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ウエディングプランナー歴10年以上の筆者が贈る、結婚式で実際にあったちょっと怖い話。
人生においての一大イベントである結婚式では、様々な人間模様が垣間見れます。ときにはドラマで起こるような出来事に遭遇することも。今回は、その中から、少しだけ怖かった話を3つピックアップして紹介します。
これは、上司が以前務めていた結婚式場での出来事です。結婚式当日は、新郎新婦が一緒に来館することが多いですが、新婦のほうが支度に時間がかかるため、新郎だけ1時間ほど到着時間を遅らせることもしばしば。この結婚式も例外ではなく、新婦が支度開始から1時間後に、新郎が到着する予定になっていたそうです。
しかし、予定の到着時間になっても新郎が来ない。電話をかけても、繋がらない状況でした。スタッフも心配はしていましたが、支度時間に遅刻してくる新郎は意外と多いため、この時は大事になるとは考えていなかったとのこと。
挙式30分前。ゲストが揃う時間になっても、新郎は姿を現さず、それどころか、受付が始まるも、新郎側のゲストが誰もいない異例の状態に。新婦側のゲストもざわつき始めます。新婦は泣きながらも支度をととのえ新郎を待ちましたが、結局、新郎も新郎家も来ないまま、挙式の時間に。
新郎不在では結婚式ができないため、予定していた挙式は取り止めに。披露宴の時間になっても新郎と新郎家は現れず、披露宴も中止。
新婦は憔悴して話ができなかったため、スタッフと新婦両親とで話し合った結果、招待した新婦家のゲストには、頂いたご祝儀は両親から返却し、披露宴に出されるはずだった料理だけを食べて帰ってもらったとのこと。上司いわく、落ち込む新婦は元より、新婦の両親や家族も、気の毒で見ていられなかったそうです。
後日談ですが、新婦が、結婚詐欺に遭ってしまったのではないかとのことでした。警察に被害届も出したそうですが、結局、犯人である新郎を見つけることはできなかったそうです。
これは、私がプランナーとして担当した結婚式の話。当時働いていたホテルでは、結婚式に届いた祝電は、名前の間違いや日付の間違いを確認するため、事前にスタッフが開封するルールでした。
通常、祝電は前日までに届くことが多いのですが、この祝電は結婚式当日の朝届けられました。クロークで受け取ったスタッフに「ちょっと大丈夫か見てもらえますか?」と呼ばれて中を確認すると、「〇〇くん、結婚おめでとう。いつまでもしあわせに。〇〇より」の文面が。
文章自体は不自然ではなかったものの、名前が女性の愛称であったことと、新郎に女性の友人が1人で祝電を贈るケースは稀なため、スタッフが心配して私を呼んでくれたそうです。
何より、電報のデザインも私たちにはあまり見慣れない地味なデザイン。当時の私は気付くことはできませんでしたが、年配のスタッフに確認すると、「それは弔電用の電報だよ」と一言。聞いた瞬間、思わず怖くなって持っていた電報を落としてしまいました。
スタッフ数人で話し合った結果、本来であれば、新郎新婦揃って祝電を確認してもらうところを、その日だけは、別々に祝電確認をすることに。経緯は分からないけれど、この不穏な電報をせめて今日だけでも新婦には見せたくないというホテル側の配慮でした。
さも当然かのように、新郎新婦それぞれの支度部屋での祝電確認をし、滞りなく結婚式は終わりました。誰からの電報だったのかは私たちにはわかりませんが、電報を見たときの新郎の笑顔は、確実に引き攣っていたと思います。
これは、新郎新婦が、結婚式の料理の試食を兼ねて、両家の顔合わせでホテルを利用してくれた時の話です。新婦家の両親とは初対面でしたが、新郎家の両親は、実は息子たちに内緒で下見に来ていたので、会うのは今回が2度目。
息子の結婚をとても喜んでいて、嬉しそうに話してくれるお父様が印象的でした。両家顔合わせが和やかに進むなか、新郎のお父様がお手洗いのためロビーにでたところで、私と偶然遭遇。お話ししながらお手洗いまでご案内しようと思った瞬間、お父様がうずくまり、そのまま倒れてしまい……。
当時20代前半だった私は、人が目の前で倒れるのを見るのが初めてだったこともあり、頭が真っ白に。私がお父様を抱えている間に、救急車の手配、他のお客様への配慮など、冷静に対応する上司たちを、この時ほど心強いと思ったことはありません。
救急車で近くの病院に搬送されましたが、その日のうちに元気になって自宅に帰ったとのこと。後日聞いたところによると、いつもはお酒が強いお父様が、緊張と高揚のあまり、ビール1杯で倒れてしまったそうです。
2か月後の結婚式でお会いしたときには、「今日はお酒は控える」と冗談交じりに話をし、とても安心したのを覚えています。
プランナーとして結婚式に携わると、人間の色々な面を垣間見る機会があります。怖い話だけでなく、感動的な話や珍事件もたくさん。今回紹介した人たちが、幸せになっていることを願っています。
(一柳ひとみ)