- 週間ランキング
そのため、視覚などの五感を使った手がかりが豊富にあればあるほど、猫は迷わずに目的地にたどり着けるという説です。
猫の脳内には、方向細胞があるという説です。
方向細胞とは、1990年にラットの脳内で発見された自然ナビゲーション・システムを持つ細胞です。1つの方向細胞が1つの目標を記憶していて、頭がその方向に向いた時だけ活性化するというものです。
日本の国内外で、遠く離れた場所から猫が自力で戻ってきたという逸話がある一方、迷子になって見つからないまま帰ってこない猫もたくさんいます。実際、ペット探偵が探し出した迷子猫のほとんどは、家のすぐ近所で見つかっていますが、自力では帰って来ていないのです。
帰巣本能を発揮する猫がいる一方で、それ以上に多くの猫たちが帰ってこないのは、なぜなのでしょうか。
帰巣本能が備わっている猫が戻ってこない理由として推測されているのが、「猫は自分にとって快適な場所を見つけると、そこを居場所に選ぶから」という説です。
外に出た猫が、見知らぬ猫や犬に追われたり自動車を避けたりしながらどんどん遠くに追いやられてしまい、本当に道に迷ってしまうことはままあります。
そんな時に、快適に過ごせる場所を見つけたら、そこを自分の居場所に選んでしまうという考え方です。実際、道に迷っている猫を保護して家に迎え入れ、そのまま一緒に暮らしているという保護主さんは少なくありません。
また、外を自由に歩いたことのない完全室内飼いの猫には、そもそもその地域の感覚地図がありません。そのため、家の中と外を自由に行き来しながら暮らしていたかつての猫と比べて、帰巣本能が弱まっているのではないかとも考えられています。
猫が人と一緒に暮らしてきた長い歴史を考えると、祖先であるヤマネコの野生的な習性を色濃く引き継いでいることは、奇跡といえるかもしれません。
犬のように雑食性に変わることなく純粋な肉食性を維持していますし、ハンターとしての身体能力も衰えていません。
しかし、自由に外に出すことのない完全室内飼いが当たり前となった現代、猫たちは、帰巣本能という点では多少能力が弱まってきているのかもしれません。その点を意識して、マイクロチップや首輪、迷子札などの装着は、いざという時の備えとして欠かせないでしょう。