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愛好者の多い艦船模型は市販のキットだけでなく、フルスクラッチでオリジナルの模型を作る人も多いのが特徴。
フルスクラッチの場合、木やプラ板を素材としたものが多いのですが、シェイルT.Kさんは画用紙とコピー用紙を使っています。あえて彩色せず、紙の白さをいかした精密な作品についてうかがいました。
小学6年生のころ、たまたまYouTubeで画用紙から艦船模型を作る動画を目にした、というシェイルT.Kさん。手軽に入手できる素材を使った模型作りをい面白いと感じ、自分でも作品作りに取り組むようになりました。
艦船に興味を覚えるようになったのは、実は模型作りを始めてからなのだとか。模型作りのために資料を収集するうち、その船の歴史を深く知りたいと思うようになったそうです。
作り始めておよそ7年。現在手がけるのは、旧日本海軍の駆逐艦や海防艦など、小型の艦艇が主。作品作りに際しては、できる限り多くの資料を収集し、それをもとに図面をひいて模型を作っています。
「駆逐艦は小型ながらも様々な兵装を有しており、小さな船体に対艦、対空、対潜すべての戦闘能力を持たせるためにいろいろな工夫が施されているので、建造時の資料などを読んでいると面白いです」
数々の作品の中でも、代表作ともいえるのが2019年に作られた1/100スケールの駆逐艦「菊月」。菊月の戦友会である駆逐艦菊月会が実施した、菊月3Dモデル化プロジェクト(現在データはBOOTHで公開中)のモックアップとして作られた、全長1mあまりの大作です。
菊月は睦月型駆逐艦の9番艦として1926年に進水。ツラギ島攻略戦の最中である1942年5月、アメリカの空母艦載機部隊の攻撃で大破、曳航中にツラギ島近くの海岸で座礁し、放棄されました。
それまでウォーターライン(水面上の姿)モデルを作っていたシェイルT.Kさんにとって、初めて手がける船体全部を再現したフルハルモデルとなった菊月。1/100スケールという大きなサイズということもあり、資料集めに2~3か月、完成まで半年かかったのだとか。
丹念な資料集めもあり、模型では細かいディティールまで再現。艦橋内部や12cm主砲、13mm連装機銃といった部分も手を抜かずに作られています。
2020年夏には4か月がかりで白露型駆逐艦の2番艦時雨を1/200スケールで制作。また2021年春には日振型海防艦を1/400スケールで複数制作しています。
日振型海防艦は量産性を意識して作ったそうで、1隻あたり2週間で次々と作られました。ずらりと並ぶと独特の美しさがありますね。
大きな作品ばかりではありません。2022年8月現在の最新作は、1/700スケールで作られた海上自衛隊のはやぶさ型ミサイル艇。もともとが全長50mと小型のため、1/700スケールにすると指でつまめる大きさですが、ブリッジの窓や主砲の76mm速射砲、後部の艦対艦ミサイルシステムなども、しっかり再現されています。
模型に使われているのは画用紙とコピー用紙。強度の必要な骨格部分や大きなパーツに画用紙を用い、細かなディティールはコピー用紙が使われます。
マストやアンテナ、砲身などはコピー用紙を棒状に丸めて作られています。場合によっては1mm未満になることも。
シェイルT.Kさんの艦船模型は、紙の白い地肌のままになっていることも大きな特徴。これについては、紙でできていることが一目で分かるようにと、白のみだからこそ、光が当たった際の雰囲気が好きだと語ってくれました。
今後作ってみたい作品についてうかがうと、1/700はやぶさ型ミサイル艇のような10cm以下の小さな作品と、ジオラマ要素を取り込んだ作品の2種類を挙げてくれました。
小さな作品については「大きな作品は迫力があって良いのですが、小さな作品にも『こんなに小さいのによく作り込まれてるなぁ』といった別の凄さがあると思っています」とのこと。
また、ジオラマ的なものについては「たとえば艦が入港しているシーンや、波の高い外洋を航行しているシーンなど、ストーリー性のあるものを作ってみたい」と話してくれました。
まだまだ作ってみたいものややってみたい表現など、たくさんあって楽しみだと語るシェイルT.Kさん。次はどんな船で私たちを驚かせてくれるのか、Twitterで逐次報告される新作の進捗状況を待ちたいと思います。
<記事化協力>
シェイルT.Kさん(@syeirutk)
(咲村珠樹)