新型コロナウイルス禍で注目される部屋の換気。2003年の改正建築基準法施行により、これ以降に建てられた建物の居室には、24時間換気システムをはじめとした換気設備の設置が義務付けられています。

 ところが、その存在を知らない人が約4割にものぼることが三菱電機の調査で判明。さらにシステムの換気扇を掃除したことがない人は6割。フィルターは1~2年間交換しないと「換気効率は50%低下」するとされており、まさに“もったいない”状態になっている家の多さが明らかとなっています。

 この調査は、2004年以降に建てられた家に5年以上住んでいる、全国の20代~60代の男女500人を対象に、インターネットを通じて実施されたもの。換気設備の設置義務付けは、もともとシックハウス予防(有害物質や湿気の屋外排出促進)が目的だったのですが、新型コロナウイルス禍で改めて注目されています。

■ 24時間換気システムの認知度と使用状況

 機械による24時間換気システムは、新鮮な空気を常に屋外から取り込み、汚れた空気を排出してくれる便利なもの。しかし、認知度はあまり高くないようです。調査の結果、約4割にあたる39.4%が自宅に設置されていることを知らず、特に20代になるとその割合は半数以上の57.0%にはね上がります。

 もちろん、設置場所を把握していない人も少なくありません。全体では37.2%、20代では53.0%が「全く把握していない」と回答し、逆に全て把握している人も全体で25.2%、20代では16.0に過ぎません。宝の持ち腐れになっているご家庭もあるようです。

 24時間換気システムは、その名の通り24時間稼働し続けることで、効果を最大限に発揮します。実際の使用状況について質問してみると、全体の44.0%が24時間使用をできていないと回答。20代になると特に多くなり、実に57.0%が24時間使用をしていません。

 これにはどんな理由が隠れているのでしょうか。24時間使用ができていないと回答した220人を対象に、理由を複数回答で聞くと「窓開けやドア開けなどその他の方法で換気している(26.8%)」がトップでしたが、続いて「電気代を抑えるため(24.1%)」、「使用方法がわからない(18.6%)」などが上位回答となりました。

 これを年代別で見てみると、50代と60代は「その他の方法で換気している」がトップ、30代と40代では「電気代を抑えるため」がトップ、20代は「使用方法がわからない」がトップとなりました。高年齢層では他の方法で代替できると思い、30代と40代は家計節約、そして20代は使い方を知らないという実態があるようです。

 換気は居室内の空気をいかに動かし、流すかがポイントになりますが、中には誤解もある様子。室内の換気に関する項目を4つ提示し、自分たちの行動に当てはまるか聞いてみました。

 すると「空調の効きが悪くなるから24時間換気システムを使用していない(19.8%)」、そして「24時間換気を行うため、レンジフードファンなどの換気扇を常に使用している(18.0%)」、「空調の効きが悪くなるため、ドアの下の隙間を塞いでいる(17.2%)」、「レイアウトの関係で、24時間換気システムの換気扇の前に家具を置いている(12.0%)」の順に回答数が多くなりました。

 実はこの4つの項目、どれも24時間換気システムに関する誤った行動なのだとか。4つの項目にどれか1つでもあてはまる人の数を抽出したところ、全体の34.8%を占めることが判明。20代では約半数の44.0%が、正しい使い方を把握していませんでした。

 24時間換気システムは、常時ONにしておくことで、自動的に空気を入れ替え、結露やカビ、嫌なニオイなどを防いでくれる優れもの。電気代が気になるという回答もありましたが、月額にすると数十円から数百円程度なのだそうで、動かさない節電効果より、動かすメリットの方が大きそうです。

■ 定期的な掃除の必要性 1~2年放置で換気効率半減

 しかし、適切にお手入れをしないと、せっかくの効果も少なくなってしまいます。24時間換気シシテムの換気扇を掃除したことがある、と回答したのは全体の40.0%で、6割が掃除をしていないことがわかりました。

 理由を複数回答で聞いてみると、トップになったのは「掃除の仕方がわからないから」で34.7%。次いで「面倒だから(25.0%)」や「普段使用していないから(14.3%)」という回答が上位を占め、掃除の頻度についても「1年に1回以下」の回答が全体の約4割(39.5%)に及びました。

 24時間換気システムの換気扇にはフィルターがついており、それを定期的に交換することで日常のお手入れは事足ります。新品と1~2年間放置したフィルターでどれほどの違いがあるのか、三菱電機では換気扇を製造する中津川製作所で実測調査を行ったといいます。

 その結果、60平方メートルある室内の空気が入れ替わるのに新品では2時間だったところ、1~2年放置したフィルターでは4時間と、性能が半分になっていることが判明。騒音についても新品の27dbに対し33dbと、1~2年放置したフィルターの方がうるさくなっていたといいます。

 実測調査の結果を参考にすると、1年に1回程度の掃除では換気効率が半分に落ちていること、また換気扇の動作音も大きくなることが分かります。思っているよりも、部屋の空気中にはホコリなどの汚れが舞っているんですね。

■ 換気扇掃除の頻度は「2週間に1回」が理想的

 今回の調査結果をもとに、住生活ジャーナリストの藤原千秋さんは、住環境を整える換気扇掃除の重要性について、大きく2つのアドバイスをしています。

 ひとつは、住居の気密性が向上したことにより、意識的に換気をする必要性が高まったこと。「住居での健康的な暮らしを維持するためにも換気扇掃除は必ず行いましょう」と語っています。

 また、換気扇掃除の頻度としては「2週間に1回」程度が理想的とのこと。これからの季節で掃除に適した時期については、暑くなくなった「10月」、そしてあまりにも長期間掃除をしていなかった場合には、フィルターに溜まったホコリを吸い込み体調を崩すこともあるので、専門業者に頼むのも手だといいます。

 適切な換気をすることで、空気中の「ホコリのもと」や湿気を取り除き、新鮮な空気を常に取り入れることができます。健康な暮らしの第一歩として、新しい家の場合「24時間換気システムの換気扇」の場所を把握することから始めてみるとよさそうです。

情報提供:三菱電機株式会社

(咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 自宅の24時間換気システムを掃除したことのない人が6割 三菱電機が調査