2022年12月にスタートした連載企画「オンラインゲーム千夜一夜」。オンラインゲーム業界に長年身を置いた筆者が、ユーザー視点&仕事で得た知見から過去を振り返り「あのときこうだったよねー」と紹介していく連載です。

 前回最後に「ちょっと変わったオンラインゲーム」をご紹介します、と自分で言っておいてなんですが、変わったってなんだよと年末年始で自問自答を繰り返し、筆者はふと思い立ちました、「アイツ」がいるじゃねーかと。

 ということで今回ご紹介するのはオンラインゲーム界でも割と変わり種、日本でサービスをすると見せかけて気がついたらそんな予定など、綺麗さっぱり消えていったちょっと変わったオンラインゲーム「City of Heroes」(シティオブヒーローズ)をご紹介します。

 このゲームはアメリカのゲーム開発会社Cryptic Studiosと、韓国NCSOFTがパブリッシャーとなって配信した非常にチャレンジングな布陣で構成されたオンラインゲームです。

 英語、フランス語、ドイツ語のサーバーが公開され、日本でも配信が予告されていましたが大人の諸事情により配信がキャンセルされ、結果的に日本人はほとんど触っていないんじゃないかな、と思います。

 2012年11月30日にサービス自体は終了しておりまして、運営も終了してしまっているのですが、公式サイト(英語版)は開いたまま放置されています。(なぜ削除していないのかは本当に理由が不明です)

 さらに2019年4月15日にはサービス終了後もプライベートサーバーが秘密裏に長く運営されてきていた、というニュースが流れ世間を驚かせました。さらに数日後にはソースコードが配布され、様々なプライベートサーバーが公開されるという事件が発生します。

 当初は法的な問題があるということでNCSOFT側の取り締まり(シャットダウン)の対象となっておりましたが、今現在ではそういった動きも無くなっていると言われています。ただ、公式見解としてはソースコードの漏洩については否定的な立場を崩していません。

 改めてこのゲーム自体を遊んだプレイヤーの一人として、「City of Heroes」を振り返っていきたいと思います。

 ゲームとしての簡単な内容ですが、仮想の街であるパラゴンシティを舞台にプレイヤーはスーパーヒーローとなって、様々なギャンググループや犯罪者と戦うことができるヒーローものRPGです。

 レベル制をとっておりまして、レベルが上がるに従ってスーパーパワーを入手することができるのが特徴。スーパーパワーを使って空中を高速で飛行する、手からレーザーを発射するなどのスーパーヒーローらしいムーヴをすることができるのが特徴でした。

 筆者はこのゲームを遊んでいた日本人プレイヤーさんの紹介記事を見かけ、それで興味を持って遊び始めたのですが、ゲームにログインしてみてちょっと驚いちゃいましたね。

 外見のカスタマイズが恐ろしく細かく可能でして、それこそクリプトン星人のアイツとか、緑色のアイツとか、丸い盾を持ったアイツなんかが作れてしまうという割と自由度の高いシステムを採用。非常に個性的なヒーローが走り回るオンラインゲームとなっていました。

 事実筆者が遊んでいた時期にも、どう見てもアウトなカラーリングのヒーローが空飛んでたりしてて笑いながらプレイしてましたね、はい。

 事実このゲームをパブリッシングしていたNCSOFTは当時マーベル社との法廷闘争を抱えていました。自由すぎるキャラクター生成システムがゆえ、マーベル社のキャラクターも再現できることが問題視されたのです。マーベルの訴えはいくつか却下されましたが、法廷闘争は2005年12月12日に非公開の条件での和解で決着を迎え、その後もサービスおよびキャラクター生成システムに変更を加えることなく運営が続きました。

 和解に先立ち2005年10月に本作品をベースにスーパーヒーローではなく悪役ヴィランとして遊べる「City of Villains」がサービスイン、これは有料での拡張アップデートとして運営されました。割と尖った作品だったので個人的には遊ぶかどうかかなり迷いましたが、筆者は有料アップデートということもあって、結局こちらは触らなかったですね。

 で、そんなこんなをしていた後、本作のサービスから3年が経過した2007年11月10日にパブリッシャーであったNCSOFTが、本作品の知的財産権全てを買取、運営と開発両面を担当することとなり、本作はNCSOFTの指揮により運営が継続していくことになります。そしてそこから5年後にこのゲームの運営は正式にキャンセルされることとなりました。

 なお、本作のゲーム開発会社Cryptic Studiosはその後マーベルとタッグを組んで「Marvel Universe Online」というWindowsやXboxで稼働するオンラインゲームを開発することになるのですが、残念ながらこちらのプロジェクトはマイクロソフトによってキャンセルされ日の目を見ることはありませんでした。

 めちゃくちゃ勿体無いですよね……実際にサービスされていたらどんなゲームになっていたのか、非常に興味が湧きます。

 さて、そんなこんなもあった本作「City of Heroes」ですが、その後も精力的にアップデートが繰り返され2012年5月13日にIssues23までアップデートされたのち、予定していたIssues24を無期限キャンセルして前述したサービス終了への動きを加速していきます。結果的にはサービスが終了した後も色々な諸問題が発生し、割と最近まで色々な事件やニュースになっていたのには驚きました。

 このゲーム、レベル帯によって効率の良いステージが別れている清く正しいオンラインゲームのマップ構成をしているのですが、そのせいもあって初心者が割とどうすればいいのか迷う部分が多かった記憶があります。

 そして公式サイトを見直してみて思いますが、キャラクタークリエイト部分は本当に素晴らしいのですが、グラフィックスはやはり18年前のクオリティなので今のゲーム環境で遊ぶとおそらくがっかりしちゃうかな……と思いました。公式サイトを覗いてスクリーンショットなどを見ていましたが、時代を感じるグラフィックスであることは否めません。

 あとゲーム性は本当に普通のオンラインゲーム(しかもいわゆるクリックゲーム)なので、遊びやすい反面、差別化できる部分が割と少なくこれだったら別のファンタジー世界のゲームでもいいじゃん、ってなりやすかったなと思います。

 まあ、この辺りはヒーローものが非常に人気のあった北米と、日本の環境の違いもありやはり日本での運営は相当にハードルが高かったのだろうとは思います。

 そんなこんなでいまだに話題は続いているけど、日本では運営されていない珠玉のヒーローものオンラインゲーム「City of Heroes」、ご紹介しましたが皆さんはどう感じられましたでしょうか?

 5回にわたって珠玉のオンラインゲームをご紹介したオンラインゲーム千夜一夜、一旦目標となる回数を終えましたので、次回は「超大作オンラインゲーム」を取り上げたいと思います……そうだよ、やっぱり超大作オンラインゲームを取り上げないことには、千夜一夜なんて名乗れないじゃないですか。

<参考・引用>
City of Heroes公式サイト(英語版)
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※画像は公式サイトで配布されている画像を利用しております。

【上村健太郎:筆者プロフィール】
神奈川出身、東京在住。オンラインゲーム業界において長らくプロモーションやプロデュースなどを担当し、数多くのタイトルを立ち上げ、そして終了させてきた苦い経験の持ち主。
私生活では妻と二匹のビーグル犬よりも地位の低い生活を満喫中。

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 【オンラインゲーム千夜一夜】 第五回 「ちょっと変わったオンラインゲーム」って言ったらこれしかないですよ!