新型コロナウイルスによる行動制限が緩和され、駅や列車内では、学校の部活動などで移動中と思われるグループを見かける機会が増えてきました。

 しかし、3年近いブランクがあるせいか、心理学でいうところの「群集心理」も手伝って、生徒たちのマナーが悪い意味で注目されることも。ある現役駅員さんのツイートが話題となっています。

 部活の遠征などで移動する生徒たちに向け、お願いのツイートをしたのは、とある鉄道駅で駅員をしているTwitterユーザー「現役駅員の本当の話」さん(以下:現役駅員さん)。散見されるマナー違反のうち、3つを挙げてお願いをしています。

 現役駅員さんにうかがうと、今回のツイートに挙げた「マナー違反」的行為は、新型コロナウイルスの第7波が落ち着いてきた2022年9月前半ごろから目立ち始めたとのこと。時間帯としては休日の朝、中学生・高校生が中心だそうです。

■ 券売機を占領しないで

 まず「券売機を占領しないでください。せめて1台は開けてください」というもの。

 鉄道で学生のグループが移動する場合、集合場所を駅の改札付近に設定していることが多いようです。集合時間が近づくと、自然と生徒たちがたむろするようになり、それぞれ個々に切符を買ったり、ICカードにチャージをする関係で全ての券売機が埋まってしまい、ほかの利用者が使えない、といった事態があるのだとか。

 ICカードの普及や機器のメンテナンスコスト削減などの要因で、駅の自動券売機は台数が減少傾向にあります。かつて5~6台並んでいた駅が、指定席券売機を含めて2~3台程度になっている場合も。

 そうすると、まだ時間に余裕のある待ち合わせの生徒さんたちが長時間券売機を占領した場合、すぐ次の列車に乗りたい人が切符の購入やICカードのチャージをできない場合も。

 駅の利用者は自分達ばかりではないので、せめて1台は開けておき、ほかの利用客が来る場合に備えておいた方がいいでしょう。券売機は2~3人分をまとめて購入できるので、代表者が取りまとめて購入するようにすると、購入にかかる時間も少なくすみますね。

 また、改札周辺に集まっていると、他の利用客の動線を妨げてしまうことがあります。例えば一見、改札付近が閑散としているように見えても、列車が到着すれば降車客で一気に混み合いますので、できれば壁に沿うなど少し離れた方が無難です。

■ 乗車時は分散乗車を

 続いては「分散乗車をお願いします。一部の号車が混雑して、軽く2分は電車が遅れます」というお話。

 グループはどうしても集団行動しがちで、特定の車両、特定のドアから乗ろうとして時間がかかってしまいます。たまに「学生が一気に乗り込んできて迷惑だった」というクレームが駅員に寄せられることもあるんだとか。

 乗車に時間がかかると発車時間が遅れ、大都市圏では秒単位でコントロールされているダイヤに乱れが蓄積し、混雑の連鎖が発生してしまいます。できれば降車駅を示し合わせた上で4~5人ごとの小グループに分かれ、複数の車両に分散して乗車するとスムーズになるかと思います。

 大きな集団が小グループに分かれる不安もあるかと思いますが、スポーツの試合では数十人がまったく同じ動きをすることはほとんどなく、数人単位の連携プレーを積み重ねていきます。ポジションごとや学年ごとなど、連携を深めていきたい小グループで行動することが、プレーの精度につながるかもしれませんよ。

 乗車時だけでなく、車内でもドア付近に固まるなどして、ほかの利用者の昇降を妨げるケースも散見されます。一緒にいたい気持ちも分かりますが、狭い車内では固まらない方が無難です。

■ 引率者をつけるか事前に指導してほしい

 現役駅員さんによると、最近は引率の先生がおらず、生徒だけで移動するケースが目立つとのこと。現在、多くの駅ではホームに安全確認用の駅員が配置されていません。このため、ホーム上でのトラブルには対処しにくい状況となっています。

 すべての場合がそうだというわけではありませんが、生徒たちだけだと気がゆるみ、好き勝手な行動をとったり、悪ふざけをしたりする年頃です。集団になると、どうしても「仲間」が意識の多くを占めて視野が狭くなり、時にはほかの利用者に不快な思いをさせてしまうことも。

 部活で移動する際はお揃いの校名入りジャージやバッグを持っていることも多く、見る人が見ればどこの生徒かすぐに分かってしまいます。学校の看板を背負っているということを忘れずにおきたいですね。

 部活での遠征・移動は、ある意味小規模な「団体旅行」といえます。団体旅行には急病・ケガ・はぐれた・忘れ物…等々トラブルは付き物ですが、未成年の生徒だけで適切な判断をするのは難しいもの。

 もちろん、昨今話題にのぼることの多い「部活の顧問教員における過酷な労働環境」をかんがみれば、必ず引率するように、と呼びかけるのも酷な話です。であれば、せめて事前にシミュレーションによる指導をし、生徒たちが自律的に判断・行動できるようにしておくのも解決策のひとつになるでしょう。

 また、こういう場合にもキャプテンの統率力が試されると思って、行動するのも良いかもしれません。どんな時でも、1つの目的に向かって行動するクセをつける良い機会ととらえてみましょう。

■ 「社会の一員」として行動するということ

 部活の遠征などで鉄道を使う際は、普段の「学校」という閉じられた社会と、開かれた「一般社会」とが接触する機会でもあります。いずれ学校を卒業して一般社会の一員になるのですから、社会学習の一環として、自分達の振る舞いを客観視してみると、いろいろな気づきがあると思います。

 単に「迷惑だから」や「周囲の人に怒られるから」ではなく、今の状況で自分に期待されていることを理解し、そのように振る舞うことは、試合においても役立ちます。周囲の状況を判断し、そこで自分は何をすればいいのか。試合や練習以外の時間でも意識づけができれば、プレーのレベルも上がるかもしれません。

 列車の中は特に顕著ですが、一般社会ではその場にいる人それぞれが状況に応じて適した振る舞いをし、それを一般に「マナー」と呼んでいます。格式ばってマナーを考えるのではなく、シンプルに「状況判断」と「行動」に分けて考えれば、部活と同じように、振る舞いもマナーに沿ったものになっていくかもしれませんね。

<記事化協力>
現役駅員の本当の話さん(@n3cflFNAtq5B9o3)

(咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 部活の遠征時における児童・生徒の移動 鉄道利用時のマナーを考える