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日頃の料理に活用されるアルミホイル。あまりに薄いので忘れがちなんですが、これは金属素材であり、折ったり丸めたりすると容易に「アルミのかたまり」に変化します。
このアルミホイルだけを使い、素晴らしい造形作品を作り続ける作家さんがいます。少年時代から30年以上にわたって創作に取り組む、箔屋スフィカさんに話をうかがいました。
アルミホイルアーティスト、箔屋スフィカさんは現在46歳。アルミホイルで物作りするきっかけは、小学生時代にさかのぼります。
「少年野球時代に持たされていた、お弁当のおにぎりを包んでいたのがアルミホイルでした。食べたあとに丸めてボール状にしていましたが、思い通りの形になるのが楽しく色々な形にして遊び始めました」
元々粘土細工が好きだったという箔屋さん。中学に進学しても続けていたそうですが、当時一般的だったのは油粘土で、臭いや汚れが手につくのが難点でした。「綺麗なもので造形できないかと考え、アルミホイルを材料に使うことにしました」
こうして、アルミホイルを材料に造形作品を作るようになって30年以上。その頃からの作品数は「通算で言えば1000点を超えていますが、作る=遊ぶがメインだったので壊して遊ぶこともあり、昔作ったものはほとんど残っていません」とのこと。
現在残っているのは作品展を始めてからのもの、ということですが、それでも「5cm程度の小さいものが100点ほど、10~20cmの中型作品で60~70点、それ以上の大きなものが10点の計180点ほどになります」と、充実した作品数です。
それにしても、極薄のアルミホイルが様々に形を変えるのには驚きです。基本的に材料はアルミホイルのみで「丸めることでボリュームを出し、ひねったりつまんだりすることでパーツを作り出します。紐状にして結んだりすることも可能で、編み込むような手法で固定することもあります」と技法のいくつかを明らかにしてくれました。
作品作りでよく使う道具についてうかがうと「机です」と意外なお答えが返ってきました。「平面に押しつけることで、ボコボコしやすいアルミホイルの表面をならすことができます。粘土を丸めたり伸ばしたりする感じですね」かたまりになるとアルミホイルといえど金属ですから、硬く平らな面が役立つようです。
魚のウロコや、軍鶏の羽毛といった細かいディティールは、アルミホイルを平面にならしてから硬い凹凸に押しつけ、模様を浮かび上がらせるのだとか。模様の複雑さ、細さなどに合わせ、様々な道具を駆使しているそうです。
モチーフとして多いのは生き物。実在するものはもちろん、ドラゴンなど想像上の生き物も多く
「自由に作れる方が楽しいので、今はファンタジー色の強いオリジナル作品が多いですね」。無垢のアルミホイルだけでなく、包装に使われる色付きのものを使った作品もあります。
今は各地で作品展も開催している箔屋さん。来場者の反応についてうかがうと「作り込みの細かい作品は総じて人気があります。ファンタジーモチーフが多いのでドラゴンが推しであり人気もありますが、やはり代表作の軍鶏は作り込みに驚かれる作品です」とのことで、アルミホイルでの細やかな表現は人々の驚きを誘うようです。
薄くヒラヒラとしたアルミホイルですが、箔屋スフィカさんの手にかかると存在感豊かな「アルミの造形作品」へと生まれ変わります。お近くで作品展があった際には、ぜひ生でご覧になることを薦めします。アルミホイルの隠れた可能性に、きっと驚かれることでしょう。
<記事化協力>
箔屋スフィカさん(@hakuya_89)
(咲村珠樹)