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みなさんはトラが絶滅危惧種になっているのをご存知でしょうか。世界自然保護基金ジャパン(以下、WWFジャパン)はその実態を知ってもらうため、6月22日より「ARでうごく!熱帯林の野生動物オリガミ」キャンペーンを展開。
7月27日には、上野動物園で夏休み特別企画として親子参加型のイベントが開催され、関心を深めていました。
熱帯林の急速な消失により、年々増加している絶滅危惧種の野生動物。森や動物を守るために、普段の生活の中で何ができるのかを伝えていくことが目的の今回のキャンペーン。
7月29日の「世界トラの日」にあわせて、7月27日に開催された「ARでうごく!熱帯林の野生動物オリガミ 親子イベント」には、上野動物園に10組以上の親子が集まりました。
「熱帯林の野生動物オリガミ」は、専用の折り紙をトラやオランウータンの形に折り、それをARカメラで読み込むとAR空間上で自分が折ったトラなどが動き出す仕組み。
トラやオランウータンの生息地で現在どのような問題が起こっているのかなどが表示されたりします。
イベントではまず、この折り紙を折るところからスタート。折り方の手順などが描かれた紙を見ながら、親子で仲良くトラを作っていきます。どの親子も真剣に折っていきますが、なかなか難しい様子。スタッフの手を借りながら完成させていました。
ARカメラで読み込むと出てきたのは、木の茂みに隠れるトラ。少しすると木が伐採されて茂みが無くなってしまいます。しかし、FSCマークをスキャンすると、そこから新たな森が。
これは豊かな森林を守りつつも、人間が生きていく中で必要な製品を作っていくというWWFジャパンがすすめる「RSPO認証」や「FSC認証」を表現しています。
「RSPO認証」とは森や生き物の他、森で暮らす人たちを守りながら栽培されたパーム油を使用して作ったお菓子やパン、洗剤につけられるマーク。
一方「FSC認証」は、森の生き物や自然を壊さないように管理された木材を使用して作られたティッシュやノートなどの紙製品、家具などの木製品につけられるマークです。
これらのマークがもっと認知されて広まれば、人間はこれまでと同じように製品を使用することができ、動物たちも森を失うことなく安心して暮らすことができるとのこと。
「熱帯林の野生動物オリガミ」を体験した後は、園内のトラ舎に移動。トラを間近で観察しながら、トラの飼育担当やWWFジャパンのスタッフから、普段のトラの飼育の様子や生息地の実態、その生息地を守るために必要なことなどの話を聞きます。
飼育担当によると、トラの種類にはアムールトラとスマトラトラがあり、上野動物園ではスマトラトラを飼育。スマトラトラはアムールトラと比べると非常に小さいそう。
以前「多摩動物公園」でアムールトラを飼育していたという担当者は「子猫かと思った」と冗談交じりに語ります。
トラの特徴でもあるシマ模様についても解説。草木の茂みなどに身を隠すためにシマ模様になっているのに、オレンジ色をしていたら目立ってしまうのではないかと思ってしまいます。
これはシカなどは見える色が少なく、白黒のような世界に見えているので大丈夫なのだとか。参加した親子たちは、飼育担当から次々に出てくるトラの生態について、興味深く聞き入っていました。
続いて「現在、トラは大変な状況にある」と語り始めたのは、WWFジャパンのスタッフ。
100年前のトラの生息地を比べると現在はその5%ほどに縮小し、約10万頭いたトラは2010年には約3000頭になってしまったそう。現在は保護活動の成果もあり、約4500頭に増えているのだとか。
トラの個体数減少の原因は、都市開発による森林伐採や密猟、エサとなる草食動物の減少など。言うなれば、減少の原因のほとんどは人間です。
では私たちは、どうすれば良いのか。それが前述した「RSPO認証」や「FSC認証」のマークがある製品を買うこと。みんなが買うことによって、現地の保全活動に貢献することができるとのこと。
さらに買いたい商品に認証マークが付いていなかった場合は、企業に問い合わせしてみることをすすめていました。そういう地道な行動が、保全活動の拡大に繋がっていくと語ります。
イベント終了後は、上野動物園とWWFジャパンのスタッフにインタビュー取材もさせていただきました。
上野動物園のスタッフに話をうかがうと、今回のようなイベントを開催するのは初めてではなく、以前から行われているそう。5月31日の世界カワウソの日にあわせて、カワウソのイベントを開催したこともあったといいます。
今回のイベントについては参加者も熱心で手ごたえも感じているそう。自分たちだけだと、どうしても動物たちを見てもらうことがメインになりがちに……。
もう少し工夫がほしいと思っていた中で折り紙を使った体験の話を提案していただき、非常に効果的だったと振り返ります。
子どもたちには、トラを見て「カッコいい!」と思うだけでなく、トラが今おかれている現状を知ってもらい、認証マークがある製品を買うなど、普段の自分の行動を変えるきっかけにしてもらいたいと願っていました。
「ARを取り入れたのは今回が初めて」とWWFジャパンのスタッフ。昔ながらの折り紙と新しい技術のARを掛け合わせて、大人から子供まで楽しみながらトラについて学べるようにと考えたそう。
ちなみに「RSPO認証」や「FSC認証」のマークの認知度は欧州が約70%に対して日本は20%ほどしかなく、知っている人が少ないのが現状。
このようなことを踏まえて今回参加した子どもたちに期待することは、認証マークがある製品を買うことはもちろん、自分たちが使っている物がどこからどう来て、どのようにして作られているのか関心を持つこと。
そして、それをまわりの友だちなどにも話して広めていってほしいと話していました。
取材協力:公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
(取材・撮影:佐藤圭亮)