たんぱく質を健康・環境・値段で総合評価すると1位は「豆腐」だった
「たんぱく質をとろう」と決めた翌日から、コンビニでサラダチキンとゆで卵ばかり手に取るようになる人もいるでしょう。
たんぱく質は体に欠かせない栄養ですが、何からとるのがいちばん良いのかは、意外と答えにくい問いです。
人気のたんぱく源の多くには、値札には書かれない健康や環境への「隠れたコスト」があるからです。
食品の表示には、栄養を信号の色で示すものや、二酸化炭素の排出量を示すものがあります。
ただ、こうした表示は一つの面しか映さないことが多く、別の面での損を見落としやすいと指摘されています。
そこで研究者のクリス・マクドナルド博士は、健康や環境、値段などをまとめて採点する新しい仕組みを作りました。
身近な20種類のたんぱく源を同じ物差しで並べたとき、いちばん上に来たのは何だったのでしょうか?
研究の詳細は、2026年7月29日付で学術誌『Frontiers in Sustainable Food Systems』に掲載されました。
健康と環境と財布を、一枚の通知表に
博士がまず問題にしたのは、今ある食品の評価の多くが、一つの面しか見ていないことでした。
ある面で優れて見える食品が別の面で損をしていても、一つの表示だけではそれが見えません。
論文は、これが全体像を隠し、消費者を誤った方向へ導きかねないと指摘しています。
そこで考え出されたのが、複数の面をまとめて一つの点数にする「BPIスコア」です。
この点数は、「人」についての点と「地球」についての点の、2本の柱でできています。
地球の点では、温室効果ガスの量、水の汚れ、土地や水といった資源の使い方を調べます。
人の点では、塩分や飽和脂肪(肉や乳製品などの動物性の脂に多く含まれる脂肪の一種)の量といった健康面に加え、値段の手ごろさや手に入れやすさも見ます。
その第1版を使って、たんぱく質の多い身近な食品20品に点数がつけられました。
環境や脂肪の数字は、「たんぱく質100グラムを得るのにどれだけか」でそろえてあります。
水の量は、雨水まで含めた総量ではなく、限りある淡水をどれだけ使うかで測りました。
そのほうが、乏しい淡水資源にかかる負担をよく表すと考えたためです。
この物差しで20品を並べると、植物性と動物性の間に、はっきりした差が浮かび上がりました。
いちばん点が高かったたんぱく源は?
結論から言うと、総合1位は豆腐で、点数は36点でした。
最下位はチェダーチーズで、13点にとどまりました。
1位と最下位の間には、3倍近い点数の開きがあることになります。
さらに目を引くのは、上位と下位の顔ぶれです。
上位2割にあたる4品は、豆腐、チアシード、豆、キヌアと、すべて植物性でした。
反対に下位2割の4品は、モッツァレラチーズ、ラム肉、牛肉、チェダーチーズと、すべて動物性だったのです。
つまり、成績表の両端で、植物と動物がきれいに分かれたことになります。
その差の大きさがよく分かるのが、環境の数字です。
環境の点(16点満点)だけで見ると、豆腐は満点の16点で、最下位はチェダーチーズではなく牛肉の1点でした。
たんぱく質100グラムを得るまでに出る温室効果ガスは、豆腐で0.61キログラム(二酸化炭素に換算)でした。
一方の牛肉は64.19キログラムにのぼり、豆腐のおよそ100倍に達します。
同じ量のたんぱく質をとるのに、牛肉は豆腐の100回分ほどの温室効果ガスを出している計算です。
必要な土地の広さでも、同じように桁違いの差が見られました。
同じたんぱく質の量で比べると、豆腐が使う土地は2.16平方メートルでした。
牛肉は211.38平方メートルの土地が必要でした。
これまでの研究では、全員が動物性から植物性のたんぱく質に切り替えると、農地は40億ヘクタール超から10億ヘクタールに減ると試算されています。
空いた土地を自然に戻せば、5000億トンを超える二酸化炭素を吸収できるといいます(化石燃料から出る二酸化炭素は、年に400億トン未満です)。
水を汚す量でも、豚肉はチアシードのおよそ15倍にのぼりました。
多くの研究者が指摘してきたとおり、植物性と動物性の一部には、ときに桁が違うほどの差があったのです。
「植物なら何でも優等生」ではなかった
ただし、どの項目でも植物性が勝つわけではありませんでした。
植物性と動物性の違いがはっきりしなかったのが、水の使用量です。
最も多くの水を必要としたのは植物性のナッツで、たんぱく質100グラムあたり2,239リットルでした。
その一方で、使う水が最も少ない部類に入ったのも、植物性の食品でした。
豆腐は14.23リットル、ヒマワリの種は6.68リットルです。
豆にいたっては0.07リットルでした。
同じ植物性でも、ナッツと豆では、水の使い方がまるで違うのです。
健康の面でも、意外な並びが見られました。
採点に使われた健康の目安の一つ、飽和脂肪の量を、同じたんぱく質の量で比べた結果です。
最も少なかったのはタラで0.47グラム、最も多かったのはチェダーチーズで84.74グラムでした。
つまり、いちばん良い成績もいちばん悪い成績も、どちらも動物性の食品だったことになります。
さらに、飽和脂肪の少ない上位2割には豆が、多い下位2割にはブラジルナッツが入っており、どちらの側にも植物性の食品が顔を出していました。
値段も同じで、たんぱく質100グラムあたりでいちばん安かったのはレンズ豆、いちばん高かったのはキヌアと、両端がどちらも植物性でした。
動物性ならすべて悪く、植物性ならすべて良い、という単純な話ではないのです。
だからこそ、一つの面だけでなく、いくつもの面を合わせて見ることに意味があるといえます。
なお、今回の点数は第1版のもので、論文自身もその限界を認めています。
土地をほかの使い道に回せたはずの損や、倫理面などの要素は、まだ点数に入っていません。
値段はイギリスのスーパー1社の価格で比べ、手に入れやすさも、イギリスのスーパーで買えるかどうかで見ています。
論文も、研究者の見解を示す形式のものです。
それでも博士は、この点数が、より細やかな議論のための確かな土台になると述べています。
目指すのは、食品の包装に新しいラベルを一つ増やすことではないといいます。
自分のお金がどんな仕組みを支えているのかを、一人ひとりが読み解ける力を育てることが狙いです。
論文は「どのたんぱく質を選ぶかは、動物と地球と未来の世代にどれだけ思いやりを示せるかを問う投票だ」と結んでいます。
同じたんぱく質の量で比べれば、食卓の豆腐は、牛肉のおよそ100分の1の温室効果ガスで届いているのです。
明日から「とりあえず冷ややっこ」が、我が家の口ぐせになりそうです。
ここからは、必須アミノ酸をもっと知りたい人へ
必須アミノ酸とは、体の中で必要なだけ作れないため、食事からとらなければならないアミノ酸です
たんぱく質は20種類のアミノ酸からできていて、必須アミノ酸はそのうち、食べ物からとり入れるしかないものを指します。
残る11種類は体の中で作れるため、非必須アミノ酸と呼ばれます。
必須アミノ酸は桶の板にたとえられます。1枚でも短い板があるとくめる水が減るように、どれか1つが足りないだけで、たんぱく質の栄養価が下がります。
その栄養価を数字にしたものが「アミノ酸スコア」で、食品の中でいちばん割合の低い必須アミノ酸の値で決まります。
必須アミノ酸がバランスよく含まれるたんぱく質は「良質のたんぱく質」と呼ばれます。必須アミノ酸がすべてそろった食品は、「完全なたんぱく源」と呼ばれることもよくあります。
動物性の食品を食べない人も、たんぱく質を含む植物性の食品を毎日いろいろ食べれば、必要なアミノ酸をそろえられます。
さらに、キヌアやチアシードのように、植物でありながら完全なたんぱく質にあたる食品もあります。
写真で見る、さまざまなたんぱく源
参考文献
Tofu is the winner. Scientist creates new holistic scoring system to measure the impact of food (Phys.org)
https://phys.org/news/2026-10-tofu-winner-scientist-holistic-scoring.html
健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「たんぱく質・アミノ酸」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html
ハーバード公衆衛生大学院 The Nutrition Source「Protein」
https://nutritionsource.hsph.harvard.edu/what-should-you-eat/protein/
元論文
What are the best sources of protein? Introducing the BPI Score
https://doi.org/10.3389/fsufs.2026.1677796
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部