連載企画「オンラインゲーム千夜一夜」へようこそ。

 これまで割とファンタジーやFPSなどを取り上げつつ、そういえばスポーツゲームってなかなか話題にならないよね、と言うことに気がついたため今回スポーツとオンラインゲームの関係について書いてみようと思いました。

■ スポーツとオンラインゲームの関係

 コンシューマゲーム時代から数多くのスポーツゲームが存在しておりまして、古くはファミコンのサッカー、ベースボールなど人気のあるものから、最近ではスマートフォンタイトルのプロ野球スピリッツAなど非常に多彩なラインアップが用意されてきました。

 剣道ですらゲームになっていましたよね……個人的には割と好きなジャンルなのでもう一度復権して欲しいところですが……あとはレースゲームとかかな?

 オンラインゲーム初期には「スカッとゴルフ パンヤ」(2004年~2017年)と言うスマッシュヒットを飛ばした名作スポーツゲームなども配信されていたことがあるのですが、最近は割と大人しめなのかな?と思う次第です。

 まあ野球やサッカーなどのゲームタイトルはライセンス問題なども絡んできますので、開発費だけでなく運営におけるロイヤリティ問題がついて回る状況になっていて、一大ビジネスなんだよねーと改めて認識している次第です。

 筆者もスポーツゲームというのは割と関わっておりまして、例えば競馬ゲームの開発運営であるとか、日本では最近ようやく日の目を見てきましたスポーツ(守秘義務があるので割とセンシティブだったりします)のソーシャルゲームの開発を担当したりと、様々な形で関わってきました。

 その中で筆者がスポーツゲームで何が一番だったかなーと考えましたところ、これしかないな……と思うタイトルが一つでてきました。

 それは全世界展開していて、日本でも大変人気のあるトレーニングアプリ「ZWIFT」(以下ズイフト)です! 

■ 広義の意味ではオンラインゲームに該当する……!

 あ、すいません石投げないで……スポーツゲームじゃないじゃん!と思った方もいるかもしれませんがこちらジャンルとしてはMMOゲーム形式のインドアトレーニングアプリに分類されていますので、広義の意味ではオンラインゲームに該当するんだよ、ハッハッハハ!という割と強引な流れにてお話を進めていきたいと思います。

 ズイフトは2014年9月にベータ版サービスが開始されまして、筆者はベータ版直後から室内トレーニングに利用しはじめました。当初は所有していた固定ローラーを使って遊んでいましたが、その後ちゃんとスマートローラーに載せ替えて斜度変化なども対応させました。

 2015年10月に正式サービスが開始されて、当初は月額10ドルでしたが2017年11月に15ドルへと値上がりしました。

 このインドアスポーツアプリはメタバース的な空間内で、実際のロードバイクを使ったトレーニングができると言う、割とガチ目のトレーニングが可能になっております。

 走行可能なワールドは日毎に変化するようになっており、サービス当初から存在していた架空の島「ワトピア」、Prudential Ride Londonのコースを模した「ロンドン」、2015年世界選手権自転車競技大会ロードレースでプロレーサーが走った「リッチモンド」、2018年世界選手権自転車競技大会ロードレースのコースである「インスブルック」、ニューヨーク島を舞台にした「ニューヨーク」、2019年世界選手権自転車競技大会ロードレースのコースである「ヨークシャー」、そして日本をモチーフとした架空の島である「マクリ島」が存在しています。

 残念ながら筆者は怪我でトレーニングを断念しておりますのでマクリ島は未体験です……。

 その中で自分で設定したコースを走ったり、実際のポタリングのように適当にコースをふらふらと走ったりと自分好みのトレーニングが可能になっています。

 ズイフトの凄さはスマートトレーナーを使ったトレーニングにおいてかなり正確なパワー計測と、坂道や向かい風などの計算を考慮に入れた負荷の変化が楽しめるところです。

これはそれまでのロードバイクにおける室内トレーニングが固定ローラーによるハムスター化もしくは三本ローラーによるバランストレーニングに偏りがちだったところに、ゲーム感覚で世界中のプレイヤーと共にトレーニングやレースができることでしょうか。

 筆者も一時期めちゃくちゃハマっていまして、ゲーム用に自作したパソコンはずっとズイフト専用機になっていたくらいです。

スペックもそれほど高くなかったため、2009年位に組んだゲーミングパソコンであれば違和感なく動作していたくらいなので相当に軽かったと思います。

 現在ではAppleTVなどにもアプリが存在しているため、リビングでローラーを漕いでいる人も増えたんじゃないですかね。

 このアプリが登場する以前は筆者はずっと部屋の電気を消して、イヤホンで周りの音を遮断して心を殺してローラーを漕いでいたので、室内でコースをちゃんと走っていると言う視覚情報に割と違和感を覚えた次第です(笑)

 プロレーサーも利用している人が多く、筆者もコースを走っている時に本物のプロレーサーに何度もぶち抜かれていくという悲しい現実を思い知らされた記憶があります。

 でも普段プロレーサーと同じ空間で走れるっていう経験はあまりしたことがないですし、そもそも日本のロードレース環境は当時はかなりマイナーだったのでそれですら楽しいという割とファン目線でも嬉しいアプリだったりもしました。

 このアプリを気軽に始めるにはちょっとハードルが高く、まずロードバイクの購入(10万円台から)が必要で、心拍計に固定ローラー(これが数万円)もしくはスマートローラー(10万円台)の購入が必要で……パソコンがあって……あれ?もう数十万吹き飛んでいくじゃないですか!というお財布に全く優しくないアプリであることが挙げられます。

 まあその分楽しいからいいんですけど。

 ただこのアプリはゲームとスポーツの融合、そしてメタバースとして考えると非常によくできておりまして、現在では室内ランニングなども対応。運営会社もコミュニティを非常に大事にしており、アップデートも熱心に行われていることから全世界の利用者は250万人を超えていると言われております。

 eSportsにも熱心でレースなども行われていることから、趣味に自転車が……という方は必ず一度は触ったことがあるアプリなのではないでしょうか?

 個人的にはスポーツゲームとして新しい道を切り拓いたアプリだと思っており、色々な場所で語られているタイトルではあるのですが、今回ご紹介させていただきました。

 皆さんの中でイチオシのスポーツゲームって何でしょうか? ぜひSNSなどで教えてください。

※Zwiftの広告塔になっているプロロードレーサー、マチュー・ファン・デル・プールの動画なんかもあったりします。

<参考・引用>
ZWIFT公式サイト
※画像は全て公式サイトのメディアキットを利用しております。

【上村健太郎:筆者プロフィール】
神奈川出身、東京在住。オンラインゲーム業界において長らくプロモーションやプロデュースなどを担当し、数多くのタイトルを立ち上げ、そして終了させてきた苦い経験の持ち主。
私生活では妻と二匹のビーグル犬よりも地位の低い生活を満喫中。

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 【オンラインゲーム千夜一夜】 第九回 スポーツオンラインゲーム? 近未来は体を動かすのがオンラインゲームなんだ!