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「ぬるぽ」といえば「ガッ」。ピンときた方はおそらくアラフォー、アラフィフのオタクたち。そう、これはインターネットが急速に普及しだした2000年代前半に、匿名掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」で、頻繁に見られたやり取りのひとつ。
当時は様々な板(スレッド)で見られ、時代を象徴するネットスラングのひとつと言っても過言ではないほどメジャーなものだと認識していましたが……あれから約20年。今の若者には通じなくなってきているのだとか。SNS上には時々嘆きの声が投稿されています。そうか……。
そもそも「ぬるぽ」「ガッ」とは一体何なのか。
正確には、これはプログラミングにおける「NullPointerException」というエラーを縮めたもの。これに呼応してすかさず「ガッ」とツッコミを入れる形で使われています。
行為自体の意味は「エラーを起こしがっかりしているところに(叱咤激励の意味で)ツッコミを入れる」と言われていますが、他にも諸説あり正確には分かっていません。また、発祥地とされる板以外でも何となく「ぬるぽ」と書きこみ、何となく「ガッ」とレスを返すという、特に意味を持たないやり取りとして使われてきました。
しかしながら、「モナー」や「ギコ猫」といったアスキーアートと合わせて投稿されることが多いことから、見れば何となくクスッとしてしまう、場を和ませるような役割も担っていたことは間違いありません。語感の良さに加え、あらゆる場に対応できる汎用性の高さ。そして、必ずと言っていいほど反応がもらえたことも流行の一因と言えるでしょう。
時代は変化し、インターネット上のやり取りはSNSが中心になっていきます。匿名で利用できる点はそのままですが、SNSの場合は個別にアカウントを作る必要があり、投稿もかつて主流だった掲示版のようにジャンルごとにスレッドを立てる形式ではなくなりました。「sage」や「安価」といった用語も、現存する匿名掲示板以外で使われることはなく、ネット知識として昔ほど知られる存在ではなくなっています。
加えて情報伝達スピードが急速化したことにより、新たなネットスラングが次々生みだされ、かつての用語はあっという間に死語扱い。まだ使っている人には申し訳ありませんが……キボンヌ(希望する)、漏れ(俺)などがこれにあたります。
前述の通り、もともと深い意味を持たない「ぬるぽ」「ガッ」ですから、汎用性が高い反面、どうしても使わないといけない場がこれといってないことも、次第に使われなくなっていった理由かもしれません。
一方で「インターネット老人会」と呼ばれる、かつての有志たちの間では、こうした言葉は今も健在。
現に2022年12月31日に、おたくま経済新聞のツイッターアカウントで「ぬるぽ」とつぶやいた際には、「ガッ」という返信、引用ツイートが続々。中には1分以内にリプするという強者もいました。もはや無条件反射してしまうほど、細胞に刷り込まれているのでしょう。
いまやひと昔前の言葉である、と自覚することは必要ですが、だからといって文化自体がなかったことになるわけではありません。「ツーと言えばカー」「山と言えば川」のように、ネット掲示板最隆盛気を知る者同士の、合言葉的な意味合いとして使われるようになっていると言えそうですね。
(山口弘剛)