【獣医師が解説】夏が来る前に。猫のトリミングは可能?
猫ちゃんのトリミング、必要?
わんちゃんと比較して、被毛が伸びるわけではない猫ちゃんの場合、トリミングは必要なのでしょうか?
こだわりが強く、警戒心も強い生き物である猫ちゃんたちにとって、ドライヤーの音やシャワーの感覚など苦手な子が多いです。
被毛の汚れの除去
活発な猫ちゃんたちは被毛が汚れることもたくさんあります。
外に出る猫ちゃんもいるので、室内のホコリや皮脂の汚れだけでなく、外で泥まみれになったり、喧嘩をして血液の汚れが付着したり、ネズミ捕りやハエトリなどのトリモチが付着してしまうなどのこともあります。
ふき取れる程度の汚れであれば、ウェットシート型のシャンプーや水が必要ないタイプのものを使用することで汚れの除去をすることができます。
毛玉もつれ防止
猫種の中には長毛のタイプの子と短毛のタイプの子とが存在します。
長毛のタイプの子の場合、わきの下や太ももの付け根など摩擦が起こり、毛玉ができやすい傾向があります。
毛玉をほぐすと時間もかかることや、引っ張りながらくしでとかす必要があるので、嫌がる猫ちゃんも多いです。
嫌がる毛玉のもつれほぐしをすることのないよう、被毛を短くするためにトリミングをすることも大切です。
暑さ対策
暑さが苦手な猫ちゃんは長毛で被毛の量が多い場合、夏場に体温が上がってしまう場合があります。
室内を涼しくすることはもちろん大切ですが、そんな中で毛皮を着ているのであれば体温は上がってしまうため、少しでも負担を軽減するために、トリミングで被毛の量を減らしてあげることも暑さ対策の一つになります。
ただし、お外に出る猫ちゃんは皮膚が見えるまで短くしてしまうと直射日光が当たるため、余計に体温が上がってしまう傾向があるため注意が必要です。
トリミングの必要性やお家の猫ちゃんの問題がどんなことかわかりづらい場合はお家の猫ちゃんの毛量や被毛の生えている密度などはトリマーさんや獣医師などの専門の人に見てもらって、トリミングが必要かどうかということを判断してもらいましょう。
どんな子が行うの?
あまり一般的ではない猫ちゃんのトリミングですが、具体的にどのような子が必要なのでしょうか。
猫ちゃんの中でもトリミングをする機会が多いのはこんな子たちです。
長毛の猫種
様々な猫種がいますが、被毛の長さはそれぞれです。
ヒマラヤンやラグドールなどのように優雅で長い被毛を持つ子たち、アメリカンショートヘアーやベンガルなどの短い被毛の子たち、スフィンクスなどのように被毛がほとんどない子たちなど、様々な被毛の特徴を持つ猫たちがいます。
特に長毛の猫種の子たちは、ふわふわとした細い被毛を持つため、関節の摩擦などで毛玉になりやすく注意が必要です。
こまめなブラッシングが可能な子であればカットは不要な場合もありますが、多くの猫ちゃんがブラッシングを苦手とすることが多く、トリミングを依頼する飼い主さんも多いです。
汚れやすい子
外猫ちゃんや家の中を活発に動き回る猫ちゃんの場合、猫ちゃんは狭いところを好んだり、高いところにも簡単に登れるため汚れる機会は多いでしょう。
獲物を捕まえて血まみれになっていた、水たまりで遊んだのか泥だらけだったなどというお話も聞きます。
ウェットシートでふき取れる程度の汚れや、簡単に落とせる汚れであれば問題ないですが、洗い流さないと除去できない汚れの場合や汚れた被毛そのものを切ってあげないといけない場合もあります。
家庭で若齢の頃から徐々にシャンプーを慣らすことで、シャンプーなどのトリミングが苦手にならない可能性もあるとされています。
トリミングの際の猫ちゃんの嫌いなポイントはシャワーの音や刺激、ドライヤーの音や刺激、バリカンの音や振動などが挙げられます。
シャワーの音や刺激はベビーバスのような浅めの浴槽でゆっくりとお湯をかけ流してあげることで、ドライヤーの音や刺激はタオルドライをしっかり行うことで負担のかかる時間や刺激を軽減させてあげることが可能です。
バリカンは皮膚を傷つけてしまう場合もあるため、自宅で行なうことが難しそうであれば、プロに任せることをおすすめします。
グルーミングが苦手な子
猫ちゃんはこまめに自分の皮膚を舐めてグルーミングを行なう特徴を持つ生き物です。
こまめにグルーミングを行なうことで、本来抜け落ちるはずの被毛を除去し、ふけなどをおとすことが期待できます。
皮膚を健康に保つためにグルーミングを行なうことは欠かせませんが、体調不良や肥満などによりグルーミングが苦手な子もいます。
その子たちは被毛が脂っぽくなってしまったり、被毛が上手に抜け落ちないため、皮膚のコンディションが悪化し、皮膚トラブルにつながる危険性があります。
フケが増える、触ったら被毛がごっそり抜けるなどがあった場合、グルーミングだけでなくても皮膚コンディションが悪化している可能性が高く、ブラッシングやシャンプーなどのケアが必要な可能性があるでしょう。
自分での判断が難しい場合、かかりつけの先生に診てもらって、必要なケアを教えてもらいましょう。
どうやって行うの?
難易度の高い猫ちゃんのトリミングですが、どんな風に飼い主さんたちは行っているのでしょうか。
ご家庭で行なえるという猫ちゃんもいるという話を聞きます。
ご家庭ではギブアップという場合にはどこにお願いしたらいいのでしょうか。
ご家庭で
体を必要以上に触られることが苦手で、警戒心が強い子が多い猫ちゃんですが、性格には個体差があり飼い主さんとの信頼関係次第では家庭でのトリミングが可能な子もいます。
小さいころから飼い主さんと一緒に入るお風呂に慣れていたり、ドライヤーの音に慣れているなど、スキンシップを兼ねて家庭でのシャンプーやトリミングを慣らすことが大切です。
皮膚や被毛を清潔にすることを目的にせずに、小さいころから短時間で楽しみながら行うこと、無理そうであればすぐにやめてあげることなどが猫ちゃんに負担をかけないために必要です。
また、わんちゃんと比較して猫ちゃんにとってシャンプーやトリミングはとても嫌なことである子が多いです。
嫌なことをされてパニックになって脱走するなどのトラブルも考えられます。
対策をとったうえで徐々に時間を増やしてみてください。
トリミングサロンで
わんちゃんと比較すると猫ちゃんをトリミングしてくれるトリミングサロンは少ないですが、事前予約などの条件付きでやってもらえるところもあります。
猫ちゃんのトリミングの場合、こだわりや警戒などが強い子が多い傾向があるため、猫ちゃんのトリミングに慣れているトリマーさんが在籍していることや、今までも猫ちゃんのトリミングを行なった経験のあるトリミングサロンさんである方がより安心です。
予約をする際に、苦手な部分や嫌いな音などの事前情報を伝えておけるとより負担が軽減できる可能性が高いです。
動物病院で
動物病院の場合、どんなに暴れてしまう猫ちゃんであっても鎮静剤や麻酔などを用いてトリミングをすることが可能です。
長毛の猫ちゃんは毛玉を予防するために、活発な猫ちゃんは被毛についてしまったひどい汚れなどを落とすためにどうしてもトリミングが必要になることがあります。
しかし、トリミングが苦手な猫ちゃんにとってはトリミングが精神的にも大きな負担がかかってしまう可能性があります。
鎮静剤や麻酔下では嫌なことを行なわれることによる精神的な負担などが軽減されることが多いです。
また、医療的な面でもサポートできる動物病院であれば麻酔や鎮静などの負担によって起こり得るリスクが軽減できる可能性が高いです。
やむを得ず、トリミングをしなければならない場合は、美容面などではトリミングサロンなどと比較すると満足のいくようなカットではない場合もあるかもしれませんが、健康面では安全度の高い施術や負担の軽減された施術が可能なケースが多いかもしれません。
まとめ
一見あまりなじみのない猫ちゃんのトリミングですが、猫ちゃんの特徴や季節によっては必要であり大切であるということがわかりました。
しかし、難易度が高いため、行える場所も限られてしまうことが多いです。
夏場の暑さ対策のためにも有意義な選択肢のひとつであるトリミングとも上手に付き合えると猫ちゃんの生活もより充実するでしょう。
健康チェックの一環として皮膚チェックも行い、皮膚も健康に維持できるよう、必要に応じてトリミングなどのケアをしてあげましょう。
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