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近頃、SNSなどで父親の育児参加に関する投稿を多く見かけるようになってきました。以前は父親が育児をすることは、珍しいこととして扱われてきましたが、世帯構成の核家族化が進む中で、こうした一般的とされてきた価値観が変化しつつあることを感じています。
一方、産後直後についてはどうでしょうか。「生まれた直後は父親がやることはない」……そういう風に考えているとしたら、改めたほうが良いかもしれません。1月に赤ちゃんが生まれたばかりのパパである、けんわたさん(@kenwata_w)のツイートが大きな反響を呼んでいます。
子供を授かりましたって話をすると「最初のうちは男ができることないよ」って何度か先輩パパたちに言われてきたのですが、実際に育児をしていて僕にできないことは母乳の直接授乳だけだったのでその方達はできることがなかったのではなくやらなかっただけなんだと気づきました
筆者自身も娘2人の父であることから、このつぶやきには同意しかありませんでした。当時の同僚や知人からそういう風に聞かされていたものの、産前、妻と共に読んだ育児書を読めば読むほど、「これはとても一人では無理だ」と強い危機感を抱いたことを覚えています。そんな昔のことを思い出しつつ、けんわたさんに話をうかがいました。
けんわたさん自身はフリーランスのカメラマン、ライターとして活動しているため、会社員のような育児休業制度はありません。加えてけんわたさんの妻も同様にフリーランスとして仕事をしているため、出産手当などはない状態。生活費を確保するために、完全に休業は出来ませんでしたが、現在は撮影の仕事はお休みし、在宅で可能なライター業務のみを続けているとのこと。
ツイートについてうかがうと「元々僕は男性は仕事、女性は家事・育児という、これまで性別によって役割が決められることに違和感を感じていたので、父親が家事育児をすることは当然のことであると思っていました」と育児観を語るけんわたさん。性別で役割を分け隔てることなく、夫婦で協力して行うものという認識を持っていたそうです。
けんわたさんが、より強くこの事を意識するようになったのは、妊娠から出産について本格的に勉強をした時。書籍やネットで知識を深めていくうちに、妊娠から出産の過程において女性の身体的負担が大きいこと、そして交通事故並みと言われている産後のダメージを負った中で慣れない育児を慢性睡眠不足の状態でしなければならないことを知ったと言います。
これらのことを学んだ時に「ただでさえ産後のダメージが残っている大変な時期に、女性1人に家事育児をさせるのおかしい」と、先輩パパ達から聞いていた話との矛盾を感じ、産褥期の約6~8週間はパートナーに出来る限り休んでもらうために、むしろ男性は家事育児にコミットしなければいけないのではないか、と強く思うようになったそうです。
ツイートの中でも特に印象的な「僕にできないことは母乳の直接授乳だけ」というメッセージ。これはまさにその通りで、抱っこや寝かしつけ、おむつ替えといった育児に関することはもちろん、掃除や洗濯、料理など、男親にも出来ることはたくさんあります。
こうした場合、妻が指示を出したり、それぞれやる事を明確に決めたりと、手段はさまざまありますが、けんわたさん宅では明確に担当として線引きしておらず、2人の時は1人が泣いた子をあやしておむつを替えるなどしていたら、もう1人がミルクを作るといった形で自然な形で分担しているのだそう。2人共に身に付けた知識を元に、次に何をすればよいか、何をすればお互いが助かるかを分かっているからこそ、自然と行動に移せるのでしょう。
また、お互いの得意不得意で気付けば担当のようになっていることもあるのだとか。例えばけんわたさんは歌うのが好き、且つ筋力があるので抱っこや寝かしつけを率先し、妻は手先が器用で細かい作業が好きなので、電動やすりで爪を削る、電動鼻水吸引器で鼻水を吸うなどの担当といった形で、自然発生的にこなしていることもあるのだそう。これも普段からのコミュニケーションが良く取れていることのあらわれでしょう。
もちろん、それぞれがバランスよくこなしているからといっても、決して育児はラクではありません。赤ちゃんが生まれる前と後の心境の変化を、けんわたさんは「毎日が想像以上に大変、だけど幸せ」と表現しています。
生まれる前は、どれだけ知識をつけても自分に子どもが育てられるのか……という不安もあったそうですが、生まれてからはすぐに「やるしかない、命に関わる!」という気持ちに切り替わったと言います。
仕事と育児の両立はもちろん簡単にはいきません。フリーランスとして、これまで自由に自分の時間を組み立てられていたのが、産後は子供中心に動かないといけない、かつ思い通りにいかないことにもどかしさを感じることも。
ですが、「どれだけ大変でも子供の笑顔を見るだけで”ああかわいい幸せ”となるのが自分でも面白い」と自身の心境の変化も楽しく感じているようです。これは、自ら育児をやってみたからこそ分かったことと言えるでしょう。
これらはけんわたさんの誠実な人柄による部分ももちろんあるのですが、最も重要なことは「周囲の意見に左右されず、出産前から育児に対する知識を身に付けていたこと」ではないでしょうか。
もしかすると先輩パパ達の中には「妻に育児をさせてもらえなかった」という方もいたのでしょうが、おそらく育児に対して知識が不足しており、受け身体勢になっていたからではないかと思います。
たとえ「協力したい!」と思っていても、逐一妻に質問したり、「俺は何したらいい?」と聞いているようでは、ただでさえ大変な妻のストレスはたまる一方。付け焼刃では教えても上手くできないし、それなら自分でやった方が早い、と判断され負担を増やしてしまう結果になるのは当然ですよね。
受動的ではなく、能動的に動けるようになるためには、「最低でも妻と同等の育児知識を身に付けておくこと」。妻だって自動で育児が出来るようになるわけではありません。やるしかないから書籍やネットで不安に思うことを調べて実行しているのです。これは夫にとってももちろん当てはまる事です。
当然、それぞれの家庭の事情があるので全てが同じように行くわけではないという事は重々承知ですが、それでも「男性にとっても新生児期からの育児は当たり前である」ということが、広く一般化されて欲しいと願います。
けんわたさんの投稿には2万件を超える「いいね」と共に、「本当にこれ」「母も同じ。トライ&エラーです」と多くの同意の声が寄せられています。
中には「むしろ体力がある分、男性の方が出来る事多い」「父親にも産婦人科で指導必須にしてほしい。そうすればきっとわかる」といった、男性のほうが得意な事がある、男性こそやるべき事があるという意見も見られました。
こうした様々な声に対し「たくさんの反響をいただけて驚きながらも、同じく育児をしているママさん、パパさんから共感の言葉をいただけてとてもうれしいです!」と感想を語ったけんわたさん。母親だけでなく、同じ父親の立場の方からも寄せられた、たくさんの共感の声を心強く感じたようです。
<記事化協力>
けんわた@1mさん(@kenwata_w)
(山口弘剛)