猫の『毛づくろい』に秘められた3つの大切な役割 せっせとお手入れするのには理由があった
1.清潔と健康を保つため
猫の毛づくろいは、猫たちがまだ人間とのかかわりがなかった野生動物だった頃からの習性だと考えられています。
単独で暮らし、ひとりで狩りをしていた猫は、時間や空間を超えて同じ猫の仲間とやり取りするために嗅覚を発達させました。
一方で、狩りをするときには、獲物や同種、ほかの捕食者に見つからないよう自分のニオイを消す必要がありました。特に食後についた獲物のニオイは、猫自身を危険にさらす可能性があったのです。
当時の猫たちが獲得した毛づくろいの習性は、現在の猫たちにも引き継がれ、体のニオイを消し、清潔にするための重要な役割を果たしています。
猫の唾液は弱アルカリ性で殺菌作用が強く、舐めるだけで感染症リスクも低減させます。猫の舌はトゲトゲのブラシのようになっているので、体を舐めることで殺菌効果のある唾液をまんべんなく行き渡らせ、汚れやほこり、寄生虫などを取り除けるのです。
また、猫は毛づくろいで体温調節もしています。暑いときには舐めて唾液を毛に塗り、蒸発させることで熱くなった体を冷やします。
反対に寒いときには、毛並みを整えることで、空気の層を作り出して保温性を高めるのです。
2.リラックス効果
猫が毛づくろいをしているとき、ただ気分転換しているわけではなく、実際には深くリラックスしています。
毛づくろいをすることで、脳内からは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンやエンドルフィンという神経伝達物質が分泌され、抗ストレス効果や安心感を得られるのです。
また、毛づくろいの動きには、「マインドフルネス」に似た効果があります。猫は毛づくろいに集中することで、一時的にほかの刺激を遮断するのです。
人間の場合は、意識的に瞑想などをしますが、猫が不安を解消して落ち着きを取り戻そうと毛づくろいをするのは、本能的な習性からくるものです。
たとえば、新しい環境におかれた猫や遊んでいて失敗したり、飼い主から怒られたりしたあとなどには、頻繁(ひんぱん)に毛づくろいをする姿が見られます。
3.社会的コミュニケーション
猫の毛づくろいは、自身のためだけではなく、他者との信頼関係を高めるための社会的コミュニケーションとしても重要な役割をしています。
出産した母猫は、舐めることで子猫のニオイを消し、清潔を保ちます。これは子猫への愛情表現として機能しています。
一方、子猫は母猫から舐めてもらうことで、安心感や信頼感を積み重ね成長します。
おとなの猫では、仲良し同士でお互いに毛づくろいをする「アログルーミング」が見られます。これは子猫だったときに、母猫から舐めてもらい得てきたコミュニケーションの延長なのです。
同居猫がいなくても、同じように飼い主を舐めることがあります。これも、猫が人間を自分の大切な仲間として受け入れている証拠と言えるでしょう。
アログルーミングでは、上位の猫が下位の猫の毛づくろいをすることが多く見られます。順番に舐めていれば同列です。これは、社会的な序列をお互いに認め合うことにつながります。
もし、愛猫が熱心に舐めてくれる場合は、猫社会の序列の意味を理解しておくとよさそうです。
まとめ
猫は起きている時間の約1/4を毛づくろいに費やすといわれています。毛づくろいは猫以外のほかの動物にも見られる習性ですが、時間的な長さや丁寧さを見ても、いかに猫が毛づくろいを重視しているかがわかります。
猫の毛づくろいは、単なる習慣ではなく、生存戦略から友愛の表現まで、多様で重要な意味を持っています。
よく見る何気ない行動から猫の心理を知ることで、猫の気持ちへの理解が進んだのではないでしょうか。
もし、次に猫が熱心に毛づくろいをする姿を目にしたとき、猫の生態や心理を想像してみると、より猫の世界に近づけるかもしれません。
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