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自分の住んでる地域にとっては当たり前でも、他県の人からすると「マジで!」と驚かれる行事や食文化はどの地域にも一つや二つはあることでしょう。筆者の住む鹿児島にも必ずと言っていいほど驚かれる文化があります。
それは「鶏肉を生で食べる」という、食文化。いわゆる「鶏刺し(鳥刺し)」が当たり前に日常に溶け込んでいるのです。鹿児島県民なら「え?普通じゃないの」と思ってしまうことですが、他県民からは「危険!」「食中毒が!!!」「カンピロバクター-----!!!」と驚愕されるのです。まさかこれが異常だったとは……。
と、いうのも本来鶏肉は生食厳禁の食べ物。カンピロバクターによる食中毒の恐れがあり、生で食べることはもちろんのこと、使用したまな板や包丁もしっかりと洗浄消毒を行う必要があると、厚生労働省も強く呼び掛けるほどですから、びっくりしてしまうのも無理はないでしょう。
ではなぜ鶏肉が生で食べられるのか?鹿児島県民の胃袋が特殊でとても丈夫……というわけでは決してなく、県が定めるガイドラインに準じた厳しい基準が設けられており、それをクリアした施設で調理されたものが、生食可の鶏肉として出荷されているのです。
ちなみに隣県である宮崎県でも同様の生食文化が根付いています。それももちろん、しっかりとした衛生対策を行っているからこそ。生産者や加工業者など、さまざまな工程において見えざる努力の果てに根付いた食文化なのです。
鶏刺しは郷土料理店などで食べられるのはもちろんのこと、スーパーでも鶏肉のコーナーに普通に陳列されているため、自宅で手軽に食べることも可能。街のあらゆる場所で、鶏刺しや鶏刺しの看板を見かけるのも、他県民からすればちょっと異常な光景かもしれません。
スーパーで売られているものは1パック300~400円程度と価格もとってもリーズナブルで、柄入りのパッケージに入っているのが一般的。むね肉やもも肉、スライスされた玉ねぎが添えられているものなど種類も様々です。
食べたことがない方にとっては、一体どんなものなのか想像がつきにくいかもしれませんが……食感はコリコリとしていて、非常に歯ごたえのある噛み心地。
これをにんにくやしょうがといった薬味を入れた醤油に付けて食べるのが一般的です。ごま油に塩をまぶしたタレに付けるのも通な食べ方。筆者もよく晩酌のお供にして食べていますが、これがまた焼酎に合うんですよね……!
客人をもてなす際や宴席だけでなく、日常の食事など幅広いシーンにおいても食べられている鶏刺しは、県民にとってはもはやソウルフードとも呼べる食べ物。鹿児島にきたときは「わっぜうんまかで、いっどたもってみやんせ!」と、強くオススメします。
※注意※
スーパーなどで売られている一般的な鶏肉類は「鶏刺し」として食べることができません。絶対にです。本稿で紹介している「鶏刺し」は鹿児島県および宮崎の一部で販売されている商品のみが対象です。どうしても食べたいからといって「一般的な鶏肉でワンチャン!」など絶対に考えないでください。健康を害する恐れがあります。ちなみに鹿児島でも家庭で鶏肉を捌いて鶏刺しを作ることはありません。必ず専用に販売されているものだけを口にしています。どーしても食べたいときにはおとなしく鹿児島まで遊びにきてください!
(山口弘剛)