撃力は湯気に全振りされていると言っても過言ではありません。
ということは湯気さえ吸わなければ大丈夫。湯気を吸わないようにするためにはできる限り口を開けないようにすることが大切です。つまりひと口を小さくとれば、問題ないのでは。
一度で箸先が埋もれるほど麺を持ち上げるのはNG。
箸の先に少し引っ掛ける程度、口をすぼめた状態でもすすれる量を少しずつすすっていくのが攻略方法です。
実際そのようにしてすすってみると、むせない!むせないぞ!!
数口目にしてようやくむせずに麺をすすれ、感動のあまりガッツポーズ。そして肝心の味も分かるようになりました。
このラーメン、めちゃくちゃ美味しいです。先ほども述べた通り、わさびの辛味はそこまででもないんです。むしろわさびのうま味の方が前面に出ています。それがあっさりした魚介出汁とマッチして、唯一無二の塩わさびスープになっています。
わさびって、こんなに美味しいの……?生まれて初めて「わさび味が好き」と言っている人の感覚がわかりました。
正しい食べ方を見つけたらもうあとはひたすらすすります。時々鼻に来る軽い刺激臭も、今となっては許せます。これだけ美味しいのなら、少しの刺激臭には目をつぶりましょう。
あっという間に麺を完食して、残りはスープのみ。最初の方で述べた通り、山わさびパウダーが使われているのはスープです。
食べる前は「スープは最悪残せばいいか」と思っていましたが、ラーメン自体が美味しかったので、飲みたい気持ちのほうが強くなってきました。
麺よりは辛いだろう、とこわごわスープをひと口。確かに鼻に抜けていく辛味と刺激はありますが、それを補ってあまりあるわさびスープのうまさ。一気に飲むと確実にむせるので、少しずつすすりますが、結局、当たり前のように完飲してしまいました。
セイコーマートの店舗や、公式通販などで購入できる「山わさび 塩ラーメン 改」。ネットで囁かれる「食べる催涙ガス」「殺戮兵器」といった異名はウソではありませんでした。甘く見ていると本当に地獄を見ます。
ですが食べ方さえ間違わなければかなり美味しいわさびラーメンです。わさびが苦手な人でもいけます。というか苦手な人にこそ食べて欲しいくらい。忖度なしで「わさび味ってこんな美味いの?」と思えます。
ただ今回の「山わさび 塩ラーメン 改」が特別なだけで、飲食店で出てくるわさびは普通に怖いので、筆者はこれからもアンチわさびで生きていくと思います。
(ヨシクラミク)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024112502.html