佐賀県立博物館で2022年2月1日より始まったコレクション展「忠吉から忠広へー集結!初代忠吉-」が、ゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」とコラボ。ゲーム内に登場する肥前忠広の等身大パネル展示など、さまざまな企画が実施されています。

 今回、佐賀県の担当者から展覧会とコラボについて、じっくり話をうかがう機会を得ました。コラボの経緯や展覧会について、ご紹介します。

■ 初のコラボ実現について

 「刀剣乱舞」シリーズでは、名にし負う数々の名剣名刀がキャラクター化され、刀剣男士として審神者(プレイヤー)のもとへ集います。

 2019年の実装以来、刀剣男士の「肥前忠広」として初となった今回のコラボ。どのような経緯で、話がまとまったのでしょうか?

 佐賀県広報広聴課サガプライズ!でコラボに携わっている愛垣さんに話をうかがうと、佐賀藩の生んだ「肥前刀」でも中心的存在である忠吉(忠広)一派、その祖である初代忠吉の作品を揃えた展覧会であることから、より親しみを持ってもらいたいと企画したんだとか。

 また、たまたま「刀剣乱舞」に詳しい学芸員さんがいたこともあり、コラボの話はとんとん拍子に進んでいったといいます。

 「佐賀県立博物館では刀剣を多く所蔵していまして、その魅力から以前より刀剣ファンの注目を集めているんです。その中から『刀剣乱舞』とのコラボも是非、というお声もいただきまして、今回のコレクション展に合わせて企画しました」

 肥前忠広がゲーム内に実装された2019年、佐賀県立博物館では偶然にも肥前刀の展覧会を開催しており、反響も大きかったとのこと。

 「そういった意味では、今回ようやくコラボが実現して、とても喜んでもらえるのではないかと思っています」

 幕末の“人斬り”、岡田以蔵の佩刀(はいとう)として知られる肥前忠広。刀剣男士としても、それに準じてか少し影のあるキャラクター設定になっています。

 「肥前刀の代表としてゲームに実装されて嬉しく思いました。また、キャラクター紹介の最後に『めしは食う専門』とあるので、ぜひ審神者の皆さんにも佐賀県の美味しいものも色々食べてもらえたら」と愛垣さん。

■ 初代忠吉の作を18口展示 オススメは?

 初代忠吉は「武蔵大掾」の称号を得たのち、名を「忠広」と改めました。代々の忠吉も「忠広」を称する時期があり、忠吉と忠広は一派にとって嫡流を示す重要な名であったことがうかがえます。

 会場には初代忠吉の作品18口をはじめ、代々の忠吉(忠広)が手がけた刀剣を一挙に展示。トータルでは40近い数となり、鍋島藩の庇護のもと発展した肥前刀・忠吉一派を概観できるようになっています。

 中でも、愛垣さんが一推しの作品は「肥前国忠吉/慶長五年八月吉日」の銘が切られた刀。現在、存在が確認されている中で最も古い時期の作だそうで、ある意味ルーツ的存在として鑑賞の軸にするといいかもしれません。

 また「武蔵大掾となったのちに作刀された『肥前国住武蔵大掾藤原忠広/寛永八年八月吉日』の銘が切られた脇差は、直刃の多い肥前刀の中でも大きく乱れた刃文を持つ異色の作といえます。こういった作風の変化も楽しんでいただけたら」とも語ってくれました。

■ 刀剣を立てて展示する理由・佐賀の名産品とのコラボも

 一般的な刀剣の展示では刀身を横にしていますが、今回のコレクション展では柄に入り込む茎(なかご)を下にし、立てて展示するのも特徴のひとつ。

 展示に使われている刀掛台は、約1年がかりで博物館が設計し佐賀の伝統工芸品「諸富家具」の職人とともに作り上げたものだそうです。

 愛垣さんは「立てることによって、茎に切ってある銘も読みやすくなりますし、刀剣の姿をじっくり楽しめるようになっています。今回の展示で中心となっている初代忠吉は、様々な試行錯誤を経て作風を確立しているので、その変遷も見比べやすくなっています」と語ります。

 展示に使われている刀掛台だけでなく、佐賀の名産品とのコラボ商品も作られました。

 肥前忠広が描かれた佐賀海苔(税込400円)にブラックモンブランのクランチチョコ(税込480円)、銘菓の花ぼうろ(税込350円)や有田焼の皿(税込1500円)が用意されています。

 肥前忠広のクリアカードがつく花ぼうろには、肥前忠広の刀剣男士紋が焼印されていますが、きれいに焼印できるよう型作りには気が配られたとか。

 また、佐賀錦の柄と佐賀県の木であるクスノキの花、肥前忠広の刀剣男士紋をデザインした有田焼の皿は、職人の手で丁寧に絵付している部分もあるとのこと。

 このほかにも、会場限定で販売される展覧会とのコラボグッズが登場。

 同じく佐賀錦の柄とクスノキの花がフィーチャーされ、A4クリアファイル(税込600円)と缶バッジ(全2種類:税込各500円)は肥前忠広の姿とともに「刀 肥前国忠吉/慶長五年八月吉日」「脇差 肥前国住武蔵大掾藤原忠広/寛永八年八月吉日」の刀身をデザイン。

 ハンドタオル(税込450円)とマスクカバー(税込600円)は、和の雰囲気をより感じられるものとなっています。

■ 音声ガイドは肥前忠広役・小松昌平さんが担当

 展覧会の友となる音声ガイドには、肥前忠広役の声優・小松昌平さんが担当。耳元で刀剣の鑑賞法や初代忠吉の作風、忠吉一派の歴史などを解説してくれるといいます。

 収録に立ち会った愛垣さんによると「刀剣鑑賞には専門的で読みにくい言葉が色々出てくるのですが、スッと自然なトーンで読まれるのはさすがだと思いました。また、展示の合間には肥前忠広が語りかけてくるボーナストラックもあるので、是非楽しんでください」とのことです。

 音声ガイドは、スマホアプリ「聴く美術」の有料ダウンロードコンテンツ(税込730円)として作られています。このため、2022年2月1日~3月20日の配信期間中ならいつでも、どこでも、何度でも聴くことができるのも魅力になりそうです。

■ コラボイベントや宿泊プランも

 佐賀県立博物館と同じ佐賀城跡にある、佐賀県立佐賀城本丸歴史館と佐賀県立図書館をめぐるスタンプラリーも開催されます。こちらでは、博物館の展示をさらに深く楽しめる企画展が開催されるとか。

 「県立図書館の『刀剣をめぐる書物の世界』では、刀剣や刀剣書に関する図書を展示するほか、館蔵の古文書など郷土資料を紹介するパネルを展示します。また佐賀城本丸歴史館の『龍造寺家の刀と文書』では、2017年に発見された国内現存最古の写本と考えられる刀剣書『銘尽(めいづくし)(龍造寺本)』のほか、初代忠吉の祖父や父が仕えていた佐賀の戦国大名、龍造寺隆信ゆかりの資料を展示しています。3館を周遊された方には、肥前忠広コラボポストカードがプレゼントされます」

 佐賀(鍋島)藩の藩祖である鍋島直茂は龍造寺隆信の重臣で義兄弟にあたり、佐賀藩も龍造寺氏から領地を禅譲される形で成立しています。佐賀の歴史と刀剣について、深く知ることができそうです。

 このほか「刀剣乱舞-ONLINE-」宣伝隊長の「おっきい こんのすけ」も佐賀に来訪。当初は2月5日の予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大のため2月27日に延期し、佐賀県立博物館の1日館長として、来場者のお出迎えや写真撮影会を実施するとのことです。

 佐賀県内や九州だけでなく、遠隔地から来場する方に向けた宿泊プランもあると愛垣さんは語ります。

 「近畿日本ツーリストによるオリジナルグッズ付き宿泊プランで、宿泊のみのほか、博多駅までのJR付きパッケージプランや、羽田空港から佐賀空港・福岡空港を発着する航空券付きのプランもあるので、利用されると便利かもしれません。佐賀空港からの連絡バスは、佐賀県立博物館前にも停車しますので、空港から乗っていただくと迷わずに着けると思います」

■ 展覧会をきっかけに佐賀を知ってほしい

 展覧会開幕以降、来場した審神者の皆さんから「コラボしてくれてありがとうございます、とお礼を言われるので嬉しいですね」とのことですが、もっと佐賀を知ってもらいたい、という気持ちもある様子。

 「この展覧会をきっかけに肥前刀、そして佐賀の色々なものを知ってほしいと思います。2015年から佐賀県の情報発信プロジェクト『サガプライズ!』がスタートし、コンテンツや企業とのコラボを通じて、全国に佐賀県の魅力を発信しているのですが、佐賀には素敵なものがいっぱいあるので、是非体験してください」との希望も口にしていました。

 佐賀県は北に玄界灘、南に有明海と2つの異なる海に面しているため、海産物もバラエティ豊か。また佐賀牛やイチゴなどの農畜産物も知られているため、肥前忠広のように「めしは食う専門」でも、楽しみが色々ありそうです。

 佐賀県立博物館のコレクション展「忠吉から忠広へー集結!初代忠吉-」は、2022年2月1日~3月6日の期間で開催されています。毎週月曜は休館日となっているほか、新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、一部のイベントで中止や内容を変更する可能性があるとのことで、最新情報は佐賀県立博物館公式サイトを参照してください。

取材協力:佐賀県

(取材:咲村珠樹)

情報提供元: おたくま経済新聞
記事名:「 コラボの裏側きいてみた 佐賀県立博物館コレクション展×「刀剣乱舞-ONLINE-」肥前忠広