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Twitterユーザーの元へ、日々送られてくる怪しいDMの数々。弊媒体ではこれまで「謎の美人系」や「稼げる副業系」など、さまざまな相手に突撃を行ってきましたが、今回は「謎の美人系」の派生型として「怪しすぎるギャンブルグループ」に誘われたエピソードを紹介します。
そこで繰り広げられていたのは、「競馬ゲーム」と称した違法賭博。その内容や、やり取りの一部始終をご覧ください。
事の始まりは、おたくま経済新聞のTwitterサブアカウントに送られてきた一本のDM。よく見かけるスラっとした体型の美女アイコンで、よくある出会い目的風と思われるものでした。Twitter上での名前は「M紗さん」。
いわゆる「量産型」の怪しいアカウントですが、調査のためやり取りを進めることに。
DMに書かれているLINEのIDを元にコンタクトを取ると、繋がったのは日本人女性らしい名前の「S子さん」。TwitterではM紗さんだったはずが、LINEではS子さんという名前になっていました。
TwitterからLINEに誘導する詐欺アカウントの特徴の一つで、Twitter上とLINE上で名前が違うというのはほぼ全てに共通するパターン。以降は、M紗さん改め「S子さん」として接していきます。
はじめにこちらから挨拶をすると、相手側も自然に挨拶を返してきました。S子さんはどうやら沖縄出身の東京在住者で、35歳。居酒屋で働いており、離婚したため現在は独身、という何ともありがちな設定……。
ですが、一方的なメッセージではなく、ある程度こちらの呼び掛けに対し、応答が出来る模様。沖縄出身者というので沖縄弁変換サービスを駆使して沖縄の方言でも送ってみましたが、これに関しては完全スルーをきめこまれました。
とはいえ、この手口はいわゆる「ロマンス詐欺(※)」。警戒しつつ3日ほど毎日他愛もない会話を続けていると、流れが変わったのはお互いの趣味の話になった時でした。
(※親密になったかのように振る舞い、信用を盾に金銭を送金させる手口)
「最近、LINEグループで走っている競馬ゲームを見つけました。私と一緒に競馬ゲームをしてみませんか?」
ほう、これは思ってもいなかったパターン。これまでの「副業あっ旋」や、「出会えない系」への誘導とは違うパターンだったため、敢えて誘いに乗ってみることにします。
詳しく尋ねると、内容は「LINEグループ内での競馬ゲーム」「参加時に運営から8888ポイント付与される」「お金を投資する必要はなく、ポイントは1対1で円に交換できる」というもの。
聞くだけでもこれは怪しい、怪しすぎるゲーム……と感じましたが、ここで引き下がるわけにはいきません。今回も金銭や個人情報が絡まない限り、行けるところまで行ってみることにしました。
S子さんによると、競馬ゲームに参加するにはまず「別のアカウントを友だち追加登録」する必要があるそう。指定されたIDを検索すると、出てきたのはサングラスをかけた、これまた美人系のアカウントで「M依さん」。
言われたとおりに友だち登録すると、その直後にM依さんからメッセージが届き、競馬ゲームのルール説明がありました。内容は「1から10までの数字に対応する10の馬のポジション(着順)を予測して、『大小』または『半丁』で発注。当たれば賭けた金額に応じて払い戻しがされる」というもの。
筆者はこの手のギャンブルに詳しいわけではありませんが、これは明らかに違法賭博。参加時にもらう無償ポイントでプレイしたとしても、金銭に換金できる以上「賭博罪」が成立すると考えます。
これは思っていたより闇が深そうだ……と驚きましたが、気を取り直し、改めてその現場に足を踏み入れてみることにしました。
M依さんから一通りプレイの説明をうけると、次に招待されたのがLINE内にある「競馬ゲームのグループ」。
参加者は全部で96人となかなかの規模。先ほど説明されたルールに則り、多くの方がひっきりなしに発注をかけていました。
その額は数百円単位と小規模のものから、数十万円に及ぶ大規模な発注までさまざま。賭けが目まぐるしく行われており、中には一度の取引で百万単位の金額を手にする者も。非常に危険な雰囲気の世界です。
ゲームはいわゆるディーラー役のようなシステムアカウント(※)が仕切っており、予想の受付や、結果の開示等を行っています。
(※外部連携で通知を表示するサービスを使用していた)
なお、ゲームとは言っても、LINE上で実際に馬が走る様子が見られるわけではありません。システムアカウントが投稿するリンクをふむと、外部にある「デジタル競馬ゲーム」のようなページに飛ばされます。時間になるとスタートする仕組み。システムで組まれている以上、こんなのいくらでも改ざん出来てしまいそう……。
しばらく眺めていると、連続で勝ち続けていたとあるプレイヤーが5百万円もの大金を出金する様子が見られました。銀行名や口座番号も丸見えになってますけど……これ、大丈夫?
一方、中には繰り返し負けている様子のプレイヤーも。その後も何度か発注を行っていたようですが、ついには残高不足でゲームに参加出来なくなってしまったようでした。この方は追加でいくらか賭け金を積んでしまったのでしょうか……。
もちろん筆者は実際にゲームに参加しませんでしたが、この中にはどう見ても「サクラ」と「カモ」が存在しているように思えます。初めは無料でゲームに参加させ、実際に大金を手にしている様子を見せて射幸心を煽り、いつかは勝てると期待を持たせ、金銭を巻き上げる手口でしょう。
ちなみに、先ほど実際に出金の様子が見られた画像に書かれていた口座番号を調べてみると、そのような口座は該当せず。予想通り、このプレイヤーはサクラ行為を行っていたようです。こんなゲームがまともであるはずがありません。
上記ではふれませんでしたが、M依さんから競馬ゲームの説明をうけていた最中に「T」という謎の男を紹介されました。「ゲームについて分からないことがあれば彼に聞くといい」というアドバイス。一応登録したものの無反応。
さらに競馬ゲームのグループとは別に、今度は34人いる小規模なグループ「S」に加入させられました。ここにもM依さんが現れ「ゲームについて分からないことがあれば彼(T)に聞くといい」という同じアドバイス。
グループ「S」では先ほどの競馬ゲームグループとはうってかわって、話を投稿する人はM依さん以外いません。時々新たな誰かが加入させられるけど、自主的に退会する光景も見られました。
グループ一覧をみてみると、いる人は恐らく実在の人たち。数名、勧誘役と思われる「美女アカウント」も存在していますが、感じた印象だと「これはカモだけをまとめたグループなのではないか」ということ。
なお、紹介された謎の男「T」とは結局交流できないまま。このグループ「S」にも、「競馬ゲーム」のグループにもこれ以上深入りするのは危険と判断して途中退会しています。
目前で行われていた、明らかに正常ではない「競馬ゲーム」。念のため、元々やり取りをしていたS子さんに話を聞くと、「ゲームの結果に不正はなく、当選結果が改ざんされることはない」とのこと。そんなわけあるかーい!
いよいよ我慢が出来ず「詐欺師ではないか?」尋ねると、「違う」の一点張り。しかし、その後も根気強く、こうした詐欺行為はやめるように説得を続けていると、時折理解を示すような返答も。
少し良心が揺らいだように見え、もしかすると内部事情までさらに詳しく話が聞けるか……?と期待しましたが、残念ながらやり取りはここで終了。以降、S子さんから返事が返ってくることはありませんでした。
SNSではさまざまな詐欺行為が横行していますが、詐欺師も一人の人間。それも恐らく外国人で、お金に困ってのことかもしれません。だからといってもちろん、こうした行為の免罪符になるわけではありませんが、「本当はやりたくないけどやっている」……そんな感情が垣間見えたようにも思えたため、この幕切れは筆者にとっても後味が悪いものとなりました。
今回のパターンは、初めのうちは他愛もない会話で自分のことを信用させつつ、ある段階でこうした金銭がらみの案件に誘う、ロマンス詐欺と副業あっ旋の複合のような形でした。
これまでSNSを巡るさまざな詐欺行為を見てきましたが、このパターンは初めて。手口がどんどん巧妙化し、騙される人は騙されるだろうな……と感じる内容です。いくら構えていても、信用や信頼は簡単に揺らぎ、お金が絡むとつい手を出したくなってしまいます。
また、気になったのは、ごく自然な流れでゲームに誘導されたこと。趣味の話は他にも、美食、撮影、アニメ、旅行、音楽などがありましたが、こちらの嗜好に合わせて、さまざまな罠を仕掛けていたのかもしれません。もしかすると、競馬ゲームでお金に困ったS子さんに融資してくれ……みたいなシナリオも用意されていたりして……?
こうした記事で繰り返し喚起していますが、出会いや儲け話等、都合のいい話は簡単に舞い降りて来ません。SNSのDMのやり取りでチャンスが突然転がって来ることは間違いなくありません。
やはり騙されてしまう方がいるから、こうした詐欺行為がなくならないのでしょう。少しでも怪しいと感じたら、即通報&ブロックを。同様の手口で被害が拡大しないことを、願うばかりです。
【注意】
記事化を目的に潜入取材を行いましたが、絶対に真似はしないでください。編集部では、専用機材を用意し、セキュリティ面、やりとりをする担当者のメンタル面にも十分な注意を払い取り組んでいます。安易に真似をすると大変危険です。
(山口弘剛)