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カフェの入り口などでよく見かける「Open/Closed」の看板。オモテにしたり、裏返したりして表示を変えるものが一般的ですが、一風変わったユニークな看板が現れました。
動画を見てみると、まずは「open」が表示されている状態の看板が写っています。「p」の文字を上に持ち上げると……あら不思議。歯車が回転し、一瞬のうちにして表示が「closed」に変わりました。
文字が一瞬にして変わる様子は、何だか手品を見ているかのよう。歯車がきれいにかみ合う動作が気持ちよく、木製のアンティークな雰囲気もおしゃれですよね。一瞬では何が起こったのかわからず、つい何度も動画を見返してしまいました。
「HAGURUMA」と名付けられた、このからくり作品を制作したのは、パフォーマー、数学講師、クリエイターと多方面で活躍する、池田洋介さん。
池田さんがこの作品の開発に着手したのは、さかのぼること8年前。もともとタイポグラフィーやアンビグラム(異なる読み方ができる文字のデザイン)に興味があった池田さんは、2014年のある日、街を歩いていた際にお店の「open」という看板を見て、それをうまく入れ替えれば「close」という文字になるのでは?と気付いたと言います。
ただし、その変換を行うためには文字を回転させたり、位置を入れ替える必要があります。それをスムーズに実現する方法はないかと考えたときに、歯車を使うというアイデアを閃いたのだそう。日常的に目にするものから、このようなアイデアを思いつくのは、さまざまな肩書きを持つ池田さんならではといったところでしょうか。
早速その日のうちに、ダンボールを用いた試作品を作り、それをSNSにアップしたところ、またたく間に世界中に拡散されました。通常はアイデアというと形にするまでが長いイメージですが、思いついてから半日で作り上げてしまうとは、そのスピード感にも驚きです。
そこから現在の形に至るまで、さまざまな改良を重ねます。そもそも「open」の反対は「close」ではなく「closed」のため、「p」の文字を「d」に変化させるために歯車の機構を工夫するなど試行錯誤を繰り返した結果、この自然な動きから美しさすら感じる作品が完成しました。
池田さんが特にこだわったのは「操作の気持ちよさ」。視覚だけでなく聴覚や触覚を刺激するような作品を作りたいと常々考えている、という言葉通り、動かした際に歯車が稼働する音や、文字が回転し単語が変化する動きは、見れば誰もが「操作してみたい!」と感じるのではないでしょうか。
また、池田さんがモノ作りに対して、もう一つ大事にしているのが「遊び心」。
「Open/Closedの看板なんてひっくり返すだけのやつがあって、そりゃそれが一番単純で使いやすいんだけど、それでもそういう些細なところで全力で遊んでやろうっていう無駄なエネルギーって、なんか尊いですよね」
制作へのポリシーをこのように語っています。無駄と思えることにこそ意味がある。まさに、パフォーマー、数学講師、クリエイターと複数の視点を持つ池田さんだからこそ作ることが出来た、クリエイティビティあふれる作品と言えるでしょう。
なお「HAGURUMA」は6月9日まで、クラウドファンディングサイト「Kickstarter」において、受注生産のための支援を募集中。4月28日現在、既に目標額を大幅に達成していますが、期日まで受け付けているとのこと。
据え置き型と壁掛け型の2種類が用意されているので、さまざまな場面で活躍しそうです。気になった方は、ぜひページをのぞいてみてください。
<記事化協力>
池田洋介さん(@ikeikey)
(山口弘剛)