「人恋しいのに人が怖い」人ほど、SNSがやめられない
用事もないのに、信号待ちのたびにSNSのアプリを開いてしまいます。
SNSをつい見すぎてしまうのは、ただ意志が弱いからなのでしょうか。
もしかするとその裏には、人との距離の取り方のくせが隠れているのかもしれません。
米国の研究チームは、成人555人へのアンケートから、SNSがやめられない人の心の特徴を探りました。
SNSに最ものめり込みやすかったのは、どんな心の持ち主だったのでしょうか?
研究の詳細は、米ロングウッド大学らにより、2026年10月21日付で学術誌『PLOS One』に掲載されました。
人との距離の取り方には「4つの型」がある
人は生涯を通じて、誰かと親密な心の絆を作り、保とうとする生き物です。
この絆の結び方のくせは「愛着スタイル」と呼ばれ、昔から4つの型に分けて考えられてきました。
1つ目の「安定型」は、親しい相手を深く信頼できるタイプです。
2つ目の「不安型」は、近さを強く求める一方で、相手がそばにいてくれるかをひどく気にします。
3つ目の「回避型」は、相手と心の距離を保つことを好むタイプです。
4つ目の「恐れ型」は、近さを強く望みながら、人に頼ったときの悪い結果を強く恐れます。
いわば「人恋しいのに、人が怖い」という矛盾を抱えたタイプです。
ただ最近の研究では、相手の気持ちを心配する「不安」と、相手と距離を置こうとする「回避」という2つの強さで捉えるほうが、大人の愛着をうまく表せるとされています。
研究チームは、この愛着スタイルとあわせて、2種類の「自己愛」にも目を向けました。
1つは、外向的で称賛を強く求め、他人への共感に乏しい「誇大型の自己愛」です。
もう1つは、称賛を求めつつも恥ずかしがりで、批判に過敏な「隠れ自己愛(脆弱な自己愛)」です。
隠れ自己愛の人は、人を強く必要とする自分を恥じ、想像上の批判にも傷つきやすいとされます。
これまでの研究では、隠れ自己愛は不安型と結びつきやすいとされてきました。
誇大型の自己愛は回避型と結びつくとも考えられてきましたが、こちらは研究によって結果がまちまちでした。
SNSに最ものめり込んでいたのは、どの型の人だった?
研究チームは、この愛着と自己愛の組み合わせが、SNSの使い方とどう関わるかを調べました。
参加したのは、SNSやクラウドソーシングのアプリで募った米国の成人555人です。
参加者は、76項目からなるオンラインのアンケートに、自分で答えました。
SNSへののめり込み具合は、お酒の依存(アルコール使用障害)の診断基準を主な手本にした質問で測りました。
最初に用意した10問から、統計的な確認を経て、6問が残されています。
たとえば「予定していたより長くSNSを使ってしまうことがある」という質問です。
「気分が落ち込んだ時や、嫌なことを考えたくない時にSNSを使う」という質問もあります。
さらに「理由もなく衝動的にSNSをチェックすることがよくある」という質問も含まれます。
残りは、やめても長続きしない、良くないと分かっていても使う、以前より時間が増えた、の3問です。
一方、「SNSが使えないと不安になる」「SNSのせいで学校や仕事の出来が落ちている」といった、いかにも依存らしい質問は、統計的な確認の結果、物差しから外されています。
回答は7段階で、その平均点が高いほどSNSにのめり込んでいることになります。この記事では、この点数を「依存度」と呼びます。
あわせて、人付き合いをうまくこなせるかという「対人スキル」も、自己評価で答えてもらいました。
そのうえで、答え方の似た人どうしを、統計の手法でグループに分けました(潜在プロファイル分析)。
すると参加者は、愛着の4つの型にそれぞれ対応する、4つのグループに分かれたのです。
次に、グループごとにSNS依存度の平均を比べました。
最も低かったのは、人を信頼できる「安定型」のグループでした。
そこから「回避型」「不安型」の順に高くなり、最も高かったのは「恐れ型」でした。
しかも、4つのうちどの2グループを比べても、依存度にははっきりした差がありました。
型に分けない分析でも、相手の気持ちを心配する傾向(愛着不安)が強い人ほど、依存度は高めでした。
距離を置く傾向(愛着回避)も依存度と関係していましたが、その結びつきは不安に比べてかなり弱いものでした。
また、対人スキルの自己評価が高い人ほど、依存度はやや低い傾向も見られました。
つまり、人との関係に不安を抱える人ほど、SNSを長く衝動的に使ってしまいやすい傾向があったのです。
カギは「隠れ自己愛」と、恐れ型の矛盾した心
では、なぜ恐れ型が最ものめり込んでいたのでしょうか。その手がかりは、自己愛の結果にありました。
恥ずかしがりで批判に過敏な「隠れ自己愛」が強い人ほど、SNS依存度も高い傾向がありました。
一方、称賛を堂々と求める「誇大型の自己愛」は、SNS依存度とはっきりした関係が見られませんでした。
「目立ちたがりな人ほどSNSにハマる」というイメージとは、少し違う結果です。
研究チームは、隠れ自己愛の人が、現実では得にくい人間関係の注目をSNSで求めている可能性を指摘しています。
そして恐れ型のグループは、まさにこの隠れ自己愛が非常に高い人たちでした。
恐れ型は、愛着の不安も回避も非常に高く、対人スキルの自己評価は非常に低いグループだったのです。
近づきたいのに頼るのが怖く、人付き合いにも自信が持てない、という姿が浮かびます。
研究チームは、不安と回避がともに強い人が、人とのつながりを求める気持ちを、SNSというあまりうまくいかないやり方で満たそうとしているのかもしれない、と考えています。
これに対し、不安型は誇大型の自己愛も対人スキルもやや高めで、恐れ型とは対照的でした。
研究チームは、不安型と恐れ型のこうした違いは、これまでの研究で見過ごされてきたと述べています。
また意外にも、距離を置く傾向が強い人ほど、誇大型の自己愛はむしろ低めでした。
回避型のグループを見ても、誇大型の自己愛と対人スキルの自己評価はとても低く、隠れ自己愛はやや高めでした。「人と距離を置く人は自信家」というイメージとは、少し違う姿です。
ちなみに安定型のグループは、誇大型の自己愛が平均よりやや高く、隠れ自己愛はとても低いという組み合わせでした。
グループの顔ぶれにも違いがあり、不安型と恐れ型の平均年齢は、どちらもおよそ35歳でした。
これに対し安定型と回避型は42〜44歳ほどで、7〜10歳ほど年上だったのです。
さらに、安定型には男性が多く、不安型には女性が多いという偏りも見られました。
ただし、年齢と性別の違いは事前に予想していたものではなく、追加の分析で見えてきた結果です。
この研究には、ほかにも注意点があります。
ある時点でのアンケートを分析したものなので、どちらが原因でどちらが結果なのかは分かりません。
不安な心がSNSに向かわせるのか、SNSの使いすぎが不安を強めるのかは、今回の結果からは決められないのです。
また参加者は米国の人に限られ、答えもすべて本人の自己申告によるものです。
研究チームは「人間関係に信頼や自信がある大人や、他人と距離を置く大人は、SNSの問題のある使い方をしにくい」と述べています。
一方で「人間関係に不安や恐れを抱く大人は、隠れ自己愛も高く、SNSの問題のある使い方もかなり多い傾向がある」とも話しています。
SNSがやめられない背景には、人とのつながりを求める気持ちが隠れているのかもしれません。
夜中にふとSNSを開いてしまう指先は、近づきたい気持ちと、頼るのが怖い気持ちの間で揺れているのかもしれません。
この記事を読み終えたら、SNSを開く前に深呼吸をひとつしてみましょう、と言いつつ、筆者の指はもうアプリの上にあります。
ここからは、愛着理論をもっと知りたい人へ
愛着理論とは、人が親しい相手と結ぶ心のきずなを考える理論です
愛着理論の「愛着(アタッチメント)」は、子が母に抱く愛情のきずなを指して、ボウルビィが用いた言葉です。
大人の愛着の型でいうと、不安型の人は、ストレスを受けると気持ちが大きくふくらみ、人に頼りすぎやすくなるとされます。
また、相手との連絡を絶やさず、相手の注目を引き出そうとするのも、不安型の特徴とされています。
反対に回避型の人は、つらい時でも、人に慰めを求めたい気持ちを抑え込みがちです。
恐れ型の大人は、自分にも他人にも否定的なイメージを持ち、人と親しくなることと自立することの両方を恐れます。
そのため恐れ型の人は、つらい時に、不安と回避の間をふつうとは違う形で行き来しやすいとされています。
一方、不安も回避も低い、安定型にあたる人ほど、心の面でも人間関係の面でも良い状態にある傾向があります。
子どもの頃の愛着のあり方も、のちの人間関係の中で見直されることがあり、決まった運命ではなく「傾向」にすぎないとされます。
写真で見る、ナルキッソスの絵画とロングウッド大学
参考文献
Compulsive social media use is linked with wanting closeness but fearing reliance on others (Phys.org)
https://phys.org/news/2026-10-compulsive-social-media-linked-reliance.html
コトバンク「愛着」
https://kotobank.jp/word/%E6%84%9B%E7%9D%80
コトバンク「自己愛」
https://kotobank.jp/word/%E8%87%AA%E5%B7%B1%E6%84%9B
Simply Psychology「Attachment Styles」
https://www.simplypsychology.org/attachment-styles.html
元論文
Attachment, grandiose and vulnerable narcissism, interpersonal competence, and problematic social media use: A latent profile analysis
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0359569
ライター
山下 浩介: むずかしい研究を、なるべく分かりやすく伝えたい。専門の言葉はふだんの言葉に置きかえて、身近な例で例える。それで「わかった」「楽しかった」と言ってもらえたら嬉しいです。
好きなのは、通学路や台所や日常の中にある科学。眠っているあいだに記憶が整理される話や、虫の鳴き方に意味がある話のように、読み終わったあとに誰かへ話したくなる研究を探しています。
編集者
ナゾロジー 編集部