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全国1千万人の猫の気まぐれにつきあう皆さま、おはようございます。我が家もご多分に漏れず、ムラのある食欲に翻弄されておりますが、2024年の猫の日の朝を迎えた皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
当方でお世話を務めております三毛猫2匹組、ペンネとメリーも現在16歳(推定)。最近は年相応にフーシャー大乱闘の回数も減り、お互いマイペースで仲良く暮らしております。 ペンネは毎回完食の優等生の一方で、メリーのほうがやや食べムラがあり、元気はあるのにごはんを残して痩せてしまうことがあるのが小さな悩みのタネでした。 一昨年ごろから、定期健康診断の結果を受けてメリーが腎臓ケアの療法食に移行すると、食べムラ度合いは加速。昨年からはペンネも遅れて腎臓ケア療法食に移行し、同様に食べ残しや食べムラが増えてきました。 「ごはんを寄こせ。私は空腹なのだ。さもないと甘噛みするぞ」と鳴き終わらぬうちに甘噛みされつつ、出てきたごはんのニオイを嗅ぐと「確かに空腹だとは言ったが、これじゃない」と、ダブル猫またぎをされる日々。 あーでもないこーでもないと手を替え品を替え試行錯誤した結果、いくつか効果を感じられた手法を見い出せたのであります。おかげをもちまして、2024年となった最近ではフードロスが減り、地球環境とお財布に対する優しさを享受しております。 参考にしたのは、恵投いただきました岩﨑永治氏の『猫はなぜごはんに飽きるのか? 猫ごはん博士が教える「おいしさ」の秘密』。著者の岩﨑氏は日本ペットフード株式会社で開発研究に携わり、獣医学の博士号を持つ猫のごはんの専門家。なおかつ2匹の猫「スゥ」と「マイル」と暮らす猫のお世話係で、猫のためなら自らカリカリテイスティングも行うモノホンの研究者であります。 記念すべき2024年の猫の日は、本を読み読み、猫に向き合いながら到達した、我が家の猫ごはんソリューションについてお伝えいたしたいと思います。猫はみんな魚が好きとか肉が好きとか、うちの猫はアレが好きとか、「猫はこういうもの」と漠然と認識していた猫の味覚や好みには、ちゃんと要因があるわけです。この本のすごいところは、5つの要素の解説のみならず、猫の習性や猫が味覚をどう感じるかといった「猫目線」と、猫がどんなごはんをおいしいと感じるか調査と研究を重ねた「キャットフード作りを探究し続けた研究者目線」とが融合した、「猫タイプ別のごはんの悩み解決方法」について、つまりHow Toがたっぷり約30ページにまとめられている点であります。 先ほど挙げた、私が試行錯誤の末に効果を感じられた方法も、本書にすべて網羅されていたのはもちろんのこと、「(猫の生活)環境を整える」「空腹時間を作る」など、素人試行では至らない方法も多数掲載されておりまして、猫ごはん迷宮を進む羅針盤になることは間違いありません。 タイパが重視される昨今ではありますが、書名にある「猫はなぜごはんに飽きるのか」という問いに対して、ドンズバ明快な答えをお求めの方には向きません。すべての猫のごはん問題が確実に改善するようなブレイクスルーソリューションはあるわけないのです。それもそのはず。まだまだ猫については分からないことばかりなのですから。猫ごはん博士も、本書にてこう語っています。
- 食性
- 五感
- 学習・経験
- 栄養・健康状態
- 生活環境
真っ当な専門家は自身の発信する情報に責任があり、自説の正しさを保証するため、科学的根拠に基づいた情報発信をしています。科学的根拠のない記事は著者の感想文のようなもの。いくら医師や獣医師のような専門家を名乗る人が書いたものでも、信頼性が低いと判断できます。そのような記事からはひとまず距離を置くのが大事です。『猫はなぜごはんに飽きるのか? 猫ごはん博士が教える「おいしさ」の秘密』P19より猫ごはん博士は歩き続けます。機序を見つけるたびに分からぬことが増えていく道のりを。素人には及びも付かぬ丁寧さと繊細さと根気強さで、猫ごはん博士は学究的な文章で道々で拾い集めたファクトをまとめてくれているのであります。内容のうっすいビジネス書が千何百円で売られているのに比べれば、本職の研究者が探究を続けたその蓄積のおすそ分けたる本書のコストパフォーマンスは雲泥の差。個人的には辞書に匹敵するコスパの高さではないかと思うほどであります。 ロジカルで誠実な指南書は時間を掛けてじっくり読むほどに、猫の行動への理解が深まる良書であり、健やかな猫の暮らしのためのお守りであります。本書にてまとめられているのは、真摯な研究者が続けてきた、ハイレベルな観察と試行錯誤にほかなりません。 先達の歩んだ道を目と指でなぞりながら、猫の飼い主が行うべきは、深い愛情を注ぎながら、飼い主にしかできない観察と試行錯誤を繰り返しながら続けることです。「あなたの家の猫の専門家」は、あなただけなのですから。「猫ごはんの専門家」と「あなたの家の猫の専門家」がタッグを組めば、きっと共に過ごせる時間は長くなるに違いありません。 同じお悩みを抱える猫飼い主の皆さまへのナレッジ共有となりますように、読者諸賢と暮らす猫たちの健康長寿食欲増進を願いつつ、猫の日の読書にオススメの一冊としたいと思います。 [猫はなぜごはんに飽きるのか? 猫ごはん博士が教える「おいしさ」の秘密/集英社]The post 猫本書評:餅は餅屋に、病気は医者に、猫のごはんは「猫ごはん博士」に first appeared on 猫ジャーナル.