2年前に始まった、新型コロナウイルス禍。すぐに政府から緊急事態宣言が発令されましたが、人流を抑えることによる経済への影響は計り知れず、売り上げ不振による休業や廃業を余儀なくされた企業や店舗も数多く存在します。

 東京上野にある純喫茶「珈琲 王城」も、廃業の危機に瀕した店舗のひとつ。「もうダメかもしれない」という言葉が常にオーナーさんの頭をよぎる中、その折れそうな心を救ったのは、1枚の紙ナプキンに残された客からのメッセージだったのです。

「すごく美味しかったです。次はピラフを食べにきます。コロナに負けないで下さい!!」

 その日、王城の人気メニューのひとつである「チョコレートパフェ」を注文した客が、帰り際に店のナプキンに残したこのメッセージ。大盛りのパフェとかわいい猫のイラストと共に添えられた店への熱いエールに、オーナーさんは「『やれるところまでやってみよう』という気になり、そして今があります」とツイートしています。

 「珈琲 王城」は昭和レトロな雰囲気を残す、喫茶店好きにはたまらない人気店として知られていますが、緊急事態宣言時には1日の売り上げが通常時の10分の1以下という日々が続き、やがて自主休業を余儀なくされました。

 開業以来、最大の危機に際し、通販で珈琲券の販売を開始。それは「今後来店していただくための先行投資」として始めた苦肉の策ではありましたが、店の現状を包み隠さずSNSで発信し続けたところ、大きな反響が寄せられることとなり、なんとか閉店の危機は脱したようです。

 そんな中「チョコレートパフェ」を注文した客が、帰り際に店の紙ナプキンにイラストとメッセージを残していきました。「おそらくSNSのどれかを見てご来店してくださったお客様なのでは、と思っております」とオーナーさん。

 この紙ナプキンは、すでに客が会計を済ませた後、テーブルを片付けている時に発見されたもので、いまだ会うことは出来ていないのだそう。

 「見つけた時は涙が出るほど嬉しかったですし、この道を突き進もうと改めて思えるくらい、我々の背中を押してくれるラブレターでした。心から感謝を申し上げたいです」と、当時の思いを感慨深く語っていました。

 店舗の向かうべき方向を指し示すきっかけとなった、今回の心温まるエピソードを載せたツイートには、7万件もの「いいね」が寄せられ、返信欄には多くの方から店で過ごした思い出の写真と共に、激励の言葉が贈られています。

 こうしたSNSへの反響も、各メニューの味が高く評価されていることはもちろんのこと、苦しい状況でもコーヒーやセット類の値上げを見送る等、顧客目線での経営努力を怠らなかったからこそ。

 今も王城があり続けるのは、決して偶発的なものでなく、こうした真摯な姿勢を貫く店の危機を、多くのファンがなんとか助けてあげたい、恩返しをしたいと考え、必要とされた結果である。こう捉えるのが正しいと言えるのかもしれません。

<記事化協力>
珈琲 王城 公式ページ(@coffeeoujyou)

(清水野明香/山口弘剛)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 喫茶店オーナーを救った紙ナプキンのラブレター 心温まるエピソードに反響