ノルウェーのBIノルウェー・ビジネススクール(BI)などで行われた研究によって、学歴と知能という「頭のよさ」を表すはずの2つの物差しが、容姿の自己評価と正反対の向きで結びついていたことが示されました。


参加者たちが自分の見た目を0〜100点で採点した結果をみると、大学を卒業した人は、そうでない人より高い点をつけていました。


ところが知能テストの成績で比べると向きが逆になり、知能が高い人ほど自分の容姿につける点が低かったのです。


研究チームは論文の中で「おそらく最も興味深い結果は、知能と容姿の自己評価のあいだのマイナスの相関でした。しかも学歴のほうは、プラスに結びついていたのです」と述べています。


研究内容の詳細は2026年9月23日に『Evolutionary Psychology』にて発表されました。




目次



  • 「頭のよさ」の2つの物差しで、容姿の自己評価を比べた
  • 大卒かどうかと知能テストの得点は、容姿の自己評価に正反対の向きで結びついていた
  • 大卒の肩書きは人に見せられるが、知能の高さは本人にもつかみにくい

「頭のよさ」の2つの物差しで、容姿の自己評価を比べた


「頭のよさ」の2つの物差しで、容姿の自己評価を比べた / Credit: Collections École Polytechnique / J. Barande / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

「自分の見た目は、100点満点で何点?」


そう聞かれたら、少し考え込んでしまう人も多いでしょう。


その点数は、鏡に映る姿だけで決まるわけではなさそうです。


2023年に発表されたヒル氏らのレビュー論文では、容姿の自己評価が、実際の顔立ちや体つきだけでなく、自尊心や自信によっても押し上げられがちであることが示されています。


では、どんな人が自分の容姿を高く採点するのでしょうか。


これを確かめるため、エイドリアン・ファーナム(Adrian Furnham)氏らは、2つの調査を行いました。


参加したのは、トーマス・インターナショナル(Thomas International)という会社の職場向け適性検査を受けたことのある社会人です。


1つ目の調査には799人、2つ目の調査には292人が参加しました。


参加者は自分の容姿を0〜100点で採点し、大卒かどうか、楽観性、性格についても答えました。


1つ目の調査では、自己採点の平均はおよそ58点でした。


2つ目の調査では、こうした回答に加えて、時間制限つきの知能テストの得点も調べました。


推論や空間の把握、知覚などの問題を、どれだけ速く正確に解けるかを測るテストです。


こうして研究チームは、「頭のよさ」を表す2種類の物差しを手にしました。


1つは大学を卒業しているかどうか、もう1つは知能テストの得点です。


一般に、知能が高い人ほど学歴も高い傾向があります。


また、2011年に発表されたサトシ・カナザワ(Satoshi Kanazawa)氏の研究では、知能が高い人ほど、周りの人から身体的に魅力的だと評価されやすいことが示されていました。


周りの評価が自分の採点にも表れるなら、大卒の人も、知能テストの得点が高い人も、そろって自分の容姿を高く採点しそうですが、実際はどうだったのでしょうか?


大卒かどうかと知能テストの得点は、容姿の自己評価に正反対の向きで結びついていた


大卒かどうかと知能テストの得点は、容姿の自己評価に正反対の向きで結びついていた / Credit:川勝康弘

2つの物差しを同じ人たちに当ててみると、向きはそろったのか?


答えは、292人が参加した2つ目の調査に表れていました。


(※参加者は半数ほどがイギリス人、残りは南アフリカやアメリカ、カナダなどの社会人たちでした。)


まず大卒のほうは、予想どおりの向きでした。


年齢や性格などの条件をそろえて比べると、大学を卒業した人は、そうでない人より、自分の容姿を約9点高く採点していました。


ところが、知能テストのほうは逆を向いていました。


知能テストの得点が高い人ほど、自分の容姿を低く採点していたのです。


容姿の自己採点との相関係数は、大卒かどうかがプラス0.20、知能テストの得点がマイナス0.19でした。


知能と学歴、2つは別々の物差しとして、自分の見た目の採点に、正反対の向きで結びついていたことになります。


(※なお信仰心と容姿の自己評価の相関係数はプラス0.20で、信仰心が強いと答えた人ほど、自分の容姿を高めに採点する傾向がありました。)


さらに意外なことに、この参加者たちでは、大卒かどうかと知能テストの得点のあいだに、ほとんど関係がありませんでした(相関係数0.01)。


大卒の人が、とくにテストで高い得点を取っていたわけではなかったのです。


同じ「頭のよさ」を表すはずの物差しが、なぜ逆を向いたのでしょうか。


大卒の肩書きは人に見せられるが、知能の高さは本人にもつかみにくい


大卒の肩書きは人に見せられるが、知能の高さは本人にもつかみにくい / Credit: Enrico Carcasci / Unsplash / Wikimedia Commons

大卒かどうかと知能テストの得点は、何が違ったのか?


研究チームが注目したのは、2つの物差しの「見えやすさ」の違いです。


大卒の肩書きは履歴書に書くことができ、周囲にも知られやすい、社会に認められた能力のサインです。


職業上の地位や収入とも結びつきやすく、それらはパートナー選びでも重視される要素です。


研究チームはもともと、こうした地位のサインを持つ人ほど、自分の見た目も高く採点すると予想していました。


一方、知能の高さは、他人からはもちろん、本人にもなかなかつかめません。


ファーナム氏自身も長年の研究で、人は自分のIQをあまり正確に見積もれないことを示してきました。


知能テストの得点が高い人の採点が、むしろ低かったことについて、研究チームはもう1つ推測を示しています。


知能の高い人ほど、自分の容姿を現実的に、そして正直に見ているのかもしれない、というものです。


容姿の自己評価と結びついていたのは、大卒かどうかだけではありません。


楽観的な人や、気分が安定していて打たれ強い人も、2つの調査の両方で自分の容姿を高く採点していました。


ただし、この研究には、外部の人が参加者の容姿を採点したデータがありません。


そのため、知能テストの得点が高い人の低い採点が、本当に正確な自己評価だったのか、単に自分に厳しすぎただけなのかは、まだわかりません。


それでも、同じ「頭のよさ」を表すはずの2つの物差しが、自分の見た目の採点では逆を向いていたことは、データに表れています。


自分の見た目に何点をつけるかには、鏡に映る姿だけでなく、履歴書に書ける一行も入り込んでいるのかもしれません。


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元論文

Self-Estimated Attractiveness: Demographic and Personality Correlates
https://doi.org/10.1177/14747049261468597

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。
大学で研究生活を送ること10年と少し。
小説家としての活動履歴あり。
専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。
日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。
夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 知能テストの成績がよい人ほど自分の容姿を低めに評価する傾向――ところが大卒の人は高めだった 」